・「AIとかIoTで何かやれ!」とか言い出す経営層。
・「AIとかIoTで何かやれ!」と言われて困っている担当者。
・AIとかIoTに興味はあるが何かよくわからない通りすがりの人。
・AI:「なんとなく似ている」みたいな人間っぽい判断を高速・大量にできるようになったコンピューター。学習させる必要がある。
・IoT:インターネットに繋がったセンサー。設置している場所までわざわざ行かなくてもデータが取得できる。インターネット接続環境(モバイル可)が必要。
デジタルトランスフォーメーション(以下DX)について、4つのセクションに分けてDXについて説明している「DXとは何か」。
2.企業が取り組むDX施策
3.DXを実現するデジタル技術の紹介
4.失敗するDXの取り組み方と現実的な提言
今回から3つめのテーマを取り上げます。
↓↓「1.DXの概要」の記事はこちら↓↓
↓↓「2.企業が取り組むDX施策」の記事はこちら↓↓
まずはDXの代名詞と言ってもいい、AIとIoTについて触れていこうかと思います。
尚、本解説は専門的な技術を解説することではなく、「大体こんな感じのものだから、ビジネスにはこんな風に活用できるんじゃない?」を説明するためのものです。
技術的な知見を求めておられる方はご遠慮ください、というか恥ずかしいので見ないでください。
企業活動を対象に考える「AIとは」
人間が得意としていた領域に入ってきたAI
まずは4枚の写真を見てください。
4枚とも犬の写真です。人間であればかなりの割合で犬の写真だとわかるでしょう。これを犬だと認識するために、人間は「記憶」を辿り、且つ「類推」します。
全ての犬種に精通している人は少ないと思いますが、自分の記憶にある犬の姿に近いかどうか、知っている犬種との共通点、近似点は無いかを繋ぎ合わせて、「多分犬である」と結論付けているのです。
しかしコンピューターはこれを行うことが苦手でした。4枚の写真の生き物はそれぞれ大きさも色も顔形もまるで違いますし、姿勢や写っている角度や頭数、背景も違います。
まずは写真の中から対象となる物体を特定することが第一関門です。単純に色だけでは判定できませんし、形状もそれぞれ違います。「こういう形状をしているものは一個体として判別する」ことを判定しなければいけませんが、漠然とした「個体」の特徴となるとより一層判別が難しくなります。
なんとか個体に辿りつき、その色や形状を把握し、保持しているデータと照合するとしても、同じ色形で同じポージングをしているデータがあるとは限りません。コンピューターは「完全一致」を探すことには長けていますが、「なんとなく似ている」という判定が苦手です。
しかしAIによって、部品を細かく分けたり基準となる特徴を幾つも設けて、何割の部分で一致するものがあるかを測定することで、例えば「69%以上一致=なんとなく似ている」のような判断をコンピューターができるようになったのです。そこには画像から対象物の構造を測定する画像認識等様々な技術が組み合わされていますが、ここでは一旦AIによる判断だけを取り上げます。
AIは「学習」が必要である
照合するデータはAIに「学習」させる必要があります。基準値を人間が設定して学習させる「機械学習」や、基準値自体をAIに設定させる「深層学習」によりAIは大量の照合データと判定基準を持ち合わせることができます。学習させる方法や学習させるデータによってAIの判定は変わります。また学習させたとしてもAIの判定が100%正確とも限りません。
例えば「犬の画像を学習させたAI」が先ほどの4枚の写真を全て「犬」と判定するとは限りません。しかし実は冒頭で「人間であればかなりの割合で犬の写真だとわかるでしょう」と書いた通り、人間であっても全員が100%「この写真は犬だ」と答えられるとは限りません。性別・年齢・国籍・学歴等の偏りによって正答率は変動する可能性があります。人間とAIはその点は同じと考えなければいけません。トップブリーダー100人を集めた回答と同じ確率にしたければ、それに匹敵する学習がAIにも必要なのです。
企業活動に影響を与えるAI
企業活動で犬の写真を判別することは稀有かもしれませんが、これが人間の写真・映像だとどうでしょうか。
例えば店舗にカメラを設置して、来客の性別、年齢、立ち止まって見た商品、手に取った商品などの映像をAIが判別できるとしたら、精度の高いマーケティング情報を毎日自動的に得ることができます。さらに販売した商品のPOSデータから売れ筋や利益率の高い商品などをスコアリングして、前述の顧客導線と組み合わせて最適な陳列位置まで提案することもAIで可能になります。
来店客をカウントするためのバイトも、POSデータを分析するアナリストも、店舗レイアウトを考える店舗責任者までいらなくなります。そして店員すら無くして決済まで自動化したのが、Amazonが運営する無人コンビニ「AmazonGo」です。
