情シスになる前の状況のご紹介 | ひとり情シス事情

情シスになる前の状況のご紹介 | ひとり情シス事情




イントロダクション

「ひとり情シス」という言葉をご存じでしょうか。
中小企業を中心にIT担当者にリソースが裂けず、人材が確保できない結果、専任担当者がいなかったり、1人だけだったりする状態や、その担当者を指す言葉です。
ここ数年「ひとり情シス」をターゲットにしたサービスの展開が活発です。
代表的なのがDELLのひとり情シス向け「終活ソリューション」や「ひとり情シスコミュニティ」「ひとり情シス大学」などです。

今回から私自身の実体験をもとに「ひとり情シス」の実態をお話します。
ベンダーからの視点ではなく、一担当者として見た「ひとり情シス」の実態です。

初回は主に転職に至る過程から、SEと情シスの違いをお話したいと思います。
転職先の選択肢として情シスを考えていらっしゃるSEの方の参考になれば幸いです。

スポンサーリンク

転職前の状況

業務パッケージ導入SEとして

私の前職は業務パッケージソフトの導入、展開、保守をしているSEでした。

自社パッケージで開発部隊と展開部隊が同じグループに所属しており、主に展開を担当していました。
かといってそこまで小さなソフトでもなく、導入プロジェクトは外注、オフショア含めて最低でも5~6人くらいのメンバーが必要でした。
カスタマイズも結構頻繁で、自分でコーディングすることもありました。
入社してから異動もなくずっと同じソフトを担当していて、最後はリーダーをやっていました。

主な業務

業務は営業に同行しての提案にはじまり、要件定義~カットオーバーまで全フェーズで客先のフロントに立ちながら、ユーザー要件とパッケージの擦り合わせ、カスタマイズ費用交渉等のスコープコントロール、メンバーの進捗、品質管理等のプロジェクト管理業務、保守フェーズの問い合わせ対応に至るまで、とにかくそのソフトのライフサイクルと一緒に仕事している状況でした。
複数ユーザー並行導入もあるし、他の自社パッケージと組み合わせた一括導入の場合システム間の連携もある。既存ユーザーからの問い合わせの管理もする。やることは日々いっぱいありました。

勤務状況

転職してからとあるITコンサルの人と話した時に、「日本のシステムの大半はSEの責任感だけで稼働している」と言われましたが、本当にその通りだと思います。
担当範囲が拡大していくごとに納期、品質、費用、CS、予算と責任範囲も拡大していきます。

当然のように残業は常態化していました。誰かに指示されたからではなく、スケジュール確保のために自発的にやっていました。保守問い合わせで休日に客先に飛んでいくこともあります。稼働前はPJルームにほぼ住み込み。遠地のユーザーも担当していたので、日本全国飛び回っていました。

ただ、SEの仕事が嫌で転職したわけではありません。
理由は所謂「家庭の事情」ってやつです。

SE=スペシャリスト、情シス=ゼネラリスト

転職先は情シス一本

転職先の選択肢は社内SEや情シスに絞っていました。

前職と同じような業務系SEでの転職では「家庭の事情」が一切解決しないし、同じような業務内容、勤務状況なら元の職場に残った方が経験も人脈もあるので絶対有利でした。

遠地出張や転勤が可能な限り少なく、職務経験が活かせる業種として考えたのが情シスでした。

意外に多い情シスの求人

転職サービスに登録して、担当者から紹介される求人に応募していきました。
狙いは情シスでしたが、採用面接自体新卒以来だったこともあり、練習も兼ねてソフト会社も何社か応募してみました。

面接の日程のやりくりは大変でしたが、有休を取れた日には1日に4社くらい詰め込んだり、業務終了後に面接してもらったりして1ヶ月くらい活動して現職の会社から内定をいただきました。

後からわかったことなのですが、情シスの人材は不足しており、条件次第ではそれなりに求人件数があります。

情シスの業務範囲

情シスになって最初にしたことは、担当する業務範囲の確認です。
ざっくりまとめると以下のような感じでした。

 分類 詳細
 セキュリティ管理  ウィルス対策、権限管理
 資産管理  サーバ、PC、ネットワーク機器、複合機、携帯・タブレット
 ソフト、サービス保守  ライセンス管理、契約更新、バックアップ、ベンダー問い合わせ、利用者管理(入退職、組織改正、パスワードリセット等)
 ネットワーク保守  社内LAN、インターネット接続、電話、FAX
 既存業者、新規業者対応  見積もり依頼、契約、情報提供依頼、製品紹介
 情報関係規定整備
 新規導入検討のための情報収集
 社内IT関係問い合わせ対応

