企業のデジタルマーケティングの全体像を考える | 情シスが語るデジタルマーケティング

企業のデジタルマーケティングの全体像を考える | 情シスが語るデジタルマーケティング





対象とする読者

・企業のデジタルマーケティングとはどんなことをするのか知りたい人
・デジタルマーケティングの情報が散在して整理できずに困っている人
話の要点
・Web集客、来店・問い合わせ施策、Webサイト、MAなどが代表的な施策である。
・ポイントは「人任せにしない」「一つに偏らない」「関連性と整合性」
・デジタルマーケティングは個人を紐づけてスコアリングすることを目的としているが、パーソナルスコアリングには賛否がある。

企業のデジタルマーケティングを考える「情シスが語るデジタルマーケティング」。
前回は「何故デジタルマーケティングが必要か」というお話でした。


今回は個別の施策の話をする前に、全体像を整理してみようと思います。
デジタルマーケティング=Webサイト、SNS、MA、Web広告…など色んな要素があります。
全てに手を出さなければいけないわけではないですが、各要素がどのように影響しあって最終的に何の成果を出すのか考えていきましょう。

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企業のデジタルマーケティングの全体像を考える

デジタル化される前の状況

※クリックすると拡大します。

画像に透かしなんか入れていますが、こうした思考を纏めるのって結構労力がいる作業です。権威があるわけでもないのでお金を取ろうとまでは思っていませんが、一応権利だけは主張しておきます。

お客様が来店したり営業に問い合わせがあって追客をはじめるところをマーケティングと営業の責任分界点とします。マーケは営業にお客様を渡すまでが仕事です。

この図を見て「さすがにここまで昭和的な営業はしていない」と思うかもしれませんが、後述のデジタル化された図との対比のためにあえてこうしたというだけではなく、実際こういう状態の企業は少なからずあります。ホームページも無い企業もありますし、ホームページがあってもそこから問い合わせや来店に繋がる導線が整備されていない企業はもっとたくさんあります。

営業が足で稼ぐことを完全に否定するわけではないのですが、例えばあなたの会社の営業メンバーは何人いて、年齢の構成比はどうなっているでしょうか。
新卒は毎年何人採用しているでしょうか。
現在と同じペースで推移したとして、5年後、10年後の人員構成はどうなっていますか。
新卒採用を増やす方法もありますが、ベテランと新人では戦力が違います。
人員構成をキープするには中途採用も必要になりますが、30・40歳台のバリバリの主力級の人材は引く手あまたですから簡単に獲得はできません。
高給で獲得してきたとして、現在の社員から給与格差の不満も出ます。

「2025年の壁」に向けてデジタル化を推進するのは、レガシーシステムの継続利用費用がかかるだけではなく、5年後の人員構成は現在と同じ事業形態を継続することすら難しくなるので、その前に事業形態や業務手順を5年後、10年度に耐えられるやり方にしておかなければいけないということなのです。

デジタル化された状況

※クリックすると拡大します。

こちらがデジタルマーケティングで実現する集客のイメージです。
あくまでサンプルであり、必ず全部やらなければいけないわけでも無いですし、逆にこれ以外にも施策はあります。
色んなコンテンツや矢印があってややこしそうですが、大きくは4つのカテゴリーに分かれています。どのカテゴリーも最後に向かう矢印は来店・問い合わせです。

これだけ見ると「ただ単に情報露出を増やしただけ」のように見えなくもないですが、重要なのは矢印の色の濃さです。濃くなるほど受注確度が高まっていることを表しています。
デジタルマーケティングは単に情報に接する回数や情報量を増やすことで確度を高めるだけの施策ではありません(その面もありますが)。
情報に触れてもらうことでユーザーを育成し、何の情報に触れたかを解析してユーザーの興味や温度感を数値で把握し、その上でユーザーと接触することで受注の確度を上げるための施策です。

「WebページやSNSで何を見てたかだけでユーザーの温度感がわかるのか?」と思うかもしれませんが、飛び込みで来店された客の温度感を探るより、「ホームページのこのページを見ていた人」「送付したメルマガのこのジャンルをよく開いていた人」がわかっている方があきらかに有利です。

