デジタルトランスフォーメーション(DX)という概念 | DXとは何か

デジタルトランスフォーメーション(DX)という概念  | DXとは何か




対象とする読者
・「DXって言葉は聞くけど実際何かはよくわからない」という人
・「DXとかCXとか短縮横文字多すぎなんじゃ!!!」という人
・デジタルにちょっと興味のある通りすがりの人
話の要点
デジタルトランスフォーメーション(以下DX)とは「デジタル技術を活用した新ビジネスモデルを創造して勝ち組になろうぜ!」的な話である。
・DXはデジタル・ディスラプションと呼ばれる市場破壊(と創造)を急速に進める。
・補足:CX=カスタマーエクスペリエンス(≒顧客体験)。優れたCXを提供することで顧客を獲得する。デジタルで実現するCXもあるし、そうでないものもある。

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を耳にしたことのある方が増えてきているのではないかと思います。しかしDXとは何かを正しく理解することは難しいかもしれません。

DXという言葉が脚光を浴びたきっかけの一つとして、2018年に発表された経済産業省のレポートがあります。所謂「2025年の崖」というやつです。要約すると「日本企業がこのまま旧式の基幹システムを使い続けると、2025年以降日本経済は年間約12兆円の損失を被り続ける。これを克服するにはDXを推進していかなければ!」というものです。お役所が出したレポートとしてはかなりセンセーショナルな内容と「2025年の崖」というキャッチフレーズから、瞬く間に拡散されていきました。

別記事にて弊社のDXの取り組みを明かせる限りで紹介していますが、「そもそもDXって何?」という話をしていなかったので、今回はDXとは何かというお話をしていきたいと思います。

↓↓DXの取り組みの紹介記事↓↓

纏めて書こうとしたら凄まじい大長編になりかけたので、複数記事に分かれることになりました。全体の内容としては大きく4つのセクションに分けてDXについて説明していきます。

1.DXの概要
2.企業が取り組むDX施策
3.DXを実現するデジタル技術の紹介
4.失敗するDXの取り組み方と現実的な提言

ということで今回は1のDXの概要をお話していきたいと思います。

↓↓「2.企業が取り組むDX施策」の記事はこちら↓↓

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デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か

「デジタル技術を活用した新ビジネスを創造して勝ち組になろうぜ!」的な話

ここにたどり着いた人に今更経済産業省の定義するDXの定義とかWikipediaに載っている各種定義の話をしても時間を浪費させてしまうだけなので端的に言うと、DXとは「デジタル技術を活用した新ビジネスを創造して勝ち組になろうぜ!」的な話です。

デジタル」というのも最近よく使われる単語ですが、「IT」の進化形と思ってもらえばいいと思います。区別としては、主にお金や数量などもともと数値で管理・表現されていたものをコンピューティングやネットワークで効率的に処理してきたものを「IT」、音声・画像・映像・感覚などありとあらゆるものをデータ化・数値化して取り扱えるようになるのが「デジタル」といったところです。代表的なデジタル技術として、AIやIoTがあります。

「勝ち組になろうぜ!」なんて言うと「何?新手のビジネス詐欺?」と思われる方もいるかもしれませんが、よくわかってないけど盛り上がっている空気感もあるので当たらずとも遠からずな気もします。

事例で説明するDXという概念

DXとは概念です。「これを使えばDXを実現できる」というものではありません。

デジタルカメラを例に説明していきます。実体験として理解しやすいものをチョイスしたので、対象にしたものが上で定義した「デジタル技術」に該当しないものもありますが、あくまで概念の理解に重きを置きましたのでご了承ください。

デジタルカメラが登場したことによって、フィルムカメラからデジタルカメラへの移行がおきました。デジタルカメラで撮影した写真はデータとして取り扱えるため、ネットワークを介した送受信が行えるようになりました。その技術を利用して写真を共有するサービスが生まれ、さらにSNSなどでの写真データの共有・拡散が普及していきました。

「デジタルカメラ」という存在がDXなのではなく、「デジタルカメラで撮影した写真データをインターネット上で共有するという新しい習慣(およびそのサービス)を世に広める」のがDX、と理解してもらえば大きく間違いは無いかと思います。

