イントロダクション
このブログもTwitterアカウントとFacebookページがあり、情シスさんのつぶやきを見ることがあります。その中で「それ、情シスに聞く?」みたいな話がよく出てきています。
情シスの仕事の分量や線引きについては、正直一律で決まっているものではありません。
会社によって、状況によって、カバーする業務の幅は変わってきます。
特にひとり情シスの場合この傾向が顕著なのではないでしょうか。
責任範疇について明確な定義を必要とする人が自分以外に存在せず、自分が断ったとしても他に社内にそれができる人がいないし多数決を取られると圧倒的に不利になります。
話にパソコンとついたら情シス、ITとついたら情シス、機械とついても情シスくらいの扱いを感じる時も正直あります。
今回は私が経験している事例を紹介しながら、情シスの責任範疇について考えてみたいと思います。
※2019.12.25追記※
さらにテーマ毎に掘り下げた「情シスのお仕事」というシリーズ記事を更新しました。興味がある方は併せてご覧ください。
情シスの責任範疇について
パソコン、ネットワーク:情シスが対応するのは当然である、がしかし
情シスの責任範疇として真っ先にあげられるのはパソコンやネットワークといった物理的なインフラです。システムやセキュリティがいくら重要であっても、パソコンが動かなかったり、ネットワークが繋がらなければ何の意味もありませんし、ラインの業務に直接的な影響を及ぼします。
しかし「パソコン」「ネットワーク」というキーワードが入れば有無を言わさず情シスに仕事が投げられる状況も考え物です。
物理的な故障やセグメント単位での不通はどうしようもないですが、「パソコンの調子が悪い」「ネットワークが遅い」という曖昧な情報でお届けされることはかなりの頻度であります。
よくよく聞いてみると、私物のBluetoothマウスが繋がらなくなっただとか、ギガバイト単位のファイルをメールで送ろうとしてたりであるとかということも中にはあります。
それらの良し悪しや責任について一度自問してみるという習慣が無かったり、ITリテラシーが不十分でなんでもかんでも聞いてくる人というのは一定数存在します。
これについてはどれだけ社内の啓蒙活動を行っても、全員がIT技術者であるIT企業や少数精鋭のスタートアップ企業でない限り完全に無くなることは恐らくないでしょう。
だからといって諦めて御用聞きに徹すると、雑務の押し付けはいつまでも終わりません。
社内スキル全体の底上げを図ることで、その人ができないこと=社内の非常識という構図を作るのが正攻法ですが、非常に困難な上に時間がかかります。
時にはあしらい、時には手厚く、こちらが主導権を握れるような対応を心がけることも必要になります。
システム、サービス:諦めも時には肝心
業務システムやサービスについてもやはり情シスの責任範疇でしょう。
既に導入しているシステムの不具合は、社内で内製したシステムでない限り自力で解消できるとは限りません。というか解消できません。
表面的に発生している現象としてシステムの不調がある場合でも、その原因がいきなりシステムと決めつけることはできません。
パソコンやネットワークの調子がおかしいから発生しているのではないか、その人の操作方法に問題があるのではないか、等の観点で原因の切り分けをする必要があります。
例えば同じシステムを使っている別の人でも発生しているか、同じ人が別のパソコンで操作しても発生するか、常時発生しているのか偶発的に発生しているのか、特定の機能やデータだけで発生しているのか全ての機能で発生しているのか、などが切り分けのポイントです。
切り分けた結果システム側の何かが原因と考えられる場合、とりあえずベンダーに状況を連絡します。どうしてもその先の原因調査まで首を突っ込んでしまいそうになりますが、すっぱり切り分けて任せてしまったほうがいいこともあります。
限られた時間を有効に使わなければ、全ての責任を果たすことはできません。時には諦めも肝心です。
これからシステムを導入する場合の選定作業も情シスの責任範疇の一つではありますが、ラインの業務に特化したシステムの場合正直内容までは完全に理解できない場合もあります。
情シスの観点から非機能要件的な見地での助言や、他のベンダーへの声かけあたりが主な役割になってきます。
別の記事でお話ししているような大規模システム導入プロジェクトのような場合はプロジェクト管理という立ち回りもありますが、これは非常に稀なケースなので割愛します。
携帯電話、スマートデバイス:パソコンよりもたちが悪い
携帯やスマデバの管理も情報機器という括りで情シスの管轄です。
パソコンやネットワークなどのインフラと同じ扱いでもよいかもしれないのですが、用途や管理レベル、そして通信費という変動要素もくっついてくるので、こちらのほうが厄介な場合があります。
パソコンの紛失より圧倒的に携帯の紛失のリスクのほうが高いです。
自席のパソコンで動画を見ている人より出先で携帯からYouTube見ている輩のほうが多いでしょう。
最近は営業ツールとしてスマデバのアプリでのみ提供されるアプリもあり、どこまでを許可するのか難しい判断になります。
パソコン同様に「使い方がわからない」という人も一定数いらっしゃいます。
かといって野放図にしておくにはこの上なく危険な代物で、管理に常に頭を悩ませることになります。
セキュリティ確保と向上:遥かな旅路
