全国緊急事態宣言下の中小企業情シス対応検討事例|コロナ禍と情シス

全国緊急事態宣言下の中小企業情シス対応検討事例|コロナ禍と情シス

<※本記事は2020年5月13日に作成しています。以降に発生した事象との整合が取れない点が出てくる可能性がありますが、ご容赦ください。>

前回(3/2 コロナ禍での中小企業テレワーク(主に在宅勤務)検討事例の紹介)から約二ケ月が経ち、世界は一変しました。本当は途中経過も含めて事例展開をしていきたかったのですが、自治体・政府の発表への対応検討や勤務場所の分散・在宅勤務などのテレワークの整備に勤務管理等制度の整合等、日毎に変わる状況に追われなかなか情報を発信することができませんでした。

その間にもSNS等で各社の情シスが奮闘し、疲弊していっているのを拝見しておりました。医療現場とは比較にならないかもしれませんが、企業内のテレワーク環境の整備・管理を司る情シスもコロナ禍において負荷が集中しています。

今回も前回に引き続き弊社のコロナ禍対応事例をご紹介していきたいと思います。

情報を発信する目的は2つです。
1つは同じようにコロナ対策に奮闘されている各社情シスの方々に何かの参考にしていただければという思いです。
もう1つは、この環境下でも社会や企業の活動を止めないために働いている人がたくさんいるということを少しでも発信しておきたいからです。

医療や小売りだけではなく、電気・ガス・上下水などのライフライン、電話やネットワーク等の通信、電車・バス・飛行機・トラック等の運輸・物流等、多くの国民に外出を控えて家にいてもらうために通常通りのサービスを届け続けないといけない仕事がたくさんあります。テレワークでの在宅勤務も「こうしてください」と言われて家で勤務する側ではなく、「こうしてください」の仕組みや手順を作って渡す側がいてはじめて成立します。
テレワークのための制度やインフラへの助成はありますが、構築して運用するのはあくまで企業であり、多くの場合その役割を情シスが担っています。予算も市場の在庫も限られている中で、企業活動のライフライン維持のために動き回っている情シスがいることに少しでも目を向けていただけたら幸いです。

また、本記事において行政指示等の根拠については出典・リンクを付けさせています。真偽不明の根拠による憶測ではないことを示すものではありますが、後日最新版の文書が発行されている場合もあります。あくまで判断を行った時点での根拠資料である旨をご了承ください。

対応の基本方針=「うろたえるな、ジタバタするな」

まだ7都府県の緊急事態宣言が発表される以前の3月まで話は遡ります。
経営層からコロナ対策の基本方針が管理部門に下りてきました。
方針は「うろたえるな、ジタバタするな」です。

ビビットに反応しすぎない


日々状況が変わる中で、対策や指示が朝令暮改になると現場が混乱してしまします。
例えば行政から「従業員の座席間隔を2メートル以上開けて」という発表があったので空き会議室等を抑えて急いで移動してもらったと思ったら、翌日に「緊急事態宣言の範囲を全国に拡大します」と言われて慌てて在宅勤務への移行を指示するというような感じです。

いくら命と健康が大事といっても、たった1日で在宅勤務になるんだったら多大な労力と勤務時間を割いて勤務場所を移動しなくてもよかったのではないか、となってしまいます。
自治体や政府の発表・指針には基本的に従う方針ですが、行政にとっても未知の状況の中で発表を撤回せざるを得ないようなこともあります。また行政以外にもメディアの報道やSNS等で流れる憶測や流言飛語の類に至るまで新型コロナウイルスに関する様々な情報が溢れています。その全てにビビットに反応しすぎると、振り回されて疲れてしまいます。

基本的な対策(手洗い、消毒、マスク着用、3密を避ける)はもちろん徹底しつつ、今できること・この先必要になるであることの準備をできるだけ速やかに行っていく。そのために現状をきちんと把握し、本当に必要なものの数量や費用等を明確にしておくことを進める、というのが3月の時点での方針でした。