AmazonはIT・デジタルの企業というイメージが強いですが、その根幹を支えるのは物流です。膨大な商品を取り扱うAmazonにとって入庫管理やピッキング・在庫管理などの倉庫管理業務は非常に重要な業務の一つと言えます。AmazonGoの原型は恐らくこの倉庫管理業務の効率化にあるのではないかと考えます。それをそのまま店舗に適用したのです。
Amazonは無人コンビニを普及・展開したいわけではないでしょう。画像認識やAIを活用した近未来の姿を具現化して提示して見せたのです。そしてこの状態を指して「AIが人間の仕事を奪う」と言われるわけです。AIが人間的な判断を高速で大量に処理することができるようになったことで、コンビニ店員が姿を消す未来もありえるということです。
これはあくまでもAI活用の一例です。AIが得意とする領域として他にもビッグデータ分析などがあります。
企業活動を対象に考える「IoTとは」
「インターネットに繋がったセンサー」=IoT
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を一言でいえば、「インターネットに繋がったセンサー」です。センサーと言ってもいろんなものがあります。温度や湿度を測るもの、速度や傾き、圧力等を測るもの、その測定結果がインターネットを通じて取得できるようになったのがIoTである言えます。
例えば速度違反自動取締装置(通称オービス)はフィルム式のものが多く、いちいちフィルムを回収しなければいけません。しかし所謂ネットワークカメラはネットワークを経由してリアルタイムに画像が送られてきます。
最近はこのような赤ちゃんやペットの見守りを目的とした商品が出ているくらい一般的に普及しています。これもビデオカメラという視覚センサーがインターネットと接続したものと捉えることができます。
センターがインターネットと繋がると何が起きるか
センサーがインターネットに繋がることにより、これまで実際に設置場所まで出向かないと収集できなかった情報がリアルタイムに届くようになります。
例えば地中深くに埋めてしまう水道管に振動や水量を測定するセンサーを取り付け、水道管の異常を未然に検知するなどといった使い方です。水道管の異常を確認するのに毎回毎回道路を掘って確認するのと比較すると大幅な改善です。これがインターネットを介して行われることで、ネットワークに繋がる場所であればどんな場所のデータでも取得することができるのようになるのです。
IoTとモバイルネットワークの関連性
センサーはどうやってインターネットと繋がるのか。センサー1つ1つに光ケーブルを刺していたらとてもじゃないけどコストがかかりすぎますし、設置場所の自由度が限られます。
家庭内のIoT機器であれば家庭内のWiFiを経由することもできますが、前述のような埋設する水道管だったり周囲に電源設備さえもない所の場合どうすればよいか。
そこで登場するのがモバイルネットワークです。約めて言うと、「センサーにSIMカード刺してアンテナ付けたら携帯の電波が届くとこなら同じ回線で通信できるでしょ」ということです。
モバイルネットワークについては「5G」というキーワードも出てきていますし、モバイルデバイスの利用自体もDXの要素となっている場合もありますが、そもそもインターネットに繋がらないと役割を果たせないIoTセンサーにとって、モバイルネットワークは切っても切れない関係になります。
企業活動に影響を与えるIoT
IoTの先進事例として知られているのは大手建築機器メーカー・小松製作所(以下コマツ)でしょう。
全世界40万台の建築機器をネットワークで繋いで常時監視、遠隔制御。GPSで1台1台の場所を測定し、盗難やトラブルなどがあれば遠隔でエンジンストップができるという「KOMTRAX(コムトラックス)」は、世の中にまだIoTという言葉が広まるより前、1999年に開発されたシステムです。同様のシステムは他社でも開発されましたが、オプションではなく一早く標準装備にしたことでコマツの市場優位性が確立しました。
特に中国市場において重機購入のための銀行ローンが組まれる際、コムトラックスが標準装備されているコマツの製品は与信が通りやすく(銀行としても債権のとりっぱぐれが少ない)一気に販路を拡大できたそうです。
IoTの活用範囲は広く、車、建物、電子機器など、まさに様々な「モノ」をインターネットと繋ぐことができます。コネクティッドカーやスマートホームという言葉も広がりつつあります。
IoTで何をするか
活用範囲の広さゆえにIoTのビジネス利活用はAIと比べるとまだまだ広がりが見込まれます。逆に言えば「広すぎてどう活用するかイメージがつかない」という面もあります。
IoT=ネットワークに接続されたセンサーデバイスによって実現できることを想像するのにうってつけの教材があります。
[ソニー] Sony MESH 7タグセット MESH-100B7A |
SONYが発売している「MESH」です。センサーデバイスをネットワークを使って紐づけて、手軽にモノづくり体験ができるデバイスです。
以前個別でご紹介した記事もありますので併せてご紹介しておきます。
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