ハイパーコンバージドインフラの代表的な製品について | インフラ初心者が説明する仮想化

ハイパーコンバージドインフラの代表的な製品について | インフラ初心者が説明する仮想化

前回までのおさらい

ハイパーコンバージドインフラの解説をするために、「仮想化」「コンバージドインフラ」「ハイパーコンバージドインフラ」の三段階で説明していっています。
前回はハイパーコンバージドインフラ(以下HCI)の概要についてお話しました。
まとめるとこんな感じです。

・複数のサーバの内蔵ストレージをSDS(Software Defined Storage)であたかも1つの内容ストレージのように取り扱う=ストレージやSANが必要ない。
・SDSを構成したサーバをパッケージ化して纏めてサポートする=HCI
・メリットはハードウェア構成自体は単純なこと、スケールイン/スケールアウトが非常に容易であること、パッケージ化されているので丸ごとサポートされていること、最小構成なら2RUからと省スペースでスモールスタートができること。
・デメリットはストレージ容量が内蔵ストレージ×台数しかないこと、仮想マシン単位のスペックは比較的低いこと、部分的なリソース増強ではなくサーバ単位での追加になること。

このテーマ最後となる今回は、HCIの代表的な製品と、HCIとパブリッククラウドの比較をしていきたいと思います。

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HCIの代表的な製品

Nutanix

HCIといえばまず名前が上がるのがNutanixです。HCIのパイオニアであり、ICTのリサーチ・アドバイスの権威であるガートナーから「市場のリーダー」に選出されるこの分野の中心企業です。
製品の特長はハイパーバイザーをベンダーロックせず、Vmware vSphere、Microsoft Hyper-V、Citrix XenServerに対応した上でNutanix独自のハイパーバイザー「AHV」を無償提供しています。
運用管理はほぼ全てWebベースで完結し、システム情報、パフォーマンス、アラート等の情報を一括で確認することができるため管理が容易になります。
データ冗長性、容量削減にオブジェクトストレージと同様の技術が使われる等、サーバのみの構成のHCIの弱点を克服する仕組みを提供しています。

vSAN

vSANは厳密にはVmware vSphereの1機能であり、クラスタ機能として有効にすれば設定可能なSDS(Software Defined Storage)です。
vSAN自体はソフトウェアのため、ハードウェアは提供はしていません。そういう意味ではHCIに分類すべきかは難しいところですが、日本市場では2016年から2年間で導入企業が6倍になるほど急速な伸びを見せています。

ここまで急速な伸びを見せた背景は、仮想化が定着していく過程でVmwareの普及が進んだことと、HCIの盛り上がりがマッチした結果ではないかと思います。

Vmwareの普及の一因は、「レガシーインフラ上のシステムの延命」ではないかと思います。
WindowsServer2003等で動作していたようなシステムが、ハードの更新を迎えたけど新OSに対応したバージョンアップを行うことができず、仮想化して環境だけ新ハードに移行する、というような更新案件をSEの頃に何件か経験しました。
その際にしばしばVmware vSphereを利用していたため、個人的にも非常に馴染みのあるソフトです。

そのVmware vSphereの機能であるvSANを利用することで、HCI「と同じような構成」のインフラを構築することができます。「と同じような構成」としたのは、ハードウェアも含めてパッケージ化された状態でなければHCIで受けられる恩恵の中の「纏めてサポートが受けられる」ということができないからです。

それでも自前のインフラを活用してHCI「と同じような構成」を組むことができるため、導入企業数が大きく増えているのではないかと推測します。

もちろんDELL「VxRail」のようにVmware vSphereをハイパーバイザとしてハードウェアとパッケージ化した純然たるHCI製品もハードベンダ各社から展開されています。

パブリッククラウドとHCIを比較してみる

「持つべきか、持たざるべきか」は一旦置いておく

ここまでのHCIについての話を総合した上で、AzureやAWSといったパブリッククラウドとの比較をしてみようと思います。

IT資産を自前で持つべきか、持たざるべきかという理屈だけで言えば、HCIはオンプレミスなのでパブリッククラウドとは比較になりませんが、単純にインフラという点だけで見ればHCIの方が優位な点が多数あります。