緊急事態だからこそ、適正な支出を守る


この環境の中で業務継続のために必要になるものはIT関連に限らず挙げればキリがありません。しかし費用は無尽蔵にはありません。この経済状態が今後も長引くようであれば経営層は内部留保を切り崩す判断も必要になります。
全く売上が無くなったとして、3ヶ月先、半年先、1年先、どこまで社員の給与を払い続けられるか。経済支援対策が取られるとしても間に合うのか、額は十分なのかもわかりません。市中の銀行からの借入も難しくなっていくことが予想されます。

既に明日のキャッシュさえも苦しくなっている自営業・フリーランス・小規模事業者の方もいらっしゃいますが、中堅以上の企業も多少持ちこたえられるというだけで数か月経てば似たようなものです。内部留保が多い会社はそれだけ多くの社員と固定費を抱えており、持ちこたえられる期間はどこもそんなに変わらないのではないでしょうか。

そんな中でなんとか事業を継続して少しでも売上を上げるための貴重な投資です。調達したのはいいけど結局使わなかったとか、大量に余ったということは平常時以上に避けなければいけません。同じ災害でも台風や地震の場合、発生期間や地域が限定的で発生後の復旧に対する支援・投資となりますが、今回のコロナ禍は日本全国はおろか世界中で発生しており、期間も長期間に渡る上に終息の見通しが立っていません。「緊急事態だから」といって一気に費用を投入してしまうと、2ヶ月先、3ヶ月先に何の手も打てなくなります。

逆に長期戦で身構えていたら思いのほか短期で終わるという可能性もゼロではありません。来月再来月に終息するというほどではないにしろ、1年先、3年先と思っていたら半年で終息したみたいなことです。そうなると長期的に備えるために準備したものがかえって過剰投資になってしまいます。

緊急性の高いもの、重要なものへの投資は惜しむべきではありませんが、その出費が本当に今必要なものなのかきちんと判断しなければいけません。緊急事態だからこそ規律を守らなければ歯止めが利かなくなります。経営判断を伴わない支出はあくまでルールに基づいて行われなければならないのです。

準備が全て

かといっても悠長に構えているだけでは本当に動かなければいけない時に何もできません。
どのレベルまで何が進んだらどの手を打つ、というように影響範囲・判断基準・行動計画を明確にした準備を進めておかなければいけません。
もちろん想定していた順番に事が進まない可能性もありますが、それでも計画しておけば部分的に訂正しながら進めることもできます。何もなければその都度一から考えることになり時間がかかってしまうか、刹那的な判断に振り回されることになります。

きちんとした準備をして備えるからこそ、ジタバタしたりうろたえたりせず粛々と対応を進めることができるのです。それを称してBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)と呼ぶのだと思います。

つまり3月一杯をかけてBCP対策を行っていました。
情シスとしては業務停止等の経営的な判断は含まず、あくまで業務を継続させるにはどうするかというレベルでの計画を準備していました。

3月中に検討していたこと

前回記事の時点(3/2)では私の県での感染者はいませんでしたが、3月後半から徐々に感染者数が増えました。
以下はまだ感染者が発生していない状況の中で検討したものです。

事業継続対策のレベル設定

社員から新型コロナウイルス感染者が発生した場合

想定する最も影響の大きい事象は「社員から新型コロナウイルス感染者が発生する」です。
感染者が発生した場合、①対象社員の入院・隔離、②勤務フロアは保健所の指導の下消毒、③濃厚接触者を確認し、感染防止の措置を講じることになります。
(※『新型コロナウイルス情報企業と個人に求められる対策 』日本渡航医学会 産業保健委員会・日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会 2020/3/2 より)

