営業支援システムについて | 情シスのお仕事(2019年度改訂版)

営業支援システムについて | 情シスのお仕事(2019年度改訂版)





対象とする読者

・SFAとかCRMとか気になっている経営層
・SFAとかCRMとか嫌気がさしている情シス
・SFAとかCRMとか嫌気がさしている営業マン
・SFAとかCRMにちょっと興味がある通りすがりの人
・情シスへの転職を考えている人
話の要点
CRM/SFAとは営業活動を数値化するシステムである。
・システムにデータ入力する営業担当者の負荷は大きい。営業にとってのメリットが必要。
・情シスはデータ入力項目や入力手順の見直しが定期的に行われているか、部門横断的に見た時にルールに齟齬が無いか、分析等の阻害となるデータクリーニングが行われているか等をチェックする。また選定・導入にあたってERPへの受注情報連動など他システムとの結合や、顧客マスタとしての可用性とセキュリティの両立を考慮する。
・営業さんと仲良くやっていきましょう。

最近デジタル関係のネタばっかり書いていてちょっと辟易してきたので今回は「情シスのお仕事」に話を戻したいと思います。テーマが多すぎてこのままのペースだと2019年度内に全部紹介しきれなくなりそうですし。

↓↓デジタル関係のお話しに興味がある方はこちらへ↓↓

改めて「情シスのお仕事」で取り上げる弊社情シスの業務範囲を貼っておきます。
各業務を紹介する記事のリンクになっているのであわせて見ていってください。

今回は「4.営業支援システム保守」のお話しです。
CRMという言葉が世に広がったのは大分前で1990年代後半から2000年代前半頃でした。私がSEになった頃には既に製品も多数展開されており、目新しいカテゴリではないとも言えます。

しかし近年salesforce等の海外製のオンデマンドSFA/CRMサービスが展開されCXやデータドリブンな経営といったトレンドの一翼を担っています。
SEや情シスにとって縁遠いことの多い営業の世界ですが、システムとなると関与することも多くなっていきます。

毎度の注意事項ですが、あくまで1企業の情シスの事例ですので全ての企業に適用されるものではありませんが、「こういう情シスもあるんだ」ということで参考にしていただけると幸いです。
守秘義務や身バレ防止のため明確にできない部分もありますが、なるべくリアルな現場の状況をお伝えしていけたらと思います。

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CRM/SFAとは

営業活動を数値化するシステム


事例紹介の前にCRMとかSFAについて一旦言葉を整理しておこうと思います。
この手の短縮語は意味も分からず乱発すると逆に理解を遠ざけることがあるので、まどろっこしいかもしれませんが少しお付き合いください。

CRMやSFAは「営業支援システム」に分類される製品群です。
CRMは「Customer Relationship Management」の略で「顧客関係管理」と訳されます。SFAは「Sales Force Automation」の略です。これ単独で「営業支援システム」と訳されますが、どちらも営業活動に関連するシステムです。

SFAは見込み客のステータス等営業パイプラインを管理して、商談の進度や確度を数値化することで計画的な営業活動と精度の高い売上予測を立てることを助けるシステムです。
CRMは顧客との接触記録(アクティビティ)や取引履歴等から、顧客の行動特性や嗜好、属性等、より効率的な営業活動を行うための分析を行うことを目的としたシステムです。

CRMやSFAの目的は、営業活動を「経験」や「勘」ではなく、数値化・見える化することを助けることです。CRMは広義にはSFA等を包括的に含むことがありますが、ここではSFAとの区別をするため狭義の意味で使用します。

また蓄積された顧客データは営業個人に閉じることなく、会社の資産として管理することができるようになることもメリットとして挙げられます。

データ経営は誰のため?

これだけだと営業活動をシステマティックにするいいことだらけなシステムのようですが、営業担当者にとってはシステムへのデータ入力という負荷が付いて回ります。

システム化されていなくたって営業日報等による報告はなされていたかもしれませんが、偏見かもしれませんが営業畑の「経験」と「勘」と「度胸」のような空気とこうしたシステマティックな管理は相容れないことが危惧されます。案件を多く抱えるできる営業マンほど入力負荷が高くなるという悪循環を生みかねません。

管理側としては営業活動が数値化され、見込みも立てやすくなるのでメリットが大きい部分もありますが、管理者自身がこうした数値を活用できないと元も子もありません。システム入力も含めた営業手順が実態に則したものになっていないと、現場負荷ばかりが高まる恐れもあります。SFAを「電子化された営業日報」くらいに考えているとこうしたデメリットが如実に表れてしまいます。

弊社の状況

弊社で利用しているのはオンデマンド型のシステムでSFAとCRMが一体になり、見込み客からリピーターまでをステータスで一気通貫に管理しています。扱っている商材によって異なる部署が顧客情報を更新する場合もあるため、1つの顧客情報に対して複数の案件情報がぶら下がるような形です。

現在使用しているシステムでCRMとしては3代目になるらしく、営業手順自体はきちんと整備されていますが、それはSFAとしての側面のみです。そこから顧客属性に基づく分析などを行うCRMとしての活用はまだきちんと周っていないと言えます。

SFAやCRMの営業自身にとってのメリットは?