デジタルマーケティングには「消費者の行動は変わってきている」という話が必ず出てきます。

【現代の消費者行動】
・店に出向いたり営業に接触する前に、まずは自分でインターネットを検索して、ある程度あたりを付けてから来店したり問い合わせしたりする。
・売る気満々の営業マンの話よりインターネットの口コミやメジャーなWebサイトの情報を信頼する。

自分の行動、周囲の動きなどを見ても思い当たることが多々あるのではないでしょうか。
価格比較サイトや口コミサイトで情報を確認する。
欲しい商品が決まってもWebのカタログ情報をくまなくチェックしてから購入を決める。
SNSで話題になっている商品は試しに買ってみたくなる。

これまでのマーケティングは「興味があるかどうかわからない不特定多数にとにかく情報を流して情報に触れる機会を増やす」というマスマーケティングが主流でした。
マスマーケティングは、売りたい側が消費者に情報を一方的に与えるプッシュ型の手法です。
しかし消費者がインターネットで情報を収集するというのは、消費者自らが情報を取得しにくるプル型の手法です。

プッシュ型で情報に触れた人よりプル型で情報に触れた人のほうが顧客になる確率は高いです。
相手は自ら情報を検索するくらい興味を持っている人ですから、相手の興味もわからないまま一方的に発信しているテレビCMを見た人よりも商品を購入する可能性が高いです。
100発100中とはいきませんが、プッシュ型で100発中1発当たればよかったのが、プル型で100発中5発当たれば確率は5倍です。
同じ100人に接客するなら、確度が高い100人と話をしたほうが商談になりやすいのは明らかです。

それではどうやって確度の高い消費者と接触できるようになるのか、カテゴリーに沿って説明していきたいと思います。

デジタルマーケティングの4つのカテゴリー

1.集客施策:Web集客

Web集客は、消費者が自分でインターネットを調べた時に自社の情報、もっと言うと自社のホームページへ辿り着いてくれる確率を高くするためのものです。
プル型の情報提供においては、インターネットを検索した時になるべく早く・多く目に触れる機会を作ることが重要になります。
例えば「スーパーマーケット」と検索した時に、1番目に表示されるスーパーと5番目に表示されるスーパーではホームページに辿り着いてくれる確率が違います。
また多くの人が閲覧するWebサイトや、世間的に信頼のある企業・人物のWebページなどに紹介されたり、リンクを設置してもらえればそこからホームページに来てくれる人も増えます。

SEO


前者の検索順位を上げるために行う代表的な施策がSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)対策Web広告(リスティング)です。

SEOは検索サイトに検索してもらいやすいようにWebページを構築するテクニックのことです。先ほどの例だと「スーパーマーケット」での検索表示順を上げるための方法です。
SEOは様々な手法が紹介されていますが、検索順位を決定するルール(アルゴリズム)が公開されていないだけでなく、定期的にルールが変更される(アップデート)ため、「これさえやったら絶対に大丈夫」という方法はありません。
そんな不安定なものに頼りきってしまうと危険であるという意味で、商用サイトにおいてはSEOに傾斜しすぎてはいけないと戒められることが多いです。
ただし検索サイトからの流入は貴重な集客源であると同時に、ツールを利用することでどんな言葉(検索キーワード)で検索した人がホームページを訪れているかを把握することができます。
これは消費者が何に興味があるのかを知る上でも非常に貴重な情報です。
またSEOはテクニックを習得すれば、外注せずとも自力で検索順位を押し上げることも不可能ではありません。
広告宣伝にコストがかけられない個人ブログが必死にSEOを追いかけるのもここに理由があります。
「商用サイトにおいてはSEOに傾斜しすぎてはいけない」と言っているのは主にWebコンサルや制作会社で、自分たちの仕事が無くなるからもっと別の方法にお金をかけましょうと誘っている、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、傾斜しすぎてもいけないけど決して疎かにしてもいけないものと考えるべきです。

リスティング

そんなテクニックを要したり不定期に変動してしまうものではなく、お金で検索順位が買えないのか、というのに限りなく近いのがWeb広告(リスティング)です。
検索サイトで検索すると、上位に「広告」という文字の入った結果が上位に表示されることがありますよね。あれがリスティングです。
リスティングは「この検索キーワードで検索された時に広告を表示する権利を買う」ことです。
買い方は入札なので値段設定は自分で行います。広告がクリックされると設定された金額を支払うことになります(先に入金してクリック毎に残高が引かれる)。
競合が多いキーワードは入札合戦で値段が吊り上がることもあります。
時期や時間帯で単価を調整する、例えばキャンペーンやセールの時だけ上位表示されるように単価を高めに設定したりということもできます。
お金で買うと言いながら、リスティングもキーワード設定や入札金額の調整などテクニックが必要になります。