細かい話は前回の「社内のセキュリティレベルの熟成」でお話ししましたが、これこそ他の誰の責任でもなく情シスの責任範疇としか言えませんが、凄まじく難しい課題です。
ウイルス対策やIT資産管理などの維持保全だけではなく、各利用者の意識の向上無くしてセキュリティは保たれません。
企業の事業継続において情報セキュリティはもはや必要不可欠な要素です。
重責であると同時に、どうやって多くの社員のリテラシーを向上させていくか、教育コンサルタントのようなことも考えなくてはなりません。
方針や規則の検討も含めて外部の手を借りることもできますが、そこに費用が付くかは企業毎に違うところでしょう。
ITリテラシーに関する教育なども同じ扱いですが、セキュリティよりさらに重要度が下がる分もっと困難になります。
新入社員への導入研修で社内システムの説明をするというもの年1回ですがイベントとして存在します。
セキュリティだけではなく、IT関連の教育・研修という業務も担っているのが情シスなのです。
Windows、Office関連:ググれ〇ス、をぐっとこらえる
あえてシステムやサービスと分けましたが、WindowsやOfficeの動作に関する質問も少なくありません。
バージョンアップやアップデートにより使い勝手が変わる場合もあるのですが、正直こちらも全ての質問に回答できる知識が脳みそに入っているわけではありません。
基本はインターネットで調べます。
WindowsやOffice関連の情報は多くの場合Webで公開されており、色んな人が同じところで躓いた情報を晒してくれています。
そういった情報を質問者に代わって調べているのですから、やってることは検索代行です。
もちろん検索スキルや検索結果を正しく理解できるかという問題はあります。
IT系の専門用語が羅列されている場合もありますし、マニュアルのように一から十まで懇切丁寧に解説してくれているとも限りません。
一見するとまるで違う情報だけど、実は類似の現象だったり原因が同根だったりするものもあり、書いていることを額面通りに受け取るだけではいけない場合もあります。
さらに言うとWeb上の情報が全て正しいとも限りません。
これらの中から情報を取捨選択していくのも一つのスキルではあります。
時々どうしようもないくらい基本的な事を質問されて、「ググれ〇ス」と言いたいこともありますが、グッとこらえてURLを張り付けたメールを返しています。
プロジェクター、デジカメ、ビデオ:電気屋さんじゃないんですよ
ネットワークプリンタは百歩譲って情シス管理だとして、プロジェクターやデジカメ、デジタルビデオ等の機器について質問されると、「それ、情シスじゃなきゃダメ?」と思うこともあります。
確かにどれもパソコンと接続をする機器です。以前紹介した全天球カメラ「THETA」などは、リモコンとしてスマホアプリが必要なため携帯のアプリ管理の対象になりえたりするので、切り分けが難しい場合もあるのは確かです。
しかし基本的にはオフィスのクーラーやドアを開錠するためだけのカードリーダーとかと同じ類の備品じゃないかと思っています。
個人的に興味があったりたまたま知っているものは一応答えられますが、情シスは電気屋ではないので、お勧めの製品が知りたければ自分で調べていただけると助かります。
動画編集:YouTuberに転職しようかな
私個別の事例として、社内ポータルに載せる行事や新入社員紹介の動画の編集もやっています。
デジタルビデオの撮影は総務がやっているのですが、デスクが総務ラインと同じ島にあるのでお株が回ってくるというだけではありません。
転職後の初出勤日時に渡された情シスの業務内容にご丁寧に「動画編集」と書かれていました。
もはや情シスのスキルとは何の関係もないですし、パソコンのスキルがあれば誰でもできるものでも無いと思うのですが、何せ明記された業務です。
AviUtlをノウハウページと首っ引きで格闘した結果、ホワイトバランス調整やBGMや別撮りの音声との結合、テロップなどの文字表示など一通りできるようになってしまいました。
後は音声読み上げソフトでも使えば顔出し無しでYouTuberになれるかもしれません。
私がやっている業務の中では「パソコン」=「情シス」の拡大解釈の最終到達点ではないかと思っています。
しかもなし崩しで押し付けられたのではなく業務範囲として明記されているという辺りに、「ITとは、情シスとは」を考えずにいられなくなる事例です。
あとがき
プログラマやSEが全員動画編集に長けてると思ったら大間違いです。
ツールとしての取り扱いや自力で調べるノウハウの面でキャッチアップが多少早いかもしれませんが、デザイナーではないのでセンスまで求めないでください。
というか最近動画案件の持ち込みが増えている気がするのですが、気のせいでしょうか。
慣れてきたとはいえ10分前後の動画作るのに1日くらいかかるし、時々残業してまで作っています。
外注したらどれくらい費用がかかるか、是非調べてみてください。
なんなら今度から費用請求していいですか?
なんか愚痴が言いたいがための記事みたいになってしまいましたが、今回はこの辺で失礼します。
ひとり情シス事情 バックナンバー
情シスになる前の状況のご紹介
情シスになってからの状況のご紹介
社内での不具合対応について
社内からの問合せ対応について
業者対応について
技術者としての情シス
ユーザー部門のシステム導入プロジェクトについて
社内のセキュリティレベルの熟成
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