事例をもう一つ。こちらは失敗例として、携帯電話のインターネット接続の話をします。

携帯電話でインターネット通信ができる技術が登場しました。携帯電話からインターネット上の様々なサービスにアクセスすることができるようになりました。携帯キャリアは自身のインターネットプラットフォームと料金請求を組み合わせて、「携帯代払いでインターネット上の有料コンテンツを利用する」というフォーマットを構築しました。

しかしこのフォーマットは対象をiモード等の「閉じたインターネット」に終始してしまった結果、スマートフォンOSというプラットフォームを足掛かりに世界規模のアプリ課金システムを構築したAppoleやGoogleに市場を蹂躙されてしまい、最終的にはインターネットコンテンツとは関係のない決済部分だけ(d払い等)に特化して、ポイントサービスでは楽天等と、決済サービスではPayPay等と戦うという、「別に携帯キャリアじゃなくてもできるサービス」に変質してしまいました。

コンセプトは間違っていなかったし、着メロ等による課金は一時大きな収益をあげましたが、その成功体験に引きずられてしまい新たなサービスに取って代わられてしまったという事例です。

最後に紹介するのはDXの代表事例としてよく挙げられるタクシー配車サービス「Uber」です。


Uberはタクシー業界とは全く異なるところから発生し、アメリカのタクシー業界の地図を一瞬で書き換えました。

Uberは人手を介した配車サービスをモバイルアプリで利用者とドライバーを直接つなげることで簡素化しました。利用者から電話を受けてドライバーを手配していたオペレーターの人的コストを排除し、ドライバーが直接サービス提供をすることで価格設定やサービスレベルが自由競争になって利用者の選択の幅は増加しました。またドライバー側も自助努力によって大きな成果を得ることも、時間に縛られず都合のいいタイミングだけサービスを提供することも選択できるようになったのです。

Uberが提供したのはモバイルアプリではなく、利用者とドライバー双方にとっての新たな選択肢だったと言えます。

まとめるとDXは「新たなテクノロジーと新たなサービスで、これまで存在しなかった新たな価値を提供して市場を創造する」ということになります。デジタルに限らず新技術が世に登場するたびにこうしたサイクルが繰り返されてきたはずなのですが、なぜDXは特別に盛り上がっているのか。それを理解するキーワードが「デジタル・ディスラプション」です。

デジタル・ディスラプションの脅威


先のデジカメと携帯の事例を再度取り上げます。

デジタルカメラの普及は、同時にアナログカメラ市場の衰退を起こしました。
その波は世界最大のフィルムメーカーだった米コダックを倒産に追い込み、日本ではコニカミノルタが合併、富士フィルムは多角化経営に舵を切りました。フィルムカメラやフィルムという産業を破壊し、デジタルの新しい産業を創出したのです。

携帯電話の場合だとCD売上の減少でしょう。着うたなどの音楽ダウンロードサービスによりCD売上は激減しました。CDの売り上げに偏重していた音楽業界は一時大きな打撃を受けましたが、その後様々な音楽配信サービスが立ち上がり、新たな局面を迎えたのです。

こうした現象は産業革命以降様々な分野で発生してきました。ラッダイト運動(熟練工による機械打ちこわし運動)のような揺り戻しもありながら、新たな市場を作り出してきました。

新たな技術が既存の市場を破壊することはこれまでもありましたが、デジタル技術によって発生する市場破壊を「デジタル・ディスラプション」と呼びます(単に「ディスラプション」のみで使われる場合もある)。

デジタル技術はこれまで人間にしかできないとされていたようなこと(例:視覚による判断や声でのコミュニケーション)や、大きなコストをかけて実現してきたこと(例:広範囲に置ける大規模なデータ収集や高度な計算機械を必要とする処理)をテクノロジーで解決することで、これまでに無い高い生産性を実現することができるようになりました。具体的にはAIやIoTがそれを実現するキーになっています。第一次産業革命における産業機械の登場と同じくらいのインパクトがあるからこそ、デジタル化は「第四次産業革命」と称されます。「AIが人間の職業を奪っていく」というのは産業機械に職を追われた熟練工を想像すればさほど大げさな表現ではないのかもしれません。またデジタル技術は汎用的な技術であるため、デジタルカメラやネットワーク設備のように開発や設備に大きなコストを掛けなくても、比較的小さなコストで新たな仕組みを立ち上げることができます。