代理店がリスティングを代行する場合もありますが、多くの場合期待されるほどの効果が出ません。
リスティングも結局Web検索の結果に表示されるので、SEOと同様に何の検索キーワードに消費者が興味を持つのか分析しながら進める必要があります。
後述のWebサイトのアクセス分析などから時間帯、曜日など集客が見込める時間帯とキーワードを組み合わせて入札金額を調整し続けることも必要です。
代理店はテクニックや分析力があったとしても御社のホームページだけに張り付いて作業してはくれません。
月100万円で発注したとしても、広告入札費用に90万円使えば代理店には10万円しか残りません。
そこから利益を差し引いた額が実際に作業に充てられる費用と考えると、月5~6万円でどれだけの作業がしてもらえるでしょうか。
自力でやるかどうかは別としても、発注側もある程度のテクニックや仕組みを理解しておかないと、貴重な広告宣伝費を溶かしてしまうだけになりかねません。

ちなみにリスティング以外のWeb広告としてディスプレイ広告があります。Webサイトを見た時に広告画像が表示されているアレです。
ディスプレイ広告は表示されるサイトの情報や閲覧者の行動(過去に見たサイト)等から関連性が高いキーワードやカテゴリーである場合に表示されます。
こちらも金額は入札で決めて広告がクリックされると設定した金額を支払う仕組みです。
リスティングとの大きな違いは、リスティングは検索結果画面に表示されること、ディスプレイ広告はWebサイト内に表示されることです。
直接的に検索キーワードにヒットしなくても閲覧しているページや閲覧者の興味で表示されること、広告が設置しているサイトが多数あること等、どちらかといえばプッシュ型のマーケティングに近い性質があります。
また文字ではなく視覚的に情報を届けることができるため、商品の色・形・デザインなどを伝えるのに適しています。

リファラー

他の企業や協賛事業などのホームページ、キュレーションサイト(いわゆるまとめサイト)や個人サイトなどに設置されたリンクをからホームページへ遷移してくる集客をリファラーと呼びます。
遷移元のWebページのURLのことをHTTPリファラーと呼ぶのですが、他のWebページからの遷移を指す言葉として定着しています。
後述するポータルサイトからの遷移もリファラーですが、ポータルサイトの場合直接集客に繋げることができる特性があるため扱いを分けています。

リファラーが多いと流入が増えるだけでなく、有益なWebページなのでたくさん引用されている判断されてSEOスコアにも影響すると言われています。
ただし自分で他サイトにリンクを貼っていっても、関連性が薄かったり、怪しいと判断されると逆に評価を落とす可能性もあるので注意が必要です。

2.集客施策:来客・問い合わせ

Web集客として利用することも可能だけど、ホームページに誘導せずに直接来客や問い合わせを行うことができるものをこちら側にしました。

SNS

もはやわざわざ説明するまでもないかもしれませんが、SNSはインターネットにおいて非常に多くのユーザーが情報の共有・発信・閲覧を行っている場です。
企業の公式アカウントやSNS広告などもあり、マーケティングの重要な場と位置づけられています。

SNSはプル型・プッシュ型のどちらの面も併せ持ったツールです。最大の特徴はなんといっても「拡散」、所謂「バズマーケティング」と言われるものです。
相互に関係性のあるユーザーが連なっていて、誰かの発言を他のユーザーが引用し、それをさらに他のユーザーが閲覧・引用と繰り返していくことで、非常に多くの人の目に触れることになります。

SNSによって匿名/実名の差はありますが、アカウントという個人を特定する情報があるため、ユーザーの趣向や関係性などが見える状態になっているのも特徴と言えます。
つまり「不特定の誰か」ではなく「名前のある個人」をターゲットにすることができるのです。

またハッシュタグにより関連する投稿や情報をたどることができるため、口コミ情報の検索として活用する人もいます。

SNSは常に大量の情報が流れているため継続的な発信をしていかないと情報が流されていく一方、ネガティブな情報も拡散されていつまでも残ってしまうという危険もあります。
所謂「炎上」を引き起こすことでマイナスイメージになることもありますが、結果的に認知が増えることになるため「炎上マーケティング」なんてことも行われています。
ネガティブでもポジティブでもとにかく集客できればいいというようなやり方のなので、信頼を基本とするビジネスを展開する企業において炎上はマイナスと捉えるべきでしょう。

