何故企業でデジタルマーケティングが必要か | 情シスが語るデジタルマーケティング

何故企業でデジタルマーケティングが必要か | 情シスが語るデジタルマーケティング





対象とする読者

・何故企業でデジタルマーケティングが必要か知りたい人
・デジタルマーケティングとは何か知りたい人
話の要点
・マーケティング=営業プッシュが無くてもお客様が自然に買いたくなる状態を作る活動。
・非デジタルと比較したデジタルマーケティングのメリット・デメリットは以下の通り。

【メリット】
①コスト・リソースが非デジタルと比較して圧縮できる
②効果検証のための数値が取りやすい
【デメリット】
①Webの技術や仕組み、手法や慣習などのスキルが必要
②Webで遡及しにくい商材やターゲットには効果が薄い

・はじめやすいから飛びついて、効果が出なくて辞めていく例も。
・デジタルで営業が確度の高い見込み客を追客できるようにしないと2025年(以下略)
・マーケに限らずデジタルを扱える人材の育成・確保が必要。

無謀にもデジタルマーケティングについて記事にすることにしました。
ブログもSNSもそんなに目立って活動していない輩がデジタルマーケティングの何を語ろうというのか…と思われるかもしれませんが、今回お話しするのは「アフィリエイトブログで稼ごう!」とか「SNSでインフルエンサーになろう!」とかいう話ではありません。

副題にある「情シスが語るデジタルマーケティング」が示す通り、企業向けのデジタルマーケティングのお話になります。それもWebコンサルのようなキラキラした話ではなく、実施していく企業側のお話です。経営者、マーケティング担当、情シス、企業のデジタルマーケティングに悩んでいる人は、是非一緒に悩みましょう!?

私自身情シスという立場で自社のデジタルマーケティングの一部を担っているのですが、明確な正解もないし、とにかく関係部署と試行錯誤しながらやっています。その中で学んだことを自分の中で整理するために、ここでアウトプットしてみようと思います。何かのご参考になれば幸いです。

スポンサーリンク

デジタルマーケティングとは何か

そもそもマーケティングとは

著書『マネジメント』で有名なピーター・ドラッカー曰く、「マーケティングの理想は、販売を不要にするものである。」だそうです。つまり、営業がお客様に「買ってください!」とプッシュしなくても、お客様が自然にその商品を買いたくなる状態にすることがマーケティングの目的と言えます。

そんな状態にするためのマーケティングの活動は大きく分けて4つあります。

1.市場調査:どんなニーズがあるのか調べる
2.商品開発:ニーズに合った商品を作る
3.広告宣伝:商品を知ってもらう
4.分析検証:マーケティングの効果を検証する

お客様が自然に買いたくなる=お客様が欲しい商品である必要があります。まずは顧客ニーズを把握するために市場調査を行います。お客様の「欲しい」には、既に具体的に欲しいと思っている顕在化したニーズと、具体化はしていないけど実は欲している潜在的なニーズがあります。顕在化したニーズを追いかけると他社との競合が起こりやすく、市場に振り回されてしまいがちになります。

まだ誰も商品としてお客様に届けられていない潜在的なニーズを掘り起こし、競合の無い新商品を送り出すことができれば独り勝ちすることもできます。それを目指して日々新たな商品開発が行われているのです。

商品を作ったところで、誰も知らなければ買ってくれません。商品の名前・特徴・セールスポイントをアピールして、「何それ買いたい」と思ってもらうために広告宣伝を行います。

そしてこれらの活動を総括して、どれくらいの成果が得られたかを検証するのです。

デジタルマーケティングとデジタルじゃないマーケティング

今回の記事ではマーケティングの4つの活動の中の広告宣伝の部分を中心に話していきます。従来からあるマーケティング手法を「非デジタル」とすると、広告宣伝のデジタル/非デジタルの方法は以下のようなものがあります。

