企業はDXで何を目指すのか | DXとは何か

企業はDXで何を目指すのか | DXとは何か




対象とする読者
・「我が社でもDXに取り組まなければ!」と思っているが何をすればいいかわからない経営層
・「我が社でもDXに取り組まなければ!」と言われるけど何をすればいいかわからない担当者
・DXを胡散臭いものと思っている通りすがりの人
話の要点
・全ての会社がディスラプターにはなれない。現実的には既存事業・既存業務をデジタル技術を活用して拡大したり効率化したりしていくことを目指す。
・実際に日本企業が取り組んでいるDXのテーマは対外的な業務に対する「攻めのDX」、社内的な業務に対する「守りのDX」に分類される。
・DXを実践していくためには3つの段階が必要とされる。
1.デジタル化、2.デジタライゼーション、3.DX
・「どうやったら自社のプロセスの中にAIやIoTを組み込むか」という方法論に陥らず、「ゴールに到達するためにDXの効果を最大化するプロセスに変更していく」という観点が必要。

デジタルトランスフォーメーション(以下DX)について、4つのセクションに分けてDXについて説明している「DXとは何か」。

1.DXの概要
2.企業が取り組むDX施策
3.DXを実現するデジタル技術の紹介
4.失敗するDXの取り組み方と現実的な提言

今回は2つめのテーマを取り上げます。

↓↓「1.DXの概要」の記事はこちら↓↓

1のテーマの話でUberを例示しました。それでは「我が社もUberのように革新的ビジネスモデルを生み出し、市場を席巻するディスラプターになる」ことを目指せばいいかというと、多分無理でしょう

御社には無理という意味ではありません。「アメリカにはスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグのような天才的イノベーターが生まれるのに、日本には皆無だ」と言うのに対して「ジョブズもザッカーバーグも、アメリカにも1人しかいない」というのと同じで、「アメリカにもUberは1社しかない」という意味です。

革新的ビジネスを100社中100社が生み出せるのならば良いのですが、恐らくそれは無理でしょう。現実的に企業が取り組むべきは、既存事業・既存業務をデジタル技術を活用して拡大したり効率化したりしていくことなのです。

「そんな小さなことでDXと言えるのか」と思われるかもしれませんが、「そんな小さなこと」もできない会社はディスラプターになどなれないでしょう。

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企業はDXで何を目指すのか

攻めのDX、守りのDX


NTTデータ経営研究所『「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」結果速報~日本企業のDXへの取り組み実態、成功企業の特徴について~』では企業が取り組むDXのテーマを「攻め」と「守り」でそれぞれ3種類ずつに分類しています。

・攻めのDX:顧客を中心としたステークホルダーやエコシステムを巻き込むテーマ
1.既存の商品やサービスの高度化や提供価値向上
2.顧客接点の抜本的改革
3.ビジネスモデルの抜本的改革
・守りのDX:自社でコントロールできる改革的なテーマ
1.業務処理の効率化や省力化
2.業務プロセスの抜本的改革や再設計
3.経営データの可視化によるスピード経営や的確な意思決定

「攻めのDX」は対外的な業務、「守りのDX」は内部的な業務と考えて良いと思います。
ちなみにNTTデータ経営研究所の上記報告だと、日本企業が取り組んでいるDXは「守りのDX」が多いとのことです。

「守りのDX」の代表例は基幹システムのクラウドERPへの置き換えではないかと思います。テーマ1で紹介した「2025年の壁」も取り上げていたのは基幹システムでした。

「攻めのDX」は様々な方法が存在します。提供するサービス自体をデジタル技術で構築することもありますし、マーケティングや営業の手段・手順などをデジタルベースにすることで数値の統計、分析を容易にすることもDXと呼べます。「ビジネスモデルの抜本的改革」になると、デジタルを活用した新規事業だったり既存ビジネスを全く違う姿に作り変えたりというUber的な話も含まれてきます。