知名度の低い企業、特にBtoBがメインの企業においては、自力で多くのフォロワーを増やしたり投稿をバズらせるのは容易ではありません。
ブランドイメージもあるのでウケそうなことばかり言っておけばいいというものでもありませんし、逆に杓子定規な情報発信だけでは誰も反応してくれません。
そこで既に多数のフォロワーを抱えている等SNS上で影響力のあるユーザー=インフルエンサーに情報発信を依頼する「インフルエンスマーケティング」という方法もあります。
インフルエンサーは芸能人・著名人に限らず、一般の方もいますが、既にビジネスとして成立しており、情報を発信してもらうためには広告料=報酬を必要とします。
ただしインフルエンサーの炎上に巻き込まれたり、広告・宣伝であることを明示しないとステルスマーケティングだと言われてこれもまた炎上の基になります。

Webマーケティングのトレンドでありやり方によっては大きな効果が期待できる一方、明確な手法が確立しておらず炎上リスクもありSNSのサービス毎にユーザー層やローカルルールも違うため、使いこなすには相応のリテラシーを要するツールとも言えます。

ポータルサイト

ホテルを予約する、忘年会の店を探して予約する、中古自動車を探す、アパートを探す。こういう時にみなさんはどういう行動を取るでしょうか。

旅行雑誌を調べる、馴染みの店に電話をする、中古車屋に行く、不動産屋を巡る。
そういう人もいるとは思いますが、飲食店の総合予約サイトやホテル比較予約サイトなどで検索する人が多いのではないでしょうか。

全体図の画像にはちょっとモザイクを入れてはいますが、「業者をいっぱい集めた情報サイトを作って、出稿料や成約時料金の何%かを運営会社がもらう」ようなサイトをポータルサイトと言います。
上記以外にも転職サイト、美容室予約サイトなんかもあります。
引っ越しや車や家の売却見積もり一括比較サービスなども若干形は違いますが目的は同じです。

こうしたサイトはそもそも目当ての商品があってサイトを訪問している=確度が高いユーザーが集まっていること、SEOやリスティングと違い検索表示順や取り扱われ方が明確(=出稿料で決まる)であること、自社サイトへの誘導も直接来店予約や問い合わせもできることなどから企業のWeb集客戦略にとって非常に価値の高いサービスです。

ただしBtoB向けの知名度の高いサービスが少ないこと、全国的に知名度の高いサイトは4大メディアに匹敵するかそれ以上に費用がかかる場合がある等のデメリットもあります。
あまり知名度が高くないサイトや地域に特化したサイトだと比較的費用は抑えられますが、効果は限定的になります。
一方でそのサイト内でのトップになれば露出は増えますし、地域を限定した事業したしていない地方企業には地域特化サイトの方が都合が良いこともあります。
取り扱っている商材によって費用対効果を見極めた出稿の検討が必要です。

メディア広告・チラシ


ここまでデジタルの話ばかりでしたが、既存のマスマーケティングの効果を否定するわけではありません。
テレビや新聞などの媒体の持つ権威性はまだ衰えていません。

「テレビでCMを見たことのある会社・商品」はCMを出すくらいに広告宣伝費がある=経営が安定している=よく商品が売れている=人気があるという印象を持たせることができます。
また情報に触れる人の数も多いので知名度があり、「テレビで紹介されている」=「テレビで紹介するに値するものである」という安心感に繋がるということもあります。

ただこれができるのはそれだけの広告宣伝費をかけられる企業です。たとえ地方でも個人事業主がバンバンテレビCMを流すのは難しいでしょう。
前述の集客施策の中でもSEOやSNSはスキルやテクニックやリテラシーが必要ではありますが自力でできるマーケティングです。
つまり費用を抑えながら効果的なマーケティングを行うことができるのです。
また冒頭に記載したように顧客行動は変化しており、デジタルの入口を全く持たないことは、入口を持っている企業と比較するとそれだけ機会を損失していることになります。
これはBtoCだけではなくBtoBでも言えることです。