③について濃厚接触者を自宅待機させるかどうかは企業の判断となっていましたが、多くの場合リスクを考えて約二週間の自宅待機を選択しています。
濃厚接触者の定義は4月20日以降変更(『新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年4月20日暫定版)』 国立感染症研究所 感染症疫学センター)になりましたが、対象者の席があった場所だけではなく利用していた共用部(エレベーター、トイレ、食堂、複合機、駐車場、喫煙室等)も消毒の対象になることが考えられ、そうなると1フロアだけの問題ではなくなります。
企業によってはフロアだけでなく建物全体を対象と考える場合もあります。フロア間の人の往来があるような場合は別フロアと考えるのも難しいでしょう。

また感染者が発生したことが外部に広がった場合、風評被害も考えられます。自主的に公表したとしても別拠点も含めて社名が出ている箇所への影響が出ることが予想されます。地方・地域を商圏とする中小企業であれば猶更でしょう。
そうなると感染者が発生した拠点以外も含めた全社一斉休業の可能性もあります。

恐らく営業行為を継続することも困難になるでしょう。休業を宣言している以上生産ラインを稼働させることも困難です。最低限期日までの支払い等が滞らないよう経理系の処理を継続することしかできないことになります。

行政による外出自粛・休業指示が出た場合(社内感染者無し)

業種・業態によっては実際に政府・自治体からの休業要請があった企業もあると思います。
弊社の場合は該当業種にあたらないため現時点でも休業していません。
ただ仮に発生した場合は「社員から新型コロナウイルス感染者が発生した場合」同様全社一斉休業となり、営業・生産の停止、経理処理のみ継続ということになるでしょう。

行政による出社制限が出た場合

緊急事態宣言においては「最低7割、できれば8割接触を減らせる」という方針により在宅勤務、勤務場所の分散、時差出勤等様々な方法が行われていますが、こうした発表が出る以前だったため「出社制限」という切り口で考えました。

休業指示ではないため在宅勤務等のテレワークで業務は継続できます。ただし前回の記載した通り出勤者による支援や業務内容を整理しなくてはいけません。

また通常時の生産性をそのまま維持することも難しいと考えられます。
その場合継続すべき業務の優先度は前述の支払い等の経理系が最も高く、次いで既に受注済の契約の納品を遅滞なく完了すること、最後に新規受注のための営業活動という順番になりました。ビジネスの基本が信頼であり、決められた日までにお金を払ったり商品を届けること=約束を守ることが信頼の基盤です。

業務内容を吟味した上で、在宅勤務が困難な業務・優先度の高い業務は社内で継続、その他の業務は在宅勤務や休業等で対応することにする、という方針に至りました。

在宅勤務時の勤務管理整備


前回の記事で「緊急措置なので一旦端折ったこと」とした部分に、在宅勤務者の勤務状況の確認や処遇・評価基準の検討がありました。
対象を学校休校の影響で子の監護が必要な社員に限定していたのですが、今後この範囲が拡大することを見越すとこれらも整備しておく必要があります。

厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」の申請を検討する場合、「GPS 機器による場合は、業務時間における GPS による位置情報(地理座標)及び時間を記録できる機器(GPS 機器)のログ情報(概ね1時間毎に記録されたもの)」が必要であり、「朝礼、夕礼メールによる場合は、テレワークを実施する日の業務の開始時及び終了時に、企業名、対象労働者の氏名、日時、場所、業務実施予定の概要(実施予定時間帯及び実施予定内容)(開始時)、業務実施結果の概要(実施時間帯及び実施した内容)(終了時)について記載したメールを、申請事業主及びテレワーク相談センターへ送信」する必要があります(一応上記以外の方法でテレワークを証明できるものがあればご相談、となっています)。

この条件を満たすところまではやらないにしても、朝夕にメールやチャットで上司が業務の開始・終了を確認すること、朝の確認時にその日の作業予定を確認し、夕方に実績を確認すること、勤務状況確認のためのフォーマットを準備すること等を取り決めました。
就業規則を変更すると、規定・規則の管理規程上取締役会での承認であったり、労働基準監督署への届出が必要になります。「面倒くさいから」ではなく「この先もフレキシブルに変動する可能性が高い」から、あくまでコロナ禍の例外的措置として役員名での通知文という形で周知してもらうことになりました。

