バックオフィスシステム保守について | 情シスのお仕事(2019年度改訂版)

バックオフィスシステム保守について | 情シスのお仕事(2019年度改訂版)





対象とする読者

・財務会計、人事給与のシステム化に興味のある経営層
・財務会計、人事給与のシステムの主導権を取り戻したい情シス
・バックオフィス業務にちょっと興味がある通りすがりの人
話の要点
・ヒト・カネの管理を行うのが人事給与・財務会計の業務である。
・人給・財務の部門には権限が集中しやすい。情シスが対等に渡り合うのは無理?
・業務や運用は部門に任せて、情シスはインフラ維持やトレンド紹介しています。
・働き方改革に生産性向上の視点が少なすぎて心配。

今回の「情シスのお仕事」はバックオフィスシステムを取り上げます。
改めて「情シスのお仕事」で取り上げる弊社情シスの業務範囲を貼っておきます。

1.デジタルシフトマネジメント(計画)
2.デジタルシフトマネジメント(業務改革)
3.デジタルマーケティング管理・保守(MA、Web等)
4.営業支援システム保守(SFA、CRM)
5.基幹業務システム保守(ERP、PJ管理等)
6.バックオフィスシステム保守(人事給与、財務会計等)
7.コミュニケーションシステム保守(ファイル転送、チャットツール等)
8.社内業務システム保守(AD、グループウェア)
9.情報セキュリティ(個人情報管理、資産管理、ウイルス対策、教育等)
10.ソフトウェア管理(ライセンス、バージョンアップ等)
11.ハードウェア管理(パソコン、サーバ、スマデバ、ネットワーク機器等)
12.ネットワーク管理(無線、拠点内LAN、拠点間VPN、インターネット)
13.その他インフラ(電話/FAX、プリンタ、プロジェクタ、デジカメ等)
14.上記1~13についての問合せ対応

基幹業務システムの話の中で「基幹業務=ヒト・モノ・カネを管理する業務」と言っておきながら、カネとヒトの話をしていませんでした。
そちらでも書いたのですが、全てを一緒くたに説明しようとすると業務が多岐に渡りすぎて説明する分量が溢れかえってしまうこと、業務主体がライン系とスタッフ系で分かれており情シスとしての携わり方に違いがあることなどから別の分類に分けています。

またSE時代の私の担当業務領域はバックオフィス系業務だったということも、この分類を分けた理由の一つです。今回は情シスの業務の紹介なのか経営視点での人事や働き方改革の話なのか怪しいところはありますが、こんなこと考えている情シスもいると思って見ていただけたら幸いです。

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バックオフィス業務=ヒトとカネを管理する仕事

売るのも買うのもカネの管理が必要


「情シスのお仕事」恒例、業務の説明から取り掛かりたいと思います。

企業活動の第一の目的は利益を産みだすことです。そのためにモノを作りそれを売って利益=お金を産みだします。一方で売るためのモノを作るのにもお金が必要です。

売るにも買うにも企業活動はほぼ必ずお金が動きます。企業のお金の動きは帳簿で正しく管理されなければいけません。「会計」業務は売上や支払い、資金管理など広くお金に関わる業務を指し、「財務」業務は資金調達を司ります。

似たような言葉である「経理」は、本来は会計業務の一部である日々のお金の出入りの管理を指すものですが、一般的に「経理部門」と呼ぶ場合は会計業務を行う部署を指すことが多いでしょう。財務も会計もどちらもお金の管理をする業務なので、統合して一つの部署で担当することもあります。

会計情報は企業の経営状況の判断にも利用されますし、税計算の根拠にもなります。帳簿の正確性は厳格に担保されなくてはいけません。会計士などの士業や簿記などの資格があるように、専門性が高く、法律にも準拠する必要がある業務になります。