既存メディアの持つ権威性を利用しつつ、Web施策に繋げる代表的な手法が「続きはWebで」です。
例えば新聞広告の小さな枠やチラシや名刺にホームページURLのQRコードを載せることで、今まで広告を見て終わりだった人の何%かがホームページまで来てもらえる=確度が高い人を次のフェーズに送客することができます。
プッシュとプルの両方に繋がりのある施策にすることが可能になるのです。

既存メディアをうまく利用しながらデジタルに繋げることもデジタルマーケティングには必要なテクニックなのです。

3.Webサイト施策

自社の情報発信の本拠地となるホームページは、そこから実際の来店・問い合わせを促したり、ユーザー情報を獲得して次のマーケティングにつなげたり、既存顧客からの問い合わせ窓口になったり様々な役割を持たせることができます。

企業情報、商品情報、企業からのアナウンスなど、いわゆる「自社ホームページ」と呼ばれるものを「オウンドメディア」と呼びます。
オウンドメディア以外にキャンペーンやイベント用の特設サイトを設けて個別の出口に送客するための単独サイトである「ランディングページ(略称:LP)」、商品の使い方やお役立ち情報などを紹介してより広い層からのユーザー獲得を目指す「コンテンツサイト」などがあります。
コンテンツサイトを利用して行うマーケティングを「コンテンツマーケティング」と呼びます。コンテンツマーケティングの例としてブログがあります。
「今日は〇〇に行ってきました」のような自身の近況報告ではなく、「〇〇と■■を比較してみよう」「〇〇を使って生活を便利にする小技5選」のような情報発信ブログです。

自社サイトの強みは、とにかく自由度です。どんなレイアウトにするか、何の情報を発信するかも自由ですし、ユーザーの行動をトレースもできます。

もちろんSNSやポータルサイト等を活用して自社ホームページに傾斜しない戦略も取れますが、メディア広告同様に自社ホームページも権威性に繋がります。自力でホームページも作れない会社=情報を公開する気の無い会社、ホームページの更新やメンテナンスがされていない=いい加減な会社という印象を与えかねず、権威が下がる可能性があります。

Webサイト運営に必要な技術は、HTMLやCSSが触れるとかPHPが書けるということではなく、それぞれのサイトの位置付けを明確にして、有効と思われる施策を試行、効果を測定・分析しながら目的とする効果を発生させるためのWebマーケティング知識・分析スキル・マネジメント力だと考えます。たとえページ作成を制作会社に依頼したとしても、この部分は自社のスキルとして保持しておく必要があるでしょう。

アクセス解析:匿名での顧客行動分析

Webサイトから得られる情報は、何人の人が閲覧しているか、何のページを閲覧しているかだけではありません。どのような経路でホームページに辿り着いたのか、どんなデバイスから閲覧しているのか、最初に流入してきたのがどのページで閲覧を辞めたのはどのページか、検索サイトから遷移してきた場合にどのようなキーワードで検索してきたのか、特定のページをユーザーは平均して何秒くらい見ているのかなどの情報を取得できます。ユーザーの性別や年齢層まである程度判定できたりもします。

この時点ではまだ閲覧しているユーザーは匿名ですが、匿名だとしても自社が発信している情報の何に興味を持たれていて、どこから集客されてきているかが、明確な数値として得られるというのは非常に有益です。
店舗に来客したお客様が何人いて年齢や性別の構成がどうなっているか、なにをきっかけに来店してきて何の商品に興味があるのか、全員と接客したとしても全てを把握するのはほぼ不可能ですが、Webサイトにはそれができるのです。

個人情報との紐付け:実名での顧客行動分析

では閲覧しに来たお客様が誰なのか、これを紐づける方法としてメンバー登録や会員登録があります。
ユーザー情報を自ら登録してもらえば、個々のユーザーがいつホームページを閲覧して、何のページをどのくらいの時間見ているかまで把握することができます。
それに基づいて個人の興味のある情報をさらに提供していくことをナーチャリングと呼びます。
ナーチャリングの度合いによってユーザーをスコアリングして、スコアが高い=確度が高い消費者と営業が優先的に接触できるようにするのがデジタルマーケティングの根幹です。

ユーザー情報を登録してもらうために特典を付けたり、チャットbotと呼ばれる要望を承る機能を実装したり、様々な方法があります。
商材や案件ごとにユーザー情報獲得用のランディングページを作成し、そのページのリスティング広告を出すことでユーザー獲得を増やす方法もあります。