デジタル…Webサイト、Web広告(リスティング等)、メール、SNS等
非デジタル…4大広告メディア、チラシ、DM、看板、POP

4大広告メディアとはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4つを指します。DMはダイレクトメール、POPとはドラッグストアやスーパーで商品名や特徴等が紹介された張り紙をイメージしてください。

デジタルと非デジタルを比較してみると、以下のようなメリット・デメリットがあります。

デジタルのメリット

デジタルのメリットは、非デジタルのマーケティング手法と比較してコスト・リソースが圧縮できる点です。

例えば30秒のテレビCMを1回放送するだけで〇〇万円単位の費用がかかります。CM用の映像作成にも当然費用がかかります。CMを見ている人は多いかもしれませんが、たった1回30秒ではなかなか情報は伝わらないでしょう。これが同じ費用で作成したWebサイトだと、30秒どころかサイトを閉じるまでずっと閲覧することができます。Webサイトの維持管理には多少の費用がかかるとしても、CM何本分でペイできるかを考えれば非常に安価と言えます。

またチラシを作って店舗の近隣にポスティング(チラシをポストに入れる)を行うと、チラシの作成に係るデザイン費用、印刷費用だけでなく、実際にポスティングを行う社員の時間やポスティング作業を依頼する外注の費用もかかります。これがSNSへの投稿だとほんの数時間でできます。SNS広告に載せなければ投稿自体は基本無料です。投稿が拡散されることが前提ですが掛ける時間数には雲泥の差があります。

もう一つのメリットとして、効果検証のための数値が取りやすいことが挙げられます。

冒頭にも記載した通り、マーケティングの大きな活動として分析検証があります。テレビには視聴率という数値があるとはいえ、CM1回で受注が何件取れたか厳密に数値化することは難しいです。しかし例えばWeb広告が何回クリックされ、何人が自社のWebサイトを閲覧して、何件契約や問合せが取れたかは正確に取得することは可能なのです。

投資効果が明確に提示できる広告宣伝手法は、マーケティング担当者としても明確な成果を提示できるし、経営層としても投資判断がしやくなります。

デジタルのデメリット

もちろんデジタルにもデメリットはあります。

マーケティングそのものも専門性の高い、スキルを必要とする領域ですが、デジタルとなるとそこにさらにWebの技術や仕組みや、Web独自の手法や慣習などのスキルが必要になります。ある程度技術や仕組みができないと、情報がお客様に届かず広告宣伝としての役割を果たせません。費用をかけて外注を使うこともできますが、そもそも何を依頼すればいいかわからなければ外注することも難しいです。自力でWebサイト構築をしないにしても、載せるコンテンツの内容は自分たちで考えなければいけません。何をゴールにして、どのような手段でゴールへ向かうのか、その成果を分析・判断する指標は何か、会社として意図を持った戦略が必要になります。その戦略は自社の事業戦略であり、他人の手に任せてよいものではありません。

また商材やターゲットによってはWebでの効果を出すのが難しい場合もあります。
Web上で完結するEC(Electronic Commerce:電子商取引)であればマーケティングリソースを全てWebに振っても良さそうなものですが、楽天もAmazonもメルカリもテレビCMなどの非デジタルでのマーケティングも行っています。会社規模が大きいからできるのではなく、そもそもターゲットにしている客層が異なると考えるべきでしょう。

身近な例だと、全国商圏では無い地方企業だと非デジタルの力が強くなります。理由の一つはWebの長所である「世界中どこからでもアクセスできる」のメリットがあまりないためです。認知してもらいたいのが〇〇県の人、××市の人に限定すると、ローカルテレビ局のCMや地方新聞の折り込み、チラシのポスティングのほうがSNSのつぶやきより確実に届きやすいです。Web検索で「(検索キーワード) 〇〇県」と検索した際に表示することもできますが、ローカル局のCMや地方紙で地域を限定した折り込みはキー局や全国紙と比較すればコストが安く効果も一定のものが期待できるため、一概に「非デジタルは高い」とは言えません。