モノを作るヒト=社員の管理


個人事業主は営業も仕入も販売も会計も一人でやりますが、ある程度の事業規模で仕事を回そうとすると人手が必要になります。外注すれば既存事業は回すことはできますが、事業の発展や新たな事業の創出は外注に期待するのは難しいかもしれません。そこで社員を雇うという選択肢が発生します。

社員と外注に期待されることの違いは、「事業の継続的発展に寄与する」のか、「指示された業務を期限までに完了する」だけなのかだと思います。これは労働市場の流動性が低い日本であれ、流動性の高い欧米であれ基本的には同じなのではないでしょうか。「事業の継続的発展に寄与する」には、指示された以上の結果を産むための工夫や、一人で稼ぐのではなく全員を稼げるようにするような周囲や部下への教育・指導、新たな事業アイディアの創出・実現などが挙げられます。そしてそれが実現できる社員には相応の評価と対価を与えて、引き続き事業発展に寄与してもらえるように処遇する必要があります。

しかし社員を雇うというのは雇用主にとって大きなリスクでもあります。タスク単位の外注であれば都度費用を支払えばいいだけですが、社員には成果が出なくても基本給が発生します。使い物になるように教育等の投資をして成果がアウトプットされれば良いですが、うまく育たなかったり退職されたりするとその投資も無駄になってしまいます。

「ヒトがいないと業務は回らない」とだけ考えると、新卒採用は入社時点で何の戦力にもならず非効率です。そのため中小企業は経験者の中途採用に積極的です。しかしこれは社員の教育・育成の費用とリスクを他の企業に依存しているとも言えます。育成に成功した人を他の企業は簡単に手放すでしょうか。自社の必要とするスキルを持ち合わせた人が都合よく求人応募してくるとも限りません。

リソース不足で事業が回らなくなる前に、ある程度リスクを取ってでも今後必要となるスキルを持った人を自前で育てていく必要があるのです。そのためにはある程度以上の規模の企業は素材を見極めて新卒採用を行い、使い物になるように育てていくのです。

長々と書きましたが、「企業が社員を雇うからには、そのリスクに見合うアウトプットが作れる社員に育成する必要があり、育成に成功した社員を手放さないために正当な評価と報酬が不可欠」ということがまず根底にあり、その実現のために存在するのが人事制度であり給与制度であるということが言いたかったわけです。

ヒトを確保するための採用活動、社員情報の管理、異動や昇格降格とその判断に必要となる業務評定の管理、そして人材育成を司るのが「人事」です。
人事情報に基づいて給与表と紐づけて給与を計算するのが「給与」の主な役割です。その他通勤や扶養などの各種手当や年末調整業務、給与明細の配布なども給与業務に該当します。
勤怠・労務管理などは、適正な勤務時間の維持という意味では人事、残業時間からの手当計算という意味では給与どちらもに影響するエリアです。

企業においては人事・給与等の名称で呼ばれる部門が主に担当する業務になります。
総務ラインの中でこれらの業務を纏めて行う部署がある場合もあります。

ヒトやカネは権力に繋がる


財務会計や人事給与は、直接的な利益を産みださない業務ですが、ヒトやカネの管理は組織にとって欠かすことができないばかりか、場合によっては組織内で強い権力を持つことになります。

経理は会社の金庫番です。経理が首を縦に振らなければ会社のお金は使えません。モノを買うにも経理の承認が必要です。専門性が高く規律が求められるお金に関わる業務のため細かいところまでシビアです。

人事給与は業績の正当な評価とその結果の給与や昇給昇格への反映に直結します。人事権は企業内において錦の御旗と言ってもいいでしょう。

同じく直接的な利益を産みださない情報システム部門は、盾突くと怖い権力を持った部門ではありません。「言うこと聞かないならネットワーク止めるぞ!」なんて、滋賀県民が「琵琶湖の水止めたるからな!」と言うくらい非現実的なジョークでしかありません。しかしセキュリティのためにWebサイトの閲覧やスマホアプリの利用を制限、セキュリティ教育の受講やウイルスチェックの実施を督促など、現場部門に指示を出すことが多く、下手をすれば「あいつら1円も稼がないのに俺たちの業務の邪魔ばっかりしやがる」と反発を受けかねない損な役回りだったりします。