つまりホームページはユーザー情報を獲得するための場所であり、同時に登録されたユーザー情報に基づいてユーザーの動きを把握するための場所なのです。

ここで集める情報は個人情報に該当する確率が非常に高いです。そのためプライバシーポリシーや個人情報利用の同意などを求める必要があります。個人情報保護法については別記事で細かく紹介しておりますので、併せてご覧ください。

さらにメンバー登録時にメールアドレスが獲得できれば、今度はこちらからユーザーの興味のありそうな情報を発信することもできます。それが次の施策であるMAに繋がります。

4.MA施策


一昔前は「メールマガジン」(今もあるが)でメールを送ってユーザーの情報接触を増やすところまでだったメールマーケティングが発展進化したものがMA(MarketingAutomation)です。

Webサイト施策でも述べたように、個人を特定する符号としてメールアドレスは有効です。
MAを使って送ったメールにオウンドメディアやランディングページのリンクを付けて、「続きはWebで」とします。
MAはメールを開封した人、リンクをクリックした人、クリックして遷移した先からどのページに遷移したかまで把握できます。
しかしMAの本当の機能はこれだけではありません。

例えば販売している商材でお客様が反応しそうなポイントが価格、性能、デザインの3つあったとします。
事前に設定しておくことで、MAに新たにメールアドレスが登録されたら自動的に登録していた3つのポイントとそれに関連するURLを載せたメールが送信されます。
受信したユーザーがデザインのURLをクリックしたとしたら、「デザインをクリックした時用」のシナリオに沿って、デザインの情報に特化したメールを送ります。
このように「ユーザーがこう反応したらこっちのメール、反応が無かったらこっちのメール」のようなシナリオを事前に作成しておくことで、メールアドレスを登録さえすれば後は自動的に(ここがAutomation)ユーザーの興味がありそうな情報に特化したメールマーケティングを行うことができるように作られているのがMAなのです。

誤解があってはいけないので補足しておくと、「こう反応したらこっちのメール」のようなシナリオを作成するのはあくまでMAを運用する企業であり、シナリオ作成までは自動で行ってはくれません。
どのようなメールなら開封してもらえるか、どのような内容ならクリックまで辿り着くのか、どのような属性でシナリオを分岐させるのか、シナリオを分岐させるための条件は何にするのか、そもそも送信頻度はどれくらいが適正なのかなど試行錯誤しながら探っていかなければいけません。

チャットツールなどが浸透してあまりメールを見ない人が増えてきていることもあり、BtoCでのMAは一筋縄ではいかない場合もあります。
そもそもメールを見ない人にマーケティングを行っても効果は期待できないでしょう。
MAが効果を発揮しやすいのは日常的にメールを利用する法人が相手のBtoBビジネスと言われています。

また情報の発信という意味ではプッシュ型のマーケティングになり、マスマーケティングに近い特性があります。
つまり配信する母数となるメールアドレスをかなりの数確保しなければ効果が期待できないのです。
セールスメールが嫌いな人もいるだろうし、登録しても送られてくるメールが嫌で解約する人もいます。
そうした数も一定数いる前提で、100人から1、2人を釣り上げるのがMAと考えなければいけません。

そこまでして何故このような施策を行うのかというと、コストパフォーマンスが良いからです。
1人の営業が1時間に1,000人のお客様と接触するのは難しいですが、メールであれば1人の担当者が一瞬で1,000人のお客様に情報を配信することができますし、そこからお客様の興味関心がどれくらいかスコアリングして確度の高いお客様だけを抽出してから営業を掛けることができるのです。
また営業接触は取れているけどその後動きが無い見込み客に情報を発信して、反応を見て話を進めるか見込みが無いかジャッジすることもできます。
営業の手が回らない見込み客へのフォローという使い方も可能です。
外回りで10社周って全部空振りを繰り返すより、「このお客さん、最近○○のメールによく反応しているし、××のページが気になってるみたいだから、△△の資料を準備して訪問してみよう」にしていくことを目指のがMAなのです。