営業にとっては「データ活用」<「(自分の)売上増」


SFAによる営業パイプラインの管理はそれなりに上手く回っているので、営業は顧客ステータス等の入力を日々行っています。

しかし本心を言えば「これを入力することが自分の売上にどう影響するのか」という疑問を抱えています。営業にとってはデータ活用なんかより自分の売上増が重要です。営業が評価される基準はいかにモノが売れるかである以上、それに関係しないことに多くの時間は割きたくないでしょう。

その結果、受注確定までのステータスは入力するけど、それ以外の顧客属性の関する情報の更新や手放した見込み客データなどには興味が無く、失注情報などは入力せずそのままで放置された結果、別案件で受注した顧客情報と放置されている見込み客データが重複して他部署から「どちらが生きている顧客データかわからない」と言われたり、経営層が見たいと思っている切り口でのデータ分析が行えないデータになってしまっているのです。

データ入力を営業にとってのメリットにできないか


オンデマンド型のメリットに「帰社報告しなくても外出先から入力できる」というのがありますが、それだけでいいのでしょうか。そもそもデータ入力自体を営業のメリットにすることはできないのでしょうか。

例えば他の営業が手放した見込み客を拾うことができるようにするとか、見込み客からの成約率が高い営業は何をしているのかデータ分析ができるとか考えましたが、これには他の営業にデータを見られることに疑心暗鬼にならず、データを活用して相互に自発的に高めあうような土壌が必要です。

最も有効なのは「データ入力や活用を営業の評価指標にする」ということでしょう。入力していないことを罰するというような減点方式だけでなく、CRMに活用可能な形式でデータを整備することに寄与した等売上以外の評価基準を設けて加点方式にすることで、データ入力を営業にとってのメリットにすることができます。

そもそも管理方法に無理が無いか見直す

またそもそも入力させようとしている項目が多すぎたり複雑だったりすることも負荷の一因になります。まだ案件があったまりきっていない時点から子細な情報の入力を求められると「これだけ入力させられていきなり逃げられたらたまったもんじゃない」となりかねません。

さらに管理者が変わることで分析観点が変わり、現状見ていない項目の入力が引き続き求められるような手順のままになっている場合もあります。

管理項目が適切かどうか、定期的に見直す必要があるでしょう。

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情シスの関与について

営業担当者の話にも耳を傾ける


ここまでの内容にどこまで情シスが関与できるかというと、結構難しい部分が多いです。評価指標などは経営層の判断が必要ですし、管理項目や分析観点は営業管理者のテリトリーになりがちです。

情シスとしては管理項目や手順の見直しが定期的に行われているか、部門横断的に見た時にルールに齟齬が無いかなどをチェックするあたりが必要な立ち回りになるかと思います。

併せて上記のような営業の不満が出ていないかというのも一つのチェックポイントでもあります。システムの不備ではなく手順上の問題であったとしても、システムが槍玉に上げられることもあります。システムで改善できる部分はシステムで対応し、手順で改善すべき点は手順の改善を提案したり切り分けて、たまに単に愚痴ききなりガス抜きに付き合ってあげることで、社内調整を円滑にできることにもつながります。

情シスはシステム屋であると同時に総務的な役割も担っています。こうした人間臭いころもできるようになっておいたほうが世渡りはうまくいくものです。情シスとしては分析等の阻害となるデータのクリーニングのチェックを行い、各部門への指示を出すという役回りもあります。こうした時に協力を得やすい土壌があるのとないのとで対応が変わってくることもあります。

営業視点以外でのチェックを行う

CRM/SFA単独の使い方については営業部門や経営層の判断のウエイトが大きいですが、システム部門として注意しなければいけないことも当然あります。

ERPへの受注情報連動など他システムとの結合や、顧客マスタとしての可用性とセキュリティの両立などが主なポイントです。

元々ERPから派生したCRMパッケージもありますが、そうでない場合に双方のデータはどのような位置付けで、どのように同期をとるのかなどの設計が必要です。
また顧客情報・取引情報はBtoBの場合でも社外秘の重要機密情報ですし、BtoCの場合だと個人情報が含まれる場合があります。高いセキュリティを維持すると共に、必要な情報が共有できるよう仕組みや設定を検討する必要があります。

相手の立場で考え、相手に立場を理解してもらう


私自身、新卒の就職活動の時に真っ先に「営業だけにはならない」と思っていました。自分が作ったものではないもの、自分が自信を持って薦められるものではないものを人に売るということにどうしても抵抗があったからです。
SEになってからは担当業務が内部業務寄りでしたし、自社の営業は「自分たちの出した見積もりに自動的に乗率かけるだけでピンハネするだけして、客から「高い」と言われたときの説明と値下げはこちらに振ってくるろくでもない奴ら」くらいの感覚でした。

情シスになってはじめて、「この人たちが受注取ってこないと自分は給料もらえないんだ」と思うようになり、SFAでの管理など数値的な手順を見て色々考えを改めるに至りました。売上が無ければ利益は出せません。利益が出ない会社は存続できませんが、まず売上があってなんぼなのです。

自社の営業にも自分が想像していたようないかにもな感じの営業マンもいますし、そうでない人もいますが、皆自分の売っているものにプライドを持っています。その人たちが思い切り仕事ができる環境と適切な管理ができる仕組みを両立することが自分の役割なのだと今は思っています。

それと同時にこちらの状況や立場も、できるだけ丁寧に説明するようにしています。情シスは自社の全ての業務に精通する必要があるのに、誰も情シスの業務を理解しようとはしてくれないと言われます。それはその必要が無いだけでなく、こちらからの発信も不足しているからではないかと思います。

情シスは社内の様々な業務や各部門を俯瞰しなければいけない部門です。営業だけ利便性を上げて事務方が不便になってもいけませんし、その逆でもいけません。その結果レスポンスやハンドリングが悪いと見られ、「あいつら何の金も産まないのにトロトロ仕事しやがって」と思われることもあります。何故今できないのか、どのような原因がありそれに対してどのような手を打とうとしているか、きちんと説明することと約束を守ることを繰り返してはじめて信頼は生まれます。

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