システムを導入する側の人間からすると、権力を持って社内をコントロールできる部門がステークホルダーであれば、そこさえ説得すればよいのである意味楽でした。しかしこれが中の人間、情シスになると、社内で最弱の権限しか持たない情シスが社内で最も権力の集中した経理部門・人給部門と相対さなければならないのです。

という会社もあるみたいです(他人事)

とか言うと、さも情シスが虐げられているように聞こえますが、少なくとも私の会社の場合そういうことはほぼありません。

これは完全に我が社の事情としか言いようがありません。私の会社の組織体系は執行役員兼総務部長の下に経理、総務(人事給与)、情シスが並列で並んでいます。

システム関連の費用は経理はほぼ一切関与せず部長決裁で通ります。各部門からのシステム関連の稟議も、決裁権は無いですが必ず情シスの査閲が入ります。費用面も含めた妥当性の判断を情シスしかできないからです。要は「システムに関する費用について経理はほぼ蚊帳の外」なのです。
人事権もほぼ総務部長にしか無く、総務は決定に従って事務処理を行うような体制です。

そのため自身の上位上司との意思疎通さえ上手くいっていれば、経理だろうが総務だろうが何のしがらみにもならないという状態なのです。

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バックオフィスシステムに関する情シスの関与について

メインはインフラのお守り


とはいえ財務会計や人事給与の業務の中身まで深く立ち入ることはほとんどありません。人事情報や給与情報はシステムと言えども一社員のため簡単には閲覧できませんし、財務会計は専門性が高いので細かい話まではできません。そのためシステム保守も稼働状況やバックアップの確認などインフラ周りに限定されます。そして基幹システムのクラウドERP化を機に、その業務すらほぼ無くなってきました。

財務会計は企業による差異があるとすれば科目の体系だったりくらいで、基本的な業務は大きくは違いません。またかなり早くからシステム化が進んだ業務領域だったこともあり、システムの取扱いに精通した人が多いのも特徴です。人事給与についても、特段カスタマイズすることなく利用できています。

もちろん業務効率化を進めることも必要ですが、そこは上位上司や外部の力を借りており、畑違いの情シスは極力関与しないようにしています。

トレンド情報の提供

バックオフィス系システムのトレンドを紹介したりもしています。

人事系のシステムでのトレンドだとタレントマネジメントシステムがあります。
平たく言ってしまうと「人事システムで管理していたデータをもっと見える化して事業活動に活用しよう」というようなシステムで、スキルシートに基づいた社員のマッピングを可視化したり、個人の業績評価の達成度等を横並びで見て判断できるようなインタフェースが準備されていたりするものです。

ただしこうした仕組みの活用は、社員のスキルを正確に把握する仕組みやスキル向上を促す施策、不平等の無い業績評価の基準の提示やきちんとしたフィードバックがあってこそ成立します。システムを入れれば自動的にスキルシートが作られるわけではありません。

そこら辺の現実的な適用の課題も併せて提示することが重要です。

労務管理≠働き方改革


2019年4月の改正労働基準法と、それに合わせて厚生労働省から出た「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」により、多くの事業者で勤怠管理をエクセルやタイムカードからシステムへの移行のセールスを受たのではないでしょうか。

勤怠管理はSE時代に主に担当してきた分野だからこそ言いますが、「勤務時間を管理すること=働き方改革」ではありません。
世の中全般的に働き方改革が都合よく解釈されている気がしています。働き方改革は「労働生産性の向上による勤務時間の短縮」を目指していますが、「勤務時間の短縮」が先行して「労働生産性の向上」が置き去りにされている状況が散見されます。