企業のデジタルマーケティングのポイント

人任せにしない


ここまで説明した4つのカテゴリーの全てを行うにはかなりのノウハウと労力がかかります。
「これなら今まで通りのマーケやってたほうが楽」と思われるかもしれません。

もちろん自社のリソースには限りがありますから、全部自力でやるのは難しいでしょう。
だからといって全部代理店や制作会社に丸投げするのは考えものです。

行おうとしているのは自社のマーケティングです。
どのような商品を、どのようなブランディングで、どのようなお客様に届けたいかを考えることは自社の責任です。
そしてそれをどのような手段でお客様に発信していくかを決めるのも自社です。

行おうとしている手段の中身や効果、測定方法などを知らずに他社に任せてしまったら、結果を評価することもできません。
自分でWebページやコンテンツを全部作成するのではなくても、どのような効果を狙って何を作るのか、その効果はどのように測定するのかを決めた上で外注することができるくらいまでは自力でできるようにならなくてはいけません。

一つに偏らない

前述のSEOの項でも「SEOに傾斜しすぎない」と述べましたが、これはSEOだけではありません。
どのカテゴリーだって外部要因により効果を失うリスクがあります。
事業そのものもそうですが、何か一つの収入源に依存すると、それを失うと全てを失いかねません。

入口は多いに越したことは無いということも含めて、できるだけ複数の施策に分散することをお勧めします。

関連性と整合性

様々な施策に手を出すのはいいのですが、その施策の目的は何でしょうか。
他の施策と重複していたり、逆に全く違うことを目指したりしていませんか。

最初の図に示したように全ての施策の関連性を整理して、個々が何を目指しているかを見失わないことも重要です。
また施策毎に言っていることが違ったり(キャンペーン期間や特典等)、辻褄が合わない情報を発信してしまわないように、全体の整合性を保つことも気を付けるべきポイントになります。

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パーソナルスコアリングの賛否


ここまで読んで「自分が見ているWebサイトやメールマガジンも誰かにスコアリングされているかと思うと気持ち悪い」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私も正直そう思います。

こうしたスコアリングを最大限に活用しているのがGAFAです。
一応Appleはパーソナルスコアリングには否定的なスタンスですが、GoogleとFacebookは散々槍玉に挙げられ、米議会に呼び出されたりEUから多大な賠償金を請求されたりしています。
YouTubeやAmazonはどうやって「あなたへのおすすめ」を表示しているのでしょうか。
Facebookはどうやって「友達ではないですか?」がわかるのでしょうか。
GoogleはChromeブラウザやGoogleアカウント情報から、Amazonは購入履歴から、Facebookは本人情報からあなたのことをスコアリングしているのです。

GDPR(EU一般データ保護規則)もこうしたパーソナルスコアリングがユーザーの許可なく行われることを禁じるために制定されたものです。
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こうした規制が厳しくなると、今度はWebサイト側が「情報収集のためcookieを利用しますがよろしいですか?」というポップアップを出して「ユーザーの許可を取っている」と対応しています。
しかし果たしてどれだけの人がこのポップアップの意味がわかっているでしょうか。

デジタルマーケティングは人手不足や営業活動の効率化のために急速に広がっている分野ですが、人の行動を盗み見るような真似をしてまでモノを売りつけるということに後ろめたさを感じる人もいるかもしれません。
それでも時代は否応なしに進み、それに伴い価値観も変化していきます。
そもそもテレアポやDMだって電話や郵便が発達するまで存在しなかった手法です。
マスメディアが発信している情報だってどれだけバイアスがかかっているか知る由もありません。
個人毎にカスタマイズしたパーソナルスコアリングも5年後には何の違和感も無くなっているかもしれないのです。

それでも商売の基本は信頼だと思います。
「みんなやっているから」「乗り遅れたら負けてしまうから」と事を急く前に、「これはお客様にとって本当に有益な方法なのか」を今一度考えてみましょう。

お客様が知りたいと思っている情報をタイムリーにお届けすることができることはお客様にとっても有益です。
ただ何故そのタイミングがわかったのかお客様がわからないままでは不審がられるかもしれません。
個人情報取得時の同意を取ってさえいれば何をしてもいいというのではなく、きちんと納得してもらうこと、お互いに信頼の上で情報の授受が行われることが必要なのではないでしょうか。
「とりあえずポップアップ出しときました。クリックしたんだからOKですよね?」は信頼関係と呼べるのでしょうか。

ここまで記載してきたマーケティングの仕組み全てをネタばらしする必要はないかもしれませんが、せめて後ろめたくないところに着地できないものかと考えてしまう今日この頃です。

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