スポンサーリンク

4月になって検討したこと


4月になり4/7の7都府県、4/16に全国への緊急事態宣言が発表されました。
3月28日に首相官邸・厚生労働省から「3つの密を避けましょう」という呼びかけがはじまり、「3密」「ソーシャルディスタンス」という言葉が日常的に使われるようになったのも4月初旬くらいからだったでしょうか。
私のいる都道府県でもついに感染者が確認され、コロナの足音が現実的になってきました。地元自治体からも色々な発表が行われるようになり、3月の準備を実際に実行に移すことになりました。
尚、弊社は休業要請に該当する業種・業態ではないため、今のところ継続稼働しています。

密を避ける2つの場所と手段

政府緊急事態宣言の内容は3月の検討の中の「行政による出社制限」に近いけど、「全員出社させるな」まで強いものではありませんでした。主な目的は感染拡大防止であり、クラスターの発生と感染源不明の市中感染の抑制のために感染リスクが高い行動=3密を避けることが求められているものと捉えました。感染者を出さないことが一番ですが、まずは感染者を出しにくい環境を作る必要があります。

企業で働く人が人と接触する可能性が高い場所は「通勤」と「オフィス」です。

私のいる地域は都市部と違い車通勤の割合が高いのですが、公共交通機関を利用する人も少なからずいます。電車・バスなどは、換気ができない密閉・多数の人がいる密集、人との距離が近い密接の3密を全て満たしています。

オフィスの空間も人が多数いるし机の間隔は近いと言えます。頻繁に行われる会議は密閉空間に密集・密接で行われますし、取引先との対面でのやり取りもあります。

安全度のレベルを設定するとすれば、「通勤せず、オフィスに来ない」が最善であり、その次が「3密にならない方法で通勤し、オフィスでの3密も避ける」になります。

在宅勤務

「通勤せず、オフィスに来ない」ための方法=在宅勤務ということになります。
前回の子の監護の場合に引き続き、PCは持ち帰り、通信はテザリング利用として、対象範囲を在宅勤務可能な全職種にすることにしました。

所属単位で業務内容や在宅可能な業務は異なるため、所属長単位に運用案を考えてもらいました。弊社ではこれまで在宅勤務の本格的な運用が無かったこともあり、在宅で何をさせるのか等切り分けが難しい部署もあれば、営業のように直出直帰の延長ですぐに運用できる部署もあります。一律で同じ制度で運用するのは難しいので、現場に合った方法を選択してもらうことにしたのです。

その結果最も多かったのが「在宅ローテーション」でした。全員一斉に在宅勤務にするのではなく、半分ずつだったり週単位だったりで出勤者と在宅勤務者を交代してもらう方法です。管理側も社員側もやり慣れていないので、段階的・部分的にやろうとするとこういう方法に落ち着いたようです。

これは正直情シス的にも助かりました。一気に全社員が在宅でテザリングを使用したら携帯の通信量で賄いきれない恐れがありました。モバイルルーターも3月には入手困難になりはじめていました。また在宅勤務時のPCの不調も懸念事項でした。何せPCすらも調達に手こずるほどの状況(これはコロナ禍の影響だけでなく、CPU世代交代による一時的在庫薄も影響したものらしいです)で、家まで様子を見に行くわけにもいかないので、出社時に代替PCを渡す運用にするにも手持ちのPCが足りなさ過ぎました。

在宅ローテーションの対象となった社員は全体の約4割でした。半分は在宅、半分は出勤なので、オフィスの在籍社員は2割程度減少しました。

時差出勤・通勤手段変更

「3密にならない方法で通勤」しようとすると、よく言われるのが時差出勤です。
また、そもそも公共交通機関を利用しない通勤方法(車・バイク・自転車・徒歩)に変えるという方法もあります。