仮想デスクトップで比較してみる

例えばパソコンのデスクトップ仮想化で考えたとします。

以下に記載している価格はベンダー各社が公表しているものを総合してはいますが、その後の計算がしやすいようにキリがいい辺りに都合よく変更したものです。この価格が標準値でもなんでもないので、正式な価格はベンダーに問い合わせてください。

NutanixXpressが300万円前後(構成、ベンダーにより価格は違います)します。
仮想デスクトップはWindowsにしたいのでハイパーバイザはHyper-V Datacenterにして120万円前後で、ここに維持管理に関する費用が載ってきます。

比較対象としてAWS仮想デスクトップを引き合いに出してみましょう。大体これくらいほしいなということで、スペックはこんな感じにしてみました。

・CPU:2GB
・メモリ:4GB
・ルートボリューム: 80GB
・ユーザーボリューム:100GB

AWSには月額料金固定の月額契約と、使った時間だけ課金される時間契約があります。
上記スペックの場合、時間契約だと月額料金$13 + 時間辺り$0.3の課金です。
法人利用を想定して月の使用時間を160時間として場合、$0.3×160時間=$48で合計$51。
月額契約だと$38で、こっちのほうが安いので月額契約とします。
$1=¥110で計算して¥4,180/月、年間¥50,160、5年で¥250,800。
約25万円ということになります。

HCIの費用(維持管理費抜き)420万円をAWS1台の使用料25万円で割ると16.8。
つまり5年利用の場合、仮想デスクトップ16台以下ならAWSのほうが安く、17台以上ならHCIのほうが安いということになります。

あくまで理論値である点、Nutanixの上記価格の構成で仮想デスクトップ17台を動作させた場合のパフォーマンス等は一切考慮していない点はご了承ください。

比較すべきは費用だけでは無いが

もちろんHCIの場合必要となるファームウェアのアップデートやセキュリティパッチ等はAWSの場合発生しません。もちろん電力も必要としませんし、設置スペースも不要です。この点を費用として差し引かなければならないのも事実です。

反対にHCIであれば利用者の増減によってサブスクリプションの増減を調整する必要はありません。不要になった領域は解放できますし、データ保全のためにしばらく保持しておくこともできます。要は融通が利きます。また導入規模がさらに大きくなった時、AWSはサブスクリプションが1台ずつですが、Nutanixはハードのみの購入(Hyper-Vは追加不要)になるので費用差はさらに出てきます。

仮想デスクトップを例に出したのは、スケールイン/スケールアウトや導入時のスモールスタート等、HCIの特性を活かせる事例だからです。

だからといってAWSが仮想デスクトップに必ずしも向いていないわけではありません。導入規模が小さくなればなるほどAWSのメリットも出てきます。利用者数だけではなく、事業所にサーバを設置することが難しい場合でもパブリッククラウドには関係ありません。

それぞれに一長一短ありますが、導入規模によってはこうした比較が成り立つ、という例を提示してみました。
実際にはさらに「AWSは専用アプリやブラウザからしか使えない」「複数ユーザーでの共用ができない」のような使い勝手の面も考慮しなければいけないわけですが、まずはパブリッククラウドとHCIを比較の俎上に載せるために、あえて費用面の話からしてみました。

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あとがき

具体的な利用方法をイメージしておく

ここまで4回に渡ってお話してきましたが、最後は具体的な話に落とし込みたかったのでパブリッククラウドとの比較にもってきました。
技術的な話だけで止まってしまうより、具体的にそれで何ができるのかイメージするところまで落とし込んだ方が実用性が高いし覚えやすいですし、そういう機会が発生した時に引き出しとして出てきやすいと思います。
エンジニアは日々勉強と言いますが、技術論だけでなくそれで何を実現できるのかまで踏み込むことで技術とビジネスを繋げていけるとより価値が出てきます。

と、偉そうなことを言っていますが、私自身具体的なイメージから逆算していかないと技術が覚えられない文系脳なだけなんですけどね。

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