結構な年数SEをやってきましたが、所謂アプリケーションエンジニアだったのでネットワークは専門外。セキュリティも基本的な事項はわかっていますが、具体的な運用まで精通しているわけではありません。ソフトやサービスも初めて見るものが大半で、専門性が高いソフトになると一般的な調査が難しいものもあります。

しかし、情シスには全部を独力で導入できるほどのスキルはいりません。

ネットワーク機器については、やりたいこととネットワーク構成をベンダーに伝えて適切な機種を提案してもらいますし、ソフトもわからなければベンダーや販社に問い合わせます。

必要なのは全体の把握と、それぞれの事項に関する一通りの知識です。わからなければ調べます。ネットワーク機器の個々の性能までは知らないけれど、何をする機械で、どういう製品展開があって、付加できる代表的な機能は何かくらいは調べてみる、といった感じです。

活かされるスキルは「技術力」より「情報収集力」

知識が無ければベンダーの提示を安易に受け入れることしかできません。
最低限戦えるだけの知識は必要になります。

そのため、入社してしばらくはGoogle検索ばかりしていました。
社内ドキュメントも漁るのですが、そのドキュメントの内容を理解するためにも知識が必要です。

さらに私の場合、前任者が退職済みというおまけ付き。
まともな引継ぎも無いのでドキュメントを探すの自体もかなり苦労しました。
そもそも導入されたシステムやサービスを全て網羅しているドキュメントなんて存在しません。
前任者の方が残してくれた資料が頼りでしたが、個々のシステムが何をしていて、誰が利用しているかまでは把握しきれませんでした。
社内関係者やベンダーに聞くにしても、「何も知らないんです」で聞きに行くのは担当者としてレベルが低いと思われてしまいます。

専門外とはいえ、ある程度のキーワードがわかれば、あたりをつけるくらいはできます。
頼みの綱は己の「情報収集力」でしたが、この調査が結構大変でした。
技術一般のことは整理された情報があるのですが、それを実際にどのように活用するのか、どういった製品やサービスがあるのかは個別収集が必要でした。

その時の経験が、このブログを立ち上げるきっかけにもなっています。

スポンサーリンク

求められるのは「総合的なITスキル」

情シスは自らゴリゴリにコーディングするわけではありませんし(全く無いこともないが)、ネットワークスペシャリストにならなければいけないわけでもありません。

しかしその全てを「概要としては知っている」「手持ちの知識を元にさらに深い調査を行うことができる」くらいには把握しておく必要があります。

SEはそれぞれの専門分野に特化したスペシャリストであることが多いですが、情シスは自社のIT機器、サービスについて幅広い知識を必要とするゼネラリストなのです。

新たなテクノロジーへの感度も必要

さらに新しい製品、サービス、テクノロジーにもアンテナを張っておかなければいけません。
自社の業務を把握した上で、より最適なもの、より効果的なものを検討する。
社内からの「最近よく聞くけど、あれって何?」という質問に答えられるようにしておく。

私も昼休みに弁当を食べながらIT系メディアを巡回しています。
付き合いのあるベンダーから定期的に新製品の情報を入手したり、セミナーに参加したりもします。

あとがき

とはいえ一番多いのは社内問い合わせ対応

大仰な話ばかりしてきましたが、情シスの業務で一番多いのは何はともあれ社内問い合わせ対応です。

「パソコンがネットワークにつながらない。」
「システムのログインパスワードを忘れた。」
「私のパソコンだけExcelのマクロが動かない。」
「異動前の所属のフォルダを1週間だけ閲覧したい。」
「知らない差出人から変なメールが来た。」

内線のならない日のほうが少ないですし、常に社内をウロウロしています。
そしてその途中でたまたま合った人に「そういえば」とまた声をかけられます。

実は一番大切なことは、「一日も早く社員の顔と名前と部署を覚える」だったりします。
これが私が一番苦手とすることで、未だに苦労しています。

この記事をシェアする

この記事が気に入ったら
いいね!をお願いします

情シスよもやま話カテゴリの最新記事