リモートワークを導入さえすれば労働生産性は上がるのでしょうか。あるいは導入効果の測定とか言って「これだけの時間削減できました」という数字作りにさらに無駄な時間をかけていないでしょうか。

労務管理は労働生産性が向上したことを測る指標の一つに過ぎません。残業が減ったことだけ測定して業務のアウトプット量を見なければ、ただ単に仕事を放り出して早く帰っただけかもしれません。リモートワークの労務管理方法をきちんと規定しないと、暗に自宅持ち帰りのサービス残業を推奨することに繋がりかねません。

情シスが言うのもなんですが、ITやデジタルに投資なんかしなくても、ダラダラやっている会議をアウトプットを決めて時間通りに終わらせたり、無意味に回覧者の多い決裁を簡素化したり、誰も見ていない定例報告資料をやめたり、無暗にメールのCCを付けさせないようにしたり、電子資料を読んでくれない人のために紙資料を印刷するのを止めたりするだけで、随分効率化できるはずです。

時流に乗って「通勤時間が無駄だからリモートワークさせろ」とか「スーツやヒールだと生産性が落ちるからカジュアルを許可しろ」みたいな目新しいことに飛びつく前に、目の前の無駄をなんとかすることからはじめるべきではないでしょうか。それを放置して一足飛びに新しいことをしようとすると、余計に業務が増るだけのように思えます。

生産性向上を数値として把握したいのであれば、売上高や出荷額と残業時間数を比較し続ければいいのです。アウトプットが変わらず残業時間が減っていれば効果があったということでしょう。効果数値を作るために新たな業務を増やしてはいけません。そして何より社員が実感として「効率的になった」と思えるかどうかが一番の指標なのではないでしょうか。

前述の人事業務の話ともリンクしますが、「残業時間が減って早く帰れてラッキー」と思う社員より「無駄な作業の時間が減って、本来業務に集中できる時間が増えた」と思う社員を喜ばせるほうが会社としてもメリットが大きいはずです。残業時間を抑制すれば時間内に業務を終わらせようとして自発的に社員が生産性を上げてくれると期待している経営者がいるのであれば(と考えているとしか思えない施策が多いように見えるのですが)、そんな人の会社には「残業時間が減って早く帰れてラッキー」と思う社員しか残らないでしょう。

生産性を上げることは最終目的ではない

目の前の無駄な作業を整理し、ITやデジタルによって業務効率化が図れれば全て上手くいくかというとそうではありません。業務効率化は不採算事業からの撤退やリストラのようなもので、企業の継続的成長のために割ける時間がようやく捻出できただけに過ぎず、そこで止まれば縮小均衡を余儀なくされます。効率化によって生まれたリソースを振り替えて新たな成長エンジンとしていくことこそがゴールなのです。

こういう言い方をすると「激務が減って楽になるかと思ったら、減った時間で別のことやれってことかよ!」みたいに感じるかもしれませんが、当たらずとも遠からずなのです。生産性の高い社員・組織を作るということは、それだけ能力の高い人材を必要とします。「能力が高い」というのは、同じ時間で人の数倍仕事が処理ができるという話ではありません。簡単に言うと「仕組みを考えることができること」だと思います。より効果的な広告・宣伝の仕組み、同じリソースで売り上げや利益を伸ばすための仕組み、適切な組織運営・育成を行える仕組み、これらを捻り出すことに時間を割き、実践し、結果を出すことが求められるのです。

業務や組織が効率化され生産性が向上しているのに、自分だけこれまでと同じ役割、同じ仕事でいい訳がありません。なんか意識高そうで嫌だなと自分でも思うのですが、仕事のやり方が変わり、組織が変わり、人が変わってはじめて「改革」と言えます。企業も社員もどちらもが改革の恩恵を受けようと思えば、自身の仕事のやり方を変えることを避けては通れないのではないでしょうか。

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