前述の通り、私がいるのは比較的車通勤の多い地域だし、東京や大阪のように近隣府県から通勤するほど遠方から来る人はほぼいないので、実際に自転車等に切り替えた人は少なからずいます。
時差出勤は始業時間を30~1時間早めたり遅くしたりしていたのですが、「乗車率はほぼ変わらなかった」のが現状のようです(ちなみに私は元々公共交通機関を使わず通勤しているので、時差出勤した方から聞いた感想です)。出社時は早くしても遅くしても大した差はなく、退社時は早く帰る場合は空いているけど遅くしたらほぼ変わらないということでした。

結局こうした人は在宅ローテーションとの組み合わせで、できるだけ公共交通機関に乗る回数を減らせるという形になりました。完全在宅が出来れば良いのですが、前述の在宅用インフラが不十分なこともあり、やや苦肉の策になってしまいました。

会議室や空き部屋で勤務する

「オフィスでの3密を避ける」ために行ったことの1つ目は、会議室や空き部屋を利用して勤務場所を分散し、同じ室内にいる人数を減らして個々のソーシャルディスタンスを確保することでした。

とはいえ空いていればどこでもいいわけでありません。3密の要件の一つ、「密閉」に該当するような換気の難しい場所は避けなければいけません。
社内にそんな都合のいい空き部屋が多数あるわけがないのが普通ですが、弊社の場合製造業のため工場があったり、分散可能な営業拠点がいくつかありました。

さらに前述の時差出勤との合わせ技で営業系の職種が「半日出勤半日出先ローテ」を編み出しました。フロアのメンバーを半分に分けて、午前と午後でオフィスに入れる人を分けたのです。オフィスに入れない時間は出先に出ているか在宅勤務をしています。営業は営業車がほぼあるので公共交通機関の時差出勤には当てはまらないのですが、オフィスの3密を避けるための方法としては効果がありました。

分散先は元々OA用に整備された場所ではありません。電源やネットワーク等の問題もあります。何より厄介だったのは複合機でした。プリントアウト、コピー、スキャン等オフィスでは複合機の出番が多々あります。ペーパーレスを目指していても必要とする場面は決して少なくはありません。通常であればフロアに必要な台数が設置してあるのですが、分散する事になった時にうまく割り振れない箇所が出てきました。
他の場所と共用してしまうとフロア間の人の行き来が発生するのでせっかく場所を分けた意味が薄れてしまいます。しかし一時的な分散(の予定)なので、購入やリースだと使わなくなった時に返すこともできません。その結果レンタルという選択になるのですが、これもモバイルルーターやパソコンと同様に需要が高まりなかなか調達できませんでした。

細かいところだと、大会議室等を複数の部署が混成で使う場合、施錠や清掃等のルールの調整もありました。

会議はWebミーティングにする

「オフィスでの3密を避ける」ためのもう1つの施策が、会議のWebミーティング化です。コロナ禍において劇的に変わったのがWebミーティングの普及でしょう。弊社も元々GSuiteを利用していたのでGoogleMeet(旧HangoutsMeet)は元からあったのですが、使われる機会は月1、2回程度でした。

これが会議室での密集・密接を避けるためや、外部の取引先との商談など、様々な局面で活用されることになりました。ビジネス利用以外でも最近ではオンライン飲み会等も盛んに行われており、コロナ禍におけるコミュニケーションインフラの主役といってもいいのではないでしょうか。
余談ですが、当ブログのGoogleMeet関係の記事もこの2か月非常に多数の方に閲覧いただいています。大した事書いてないのにすみません。


しかしこれも順風満帆とはいきません。社内のPCの多数はカメラ・マイク付きですが、付いていない機種も一定数あります。そしてこれもご多分に漏れず、Webカムも全く調達ができない状態になっているのです。
またこれまで使ったことが無かったので使い方の指導も必要でしたが、これまでと比較すると信じられない速度でみんな使い方を覚えていきました。また内部ミーティングはGoogleMeetで行うのですが、外部とのミーティングの場合はZoom、Teams、Skype、ベルフェイス等様々なツールを教えもしていないのにいつの間にか使いこなしているのです。
やはりなんとなく聞いているのと必要に迫られて覚えるのとでは吸収のスピードが違います。