デジタルだけ/非デジタルだけ、ではなくどちらも大事

メリットもデメリットもゼロサムで考えるべきではありません。

費用は高くてもより多くの人の認知が得られるであれば非デジタルも活用すればいい。スキルが必要ならスキルのある人材を確保するなり育成すればいい。非デジタルが強いターゲットだけどデジタルも合わせてやればより効果がでるかもしれない。非デジタルで認知を高める→デジタルに取り込むという組み合わせもあり、先述の楽天やAmazon、メルカリ等がまさにそれです。

広告宣伝においてデジタルマーケティングは無視して良いものではなくなっていますが、あくまでマーケティング手法の一つであることを理解した上で、どのように活用していくか考えなくてはいけないのです。

スポンサーリンク

具体例で考えるデジタルマーケティング

起業したての個人事業主と仮定する

具体的な事例で考えるために、まずはあなた自身が起業したての個人事業主になったと仮定します。職種は何でも構いませんが、BtoCなら飲食店、BtoBならフリーのエンジニアやコンサル辺りがわかりやすいでしょう。

あえてこのシチュエーションにしたのは、「広告宣伝に費用もリソースもほとんどかけられない状況」にするためです。

一般的に起業に踏み切れるということは、仕事=売上の見込みがある程度見通せている状態と考えられます(見通し無しに起業する人もいるけど)。起業の時点で考えられる確度の高い見込み客は概ね以下のような人たち、つまり「身内」でしょう。

飲食店:家族親類、友人、近所の人、元の職場の同僚、前職時の顧客
フリー:元の勤務先、前職時の取引先、知人

そこで実績(味や値段やスキル等、質の良いアウトプット)を作って、次の人に紹介してもらってお客さんを増やしていきます。事業は信頼で成り立っています。最初の見込み客はアウトプットを出す前の時点である程度あなたのことを信頼している人たちです。その人が別の信頼している人を紹介してくれて、新たな信頼関係を構築していく。その連鎖が広がっていって事業が拡大するのが、アナログかもしれないけど堅実な方法です。

紹介してくれる人がたくさんいて仕事に困っていなければよいのですが、多くの場合はそうではありません。知人が毎日お店に来てくれるわけではないし、顔が利く取引先の数にも限りがあります。起業の怖さは受注が途切れると全く収入がなくなることです。雇われの身のサラリーマンであれば営業成績が悪くても来月の給与がゼロになることはほぼありませんが、個人事業主は本当にゼロになります。拡大どころか事業を維持するためだけでも新規の顧客獲得は重要な課題になります。

新規顧客をどうやって獲得するか

新規顧客獲得のために、例えば飲食店であればチラシを作って店の周囲の家や企業にポスティングしたり、フリーのコンサルであればテレアポや飛び込みなどの営業方法もあるかもしれません。フリーのコンサルが実際そんなことはしないと思いますが、ここではマーケティングを理解するためにあえてそういうことにしておきます。

しかし個人事業主の使えるヒューマンリソースは基本自分のみであり、使える時間は1日24時間しかありません。営業活動に掛ける時間が多すぎると本来業務を行う時間が短くなるため、営業活動に掛ける時間はそこまでありません。受注が全くなければひたすら営業しまくるしかないですが、今の受注があっても、次の受注、その次の受注を切れ目なくつながるようにするためには、本来業務の傍らで営業活動を継続する必要があるのです。

マスメディア広告を使う方法もありますが、個人事業主にメディア広告の費用負担は大きいです。パブリシティ(マスコミに記事として無料で取り上げてもらう)も必ず取り上げてもらえるわけではありません。また飲食店であればマス広告の効果は比較的わかりやすく出てきますが、フリーエンジニアにはあまり親和性の高い方法ではないでしょう。

営業活動に割けるリソースに限りがあるし、広告宣伝に大きなコストは掛けられない。
そういう状況にこそ適しているのがデジタルマーケティングと言えます。

デジタルマーケティングの魅力と罠

例えば飲食店であればWebサイトを作って、場所やメニューや予約フォーム・電話番号等、「チラシに載せたいこと」をずっと載せておけます。フリーエンジニアであれば自身のポートフォリオやスキルマップ等を公開してスキルと実績をアピールできます。