DX実践のために必要な段階

どのようなテーマを選択したとしても、具体的にDXを実践するためには3つの段階があると言われています。

【段階1:デジタル化】

まずアナログだったものをデジタルデータに切り替えて、AIが認識できる形式にしたり、センサーが感知してIoTで送れる形式にする段階です。

具体的には紙資料を電子ドキュメントやシステム入力へ、視覚や聴覚などの感覚を画像データや音声データへ、経験や勘を言語化された手順データにしていきます。テキストベースの部分については「デジタル化」以前の「システム化」とも言えますが、デジタル技術を活用する「AI-OCR」という方法も存在します。

【段階2:デジタライゼーション】

次にデジタル化したフォーマットを利用する手順に切り替える段階です。
仕組みがあっても使い方がバラバラだったり、旧来の方法と混在したりすると、最終的にデジタルへの切換えを行うことができません。

具体的には紙資料の廃止、写真・カメラ映像や電話通話音声のデータ保存形式や領域の確保、日報・週報等のシステム入力・報告観点(項目、ステータス等)の統一などを進めていきます。

【段階3:DX】

デジタライゼーションで蓄積されたデータを分析・活用して、新たなビジネスモデルや業務プロセスを構築していきます。具体的には電子文書管理によるドキュメント検索システム、画像・音声データを学習したAIによる認証サービス、蓄積されたビッグデータを様々な切り口で活用する経営戦略などが考えられます。

計画は段階の逆から考える


実行は段階1~段階3に向かって進めますが、計画は段階3~段階1へ考える必要があります。目指したいものは何か、どのようなビジネスインパクトを生み出したいか、まずはゴールを設定します。ただし「DXとは何ができるようになるものなのか」の基本的な知見をベースにしないと、ただの夢物語になる可能性があるので注意が必要です。
デジタル技術もツールでしかありません。そのツールの「使い方」をある程度理解した上で、「使い道」を考えるのが現実的に企業がDXを推進する方法です。

段階3を実現するためにもう一つ必要な準備があります。それは組織や意思決定方法の変更です。デジタル技術で得られる情報はスピード感も量もこれまでとは比較になりません。それを受領する側に適切に処理・判断する能力が求められます。多くの企業がPOC(実証実験)まで行くけどその先に行かないのは、「得られた結果を誰が扱えるのか」という受け手の不在も理由ではないかと思います。受け手は技術者ではなく、意思決定者でなくてはいけませんが、意思決定者が従来と同じ観点や決定方法を続ける限りDXの成果は有効活用されることはないでしょう

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方法論に陥らない

最初のテーマでも触れたように、DXは概念です。DXは「実施」するものではなく「実現」するものです。AIやIoTを導入することではなく、新たなビジネスプロセスを構築することです。

日本企業の多くは「業務改革」のような掛け声が好きです。その割に改善活動はなかなか効果を上げず長続きしません。理由はいくつかあると思います。

・ボトムアップでの改善は個別最適化されて横展開されにくく効果が限定的。
・方法論やシステムを万能のものと思い込み、事例をそのまま適用したりシステムを導入さえすれば自動的に業務は効率化されるものと勘違いしている。
・方法論やシステムで効率化されるはずのものを自社のプロセスを維持するために改変し、本来得られるはずの効果を殺してしまう(自社のプロセスを変えようとはしない)。

DXの実現のために最も重要なフェーズはデジタライゼーションであり、デジタル技術を活用するためのプロセスへの転換です。現場の手順、意思決定のプロセスなど、ビジネス全般をDXの効果を最大化するためのプロセスにモデルチェンジする必要があります。その意味ではDXはボトムアップではなくトップダウンの業務改革を必要とします。
またDXは「既存業務を便利にしてくれるもの」というより「業務のやりかたそのものを変革するもの」であり、その中で既存プロセスを温存しようとすると現状以上の非効率を産んでしまいます。

どうやったら自社のプロセスの中にAIやIoTを組み込むか」という方法論に陥らず、「目標とするゴールに到達するためにDXの効果を最大化するプロセスに変更していく」という観点が必要と言えるでしょう。

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