それでも本当に苦手な人はいるので、きちんと懇切丁寧なマニュアルはGoogleMeetだけ準備しました。これは他のツールと比較してMeetが優れているということではなく、GSuiteを利用している=全員にアカウントがあるからです。
ITリテラシーをあまり期待できない地方中小企業で、しかも在宅や分散で人が集められない状況で、いちいちアカウントを作ってもらったりアプリをダウンロードさせることを全員に指導するのは至難の業です。とりあえずいつも使っているGmailの画面の右上の黒丸9つ押したら起動します、で済むのはとてもありがたいのです。

そして「全員が使えるようになること」もとても重要でした。「今回はZoomで」とか「Skypeのほうが」のような選択肢を示すのではなく、「MeetでWeb会議をする」を社内の共通言語にするのです。前述の通り、使える人はZoomもSkypeも勝手に覚えますが、誰一人取りこぼさず使えるようにするにはツールを1つに絞って手順を展開する必要がありました。ストリーミング配信で入社式を中継するなど、URLさえクリックすれば全員が同じ映像を共有できるという経験することで、コロナ後もスタンダード化するであろうWebミーティングに取りこぼしなく着いてこれる素地を作ることができました。

完璧ではないが、最善を尽くす


在宅勤務+分散勤務でオフィスの在籍社員は5~6割減らせることができました。
勤務管理や時差通勤等は情シスが考えることなのか?と思うこともありましたが、随所に出てくるIT機器のおかげでほぼ丸2ヶ月コロナ対策に奔走していました。情シスだけではなく、調達困難な状況下でマスクや消毒用アルコールの確保・社内配布に尽力いただいた方もいらっしゃいますし、感染の不安を抱えながらオフィスに出勤している方も、在宅勤務でいつもの生産性が出せずイライラしている方も、みんな等しくコロナ対策を行っています。

事前に準備していた割には大したことができていなかったかもしれません。在宅勤務に完全移行できたわけではなく半数近い社員はオフィスに出勤しています。ネットワーク環境、PC、Webカム、複合機等足りないものはまだまだあります。継続して調達依頼を続けているもの、諦めて代替手段を模索しているものもありますが、現状では今あるものをシェアして使ってもらったりしてなんとか凌いでいる状況で、快適にはほど遠いと思います。

誰も先が見通せない状況で、完璧は難しいと思います。でも目的は在宅勤務や分散勤務のインフラを完璧に準備することではなく、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めながら社員の生活のためにも事業を継続させることです。完璧でなくても最善を尽くさなくてはいけないのです。

わずか数百名の社員の会社ですら、この程度の身動きしか取れません。数万人、数十万人、数百万人の命を預かる自治体の首長や職員、一億二千万の命を預かる政府並びに官僚にも未来を予見できる超人はどこにもいません。完璧ではなくてもみんな手探りで最善の道を探している。最低でもそうあってほしいと願っています。

経営層の理解があってこそ


とはいえなんとかここまで漕ぎつけられたのも、経営層の理解があったからこそでした。
自ら率先して会議をWeb参加に切り替えていただき、不足しているインフラの必要性も一緒に検討していただきました。後述のWeb商談、電子決裁などは逆にこちらに提案いただいたものです。
今回の対策を全面的に支持・支援いただいた経営層各位には深く感謝いたします。

スポンサーリンク

5月:次への準備

継続的な予防策

5月に入り緊急事態宣言は5/31まで延長されましたが、各自治体を中心に「出口戦略」の話が盛り上がりはじめており、世の中の雰囲気はコロナ禍終息に向けて動いているかのように映ります。