前述の通りデジタルマーケティングは非デジタルのマーケティング手法と比較してコスト・リソースが低くて済みます。だからみんな割と簡単にデジタルマーケティングをはじめようとします。デジタルマーケティングツールを売る側(Web制作会社や広告代理店、Webコンサル等)も「4大メディアは過去のもの、みんなインターネットを見てますよ!」とか言って煽るものだから、さらにその気になって実際に開始してみます。

ブログを更新しました、SNSはじめました、メルマガ会員募集、etc…。

しかしWebサイトは誰も閲覧しに来ない。SNSのフォロワーは増えない。当然仕事に繋がらない。前述の通りデジタルマーケティングにはスキルが必要です。そのスキル無しにとりあえず箱だけ作ってもお客さんはそう簡単に集まりません。
でもあんまりお金もかけなかったしこんなもんか、と投げ出してしまうというのがよくある失敗例です。

何故企業でデジタルマーケティングが必要か

効率的な営業活動を実現するため

多くの中小企業もこの状態に近いのではないでしょうか。
ここから脱却しなければいけない理由、デジタルマーケティングが必要な理由は、「効率的な営業活動を実現するため」です。

営業要員もこれからどんどん人手不足、人材不足が深刻になっていきます。少ない営業リソースを有効に活用するには、見込みの薄い客まで総当たり戦をさせるような非効率なことをやっている場合ではないのです。

Webページやメルマガ、SNS等で獲得した確度の高い見込み客の追客に営業を集中させる。Webで紐づけされた個人スコアからニーズを事前に把握して提案に臨む。そのためにマーケティング部隊がより個別の顧客にフォーカスしたデータを分析・活用する体制を作り、デジタルシフトを完了させないと2025年の壁が(以下略)。デジタルの活用=DXは何も基幹業務だけではなく、営業にも適用されるのです。

かといってデジタルマーケに過大な妄想を抱いてもいけません。繰り返しになりますが、取り扱うにはそれ相応のスキルが必要です。どのような手段があり、どのようなスキルが必要かについて、次回以降の記事でお話していきたいと思います。

デジタルマーケティングはどの部門の責任範囲?

企業におけるデジタルマーケティングはマーケティング部門の責任範囲か、情シスの仕事なのか、というと基本的にはマーケティング部門のお仕事だと考えます。

Web系のスキルはエンプラ系(生産管理や受発注管理、財務会計・人事給与のようなエンタープライズシステム)とは全く異なります。情シスの主な業務範囲はエンプラ系及びネットワークやデバイスなどのインフラであることが多いですから本来ならば畑違いです。

以前も書きましたが、同価格のスポーツカーと10トントラックを「どっちも同じ値段の車」と普通は言いません。車をITで読み替えると、Web系とエンプラ系はスポーツカーと10トントラックです。スポーツカーにはスポーツカーの、10トントラックには10トントラックの運転技術がいります。用途も重視される機能・性能もまるで違います。そして同一人物がスポーツカーと10トントラックの両方に乗ることはかなり稀です。尚、私は元SIerでエンプラ系SEをやっていました。どんとこい10トントラック。

ただこれは導入する側で通用する理屈です。導入される側のユーザー企業においてはまた違う事情があります。そもそも多数の社員が運転免許を持っておらず(=ITリテラシーが低い)、持っていても原付だったりAT限定だったりするのです(=十分ではない)。

最終的にはそのAT限定の人たちにスポーツカーを操ってもらわないといけないのですが、それができるようになる迄の間、ITという乏しい共通言語を元に通訳するの役割を10トントラックの運転手(=情シス)がやっている、というのが今の私の置かれている状況です。

そのうちトラックの運ちゃんが先にスポーツカー乗り回してたりして…。
まあ、それはそれでありですけどね。

この記事をシェアする

この記事が気に入ったら
いいね!をお願いします

情報活用・DXカテゴリの最新記事