その結果、ディスラプター(破壊者)はこれまでの同業他社とは全く違うジャンルから現れ、スモールスタートからあっという間に巨大な資本まで飲み込んでいくというのがデジタル・ディスラプションの脅威なのです。Uberが米タクシー業界におけるディスラプターであったことは言うまでもありません。

具体的には消費者行動は監視カメラの動画認識に、オペレーターやコンシェルジュが行ってきたユーザーサポートは音声認識やbotに、人手と足が必要だった広範囲なデータ収集はIoTに、経験や勘、調査会社への依頼などを必要とした市場動向調査はビッグデータ解析に、コンピューターハードの保守作業やシステムのメンテナンスの委託はクラウド利用に、といったように様々な分野で人からデジタル技術への置き換えが行われることで、Uberの事例のように人的コストが削減や、これまでに提供できなかった価値を提供することが短期間に実現できるようになるのです。

熟練工を機械に置き換えることとの類似がイメージできたでしょうか。第一次産業革命当時も「機械に人の手仕事の変わりはできない」と思われていましたが、市場経済の原理はそれを淘汰していきました。もちろん熟練工による手仕事に付加価値を見出すこともできますが、市場はニッチであり現在の事業規模を維持できる保証はありません。「うちの業界は関係ない」「デジタルなんか無くてもうちの商売はやっていける」なんて言っている熟練工はあっという間に淘汰されていく、だからDXの波に乗り遅れてはいけない、というのがDXが注目されている理由なのです。

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補足:CX=カスタマーエクスペリエンス

全然違う意味だし特別関連性が深いわけでもない言葉ですが、CとDの違いしかないのでおじ様方が混同することのある「CX」という言葉もついでに説明しておきます。

CXは「カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)」の略称です。和訳すると「顧客体験」となります。

製品やサービスの価値を機能や質だけでなく、製品に興味を持ち、購入検討から実際に購入、実際にその製品を使用し、継続的なサポートを受けるという製品に纏わる流れとして捉えるフォーマットを「カスタマージャーニー」と呼びます。

ユーザーは製品やサービスを購入することで、その払った対価にふさわしい、あるいは上回る価値を得られることを重視します。カスタマージャーニーにおける企業とユーザーの全ての接点で得られる体験を向上させることで高い満足感と付加価値を与える、というのが「CX」という概念です。

こちらも概念的な話だけだとわかりにくいので実例で説明しましょう。

CXの1つめの事例はAppleのiPhoneです。

iPhoneはインターフェースや操作性等機能面で優れているから人気なのでしょうか。もちろんそれもありますが、「iPhoneで実現するスマートなライフスタイル」や「Appleの哲学・想い・こだわり」への共感があると考えます。
iPhoneが提供しているのはスマートフォンとしての機能ではなく、ライフスタイルであり、価値観であり、それこそがCXと呼ばれるものなのです。その体験は熱狂的なAppleファンを育てあげ、繰り返しApple製品を購入するリピーターになってくれます。

2つめの事例はスターバックスです。こちらはDXにも関連してきます。

スターバックスは「Mobile Order & Pay」という注文と支払いを行うモバイルアプリを作りました。日本では東京周辺から徐々に展開しているようです。このアプリは店舗に行く前にアプリから注文を行い、店舗に付いたら商品を受け取るだけ、支払いはアプリ内で完了しているというシステムです。待ち時間無く、現金どころか財布も携帯も触ることなくコーヒーを受け取れる、という「体験」を提供したのです。

しかもこの仕組みは顧客の購入履歴をデータとして取得できるため、購入したメニューやスターバックス特有のカスタマイズ、頻度や傾向などが全て収集できます。収集したデータを元に顧客に合わせてカスタマイズしたサービスやメッセージでレコメンドすることができ、モバイルを活用したDXとして見ることもできます。

CXが重視される背景としては、顧客のニーズや購買行動の多様化により、単に「価格が安い」「新奇性がある」というだけでは差別化が困難になってきていること、人口減少による国内市場規模の減少が見込まれる中で既存顧客(リピーター)の囲い込みが重要になっていることなどが挙げられます。

より良い顧客体験のためにDXを活用する(=DXによるCX向上)こともあるし、上述のスターバックスのようにCX/DXが同居するような事例もあります。CX向上にITやデジタルが関連することは比較的多いかもしれません(WebサイトにおけるCX向上等)。

DXと直接的に関連する言葉ではないですが、語感や文字が似ているついででCXも覚えておいて損は無いと思います。

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