しかしこれは経済の停止状態を解除するための動きであり、新型コロナウイルスは駆除も根絶もしていませんし、治療薬もワクチンも供給が開始されているわけではありません。基本的な感染予防、拡大防止を継続しながらの経済活動再開であるという理解です。
そのためここまでお話してきた弊社の対策はしばらく継続を予定しています。むしろこれまで不十分だったところを引き続き補完していく方向です。

コロナ禍は終息するのではなく、日常に変わるだけなのです。

次への打ち手を準備する

コロナ対策が日常になると、暫定的だったことを恒常的に行わなければいけなくなります。
Webミーティングが最も良い例でしょう。

在宅勤務の正式な就業規則化

真っ先に手を付けるのは在宅勤務の就業規則化です。これまで在宅勤務=全く会社に来ない、というイメージでしたが、隔日や週単位等フレキシブルな設定であればより柔軟に運用できることがわかりました。

完全在宅も含めて様々なパターンに対応できるような柔軟な制度設計が必要になると考えます。それに伴う評価制度とのリンクも併せて検討することになります。

決裁の電子化

「書類にハンコを押すためだけに命がけで出社する」みたいな記事をよく見かけましたが、基本的にはこれも対策していかなければと考えています。

決裁を要する文書の棚卸、承認ルートの整理、押印される判の重みや商慣習・法的制約等、紙書類の電子決裁への移行は一朝一夕ではありません。文書管理規定に定義されている文書以外にも単なる回覧、補足文書など、判がついてある文書は多岐に渡ります。
また電子承認と電子保管は基本的にはセットになります。前述の文書管理規程の改定も必要になる場合もあります。

社内文書の決裁以外に、外部の取引先との契約・受発注などの文書の電子化も検討を進める必要があります。こちらには電子化によって印紙が不要になるというメリットもあります。

Web商談やWebマーケティング戦略


緊急事態宣言が解除されたからといって市場が元通りになるとは限りません。対面接客や対面商談を忌避する状況は今後しばらく続く可能性があります。そうなると営業のスタイルも変化せざるをえなくなります。

コロナ禍の中でWeb会議システムを利用したWeb商談が増えてきていますが、営業手法も含めてまだまだ発展途上の段階です。対面の時とはシナリオの組み立て、提示する資料、商談の出口への運び方など様々な違いがあります。またWeb会議ツールも様々なものがあります。社内の場合は一斉に揃えることもできましたが、社外となると双方がツールを揃える必要があります。

そもそもWebだけど完結できるのかも課題です。前述の電子契約のような仕組みがあったとしても、金額の大きな契約になるとWebだけでは不安になるお客様もいます。Web商談はあくまで手法の一つです。発見、追客、育成、どのタイミングでどのような手法を使うのか、組み立てと見極めが重要です。

また外出自粛が続く中でWeb閲覧数は飛躍的に伸びているとも言われています。特に動画閲覧が増加し、前述のWeb会議と併せて動画系のトラフィックが増えています。対面できないからこそWebを通じて情報を発信したり、双方向で情報のやり取りができる手段がこれまで以上に重要度を増しています。ネット販売の取扱いも増えていますし、宅配・持ち帰り等の需要も高まっています。Amazon、楽天などの売上は衛生用品を中心に伸びており、UberEatsが急速に利用者を増やしています。

だからといって拙速にこうしたビジネスに手を出すのも危険です。特にBtoBを中心に事業を進めていた事業者にとって、BtoCはノウハウもなく未知の領域です。在庫、流通経路、カスタマーサポート等、舵取りを間違えると逆にブランド価値を棄損する恐れもあります。
直接的な販売だけでなく、広く企業や商品を認知してもらうための戦略としてWebを活用することもできます。どのようにすれば自社の強みを活かすことができるか、しっかりとした計画が必要です。

 

 

この記事をシェアする

この記事が気に入ったら
いいね!をお願いします

ネットワーク・インフラカテゴリの最新記事