社内コミュニケーションでチャットツールを利用する | ビジネスチャット考察(2)

社内コミュニケーションでチャットツールを利用する | ビジネスチャット考察(2)

イントロダクション

ビジネスにおけるチャットツールの利用の有効性を考える「ビジネスチャット考察」、今回は2回目です。

前回はチャットツールの特性から他のコミュニケーションツールと比較したメリット/デメリットについて考えてみて、デメリットをクリアしたツールが、昨今のチャットツールブームをけん引していることがわかりました。

チャットツールは便利な反面、野放しに使用すればセキュリティリスクが非常に高いです。
ファイル授受が可能なため社内情報を流出させる恐れやウイルスやマルウェアの侵入経路にもなります。
また非管理下のコミュニケーションからトラブルが発生した時に、企業がそれを感知するのに時間がかかり問題が重大化する恐れもあります。
さらにアカウントの乗っ取りなどによって連絡先に損害を与える恐れがあり、相手側がそれを強く懸念する場合にチャットツールの利用そのものがマイナスプロモーションになることもあり得ます。

それらのリスクがあっても、利便性が勝って管理領域外で使用する、所謂「シャドーIT」が発生する可能性があります。
セキュリティに対するリテラシーが成熟していない場合特に危険性が高いです。

そうならないようにするには、きちんとした管理体制を整えた上で公式に利用ツールとルールを定めてしまうことで、非管理ツール利用のデメリットを大きくすることも一つの方法です。

しかし前回の話の通り、利用者にとって「繋がりやすく」「使いやすい」ものでなければ導入や管理にかかるコストが無駄になってしまいます。
「チャットツールを何のために使うのか」を明確にして、その必要性を検討するところから考えてみたいと思います。

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チャットツールを何に使うのか

利用シーンを分類する

企業活動において、コミュニケーションを行う相手は大きく3つに分類されます。サポートデスク等で利用されているチャットbotなどもありますが、今回は「人と人のコミュニケーション」に限定して考えたいと思います。

企業における人対人のコミュニケーションの相手
・社内のメンバー
・取引先など他の企業
・個人顧客(コンシューマー)

BtoCビジネスを行わない企業の場合、個人顧客との双方向コミュニケーションの機会は稀かもしれません。

社内コミュニケーションツールとして

チャットツールの活用が最も期待されている領域が社内コミュニケーションです。
「チャットツールのビジネス利用」が流行しはじめたのも、Skypeなどのオープンチャットではなく企業内などに閉じたクローズドチャットを手軽で安全に利用できるようになったことが一因です。

電話は相手のタイミングを考慮せずに相手の時間を奪う恐れがあります。
しかし二言三言で済むような話をわざわざメールで書くのは面倒だし、他のメールに埋もれてなかなか返事がもらえないかもしれません。
それを防ぐために「さっきメールした件なのですが」という電話を入れるという本末転倒な行動でさらに時間が奪われていきます。

こうした不毛なコミュニケーションコストを削減することが期待されるのがチャットツールです。

ただし利用者と利用シーンを考えないと十分な利便性は得ることができません。

例えば基本的には自分のデスクで仕事をしていて外出が少ない職種であれば、PC上のみでやりとりができるツールで十分事足ります。
しかし外出が多い営業職や現場作業者などは、常時PCが見られるわけではないので携帯から使える、あるいは通知されるツールであることが求められます。
さらにPCと携帯の両方から操作できて、どちらから使用しても双方の過去の履歴見える必要があるという使い方も想定できます。

社内利用であればSkype for businessやHangouts Chat(GSuite)、kintoneなどのグループウェアや社内向け統合サービスの一部の機能を利用することが想定されます。
これらのツールは社外接続ができないか一定の制限をかけることができるため、社内に閉じた利用を行うことができます。
またグループウェアとして既にOffice365やGSuiteを利用していれば、新たなコストを発生させずに利用が開始できます。

ここからは具体的にいくつかのツールを紹介していきたいと思います。
紹介するツールの中でHangouts Chat以外の2つは管理者の許可によって外部ユーザーとのコミュニケーションに利用することも可能です。
Hangouts Chatも今後外部コミュニケーション機能を拡充する予定とのことです。

Hangouts Chat

Hangouts Chatは通常のハングアウトをGSuite用に拡張させたものです。
通常のハングアウトとは以下のような機能で違いがあります。

・チャットルーム機能:ハングアウトのグループチャットと違い、ユーザーの追加/削除やチャットルーム内で会話のスレッド化ができます。
・botの利用:botを利用することでGoogleカレンダーやGoogleドライブなどをチャットから直接呼び出したり編集することができます。

ちなみに通常のハングアウトとの互換性もあります。

ハングアウトと同様にスマホアプリもあり、当然会話履歴はGoogleクラウド上に保管されているのでどこから接続しても過去の会話は閲覧できます。

既にGSuiteを利用している、社有携帯でAndroidスマートフォンを利用している場合はうってつけのツールです。

ちなみに両方の条件を満たしている弊社では、未だ利用が進んでいません(涙)。
理由は色々ありますが、スマートフォン移行から日が浅いこと、携帯を内線化しているので短い要件や即応が必要な事項は電話を使う習慣がついていること、そもそもハングアウトを知らないことが挙げられます(号泣)。

ハングアウトを知ってもらうためも兼ねて、最近ようやく遠隔地の面談をハングアウトで行うことを公式手順にしてもらいました。

啓蒙活動は道半ばですが、最終的には情シスへの問い合わせをHangouts Chatに集約したいと目論んでいます。電話が鳴りすぎだし、メールも埋もれるので。

Skype for business

言わずと知れたSkypeの社内利用版です。Office365であればBusiness Premium以上のバージョンで標準利用できますし、Skype for business単独での導入も可能です。
通常のSkypeの操作性で社内利用に限定した使い方が可能で、通信の暗号化や多要素認証などセキュリティ面が充実しています。
当然ファイル共有もできますし、ビデオチャット、通話、テキストチャット全てを1つのツールで包括しています。

尚、Hangouts Chatの場合ビデオチャットはHangouts Meetと連動する必要があります。通常のハングアウトが両方できるのに対してやや利便性が劣ります。
ただしHangouts MeetはChromeboxという強力なテレビ会議デバイスと対応しており、多拠点接続で高画質なテレビ会議を可能にします。

Outlookと連携すれば会話履歴はOutlookに保存されるのでメールとの一元管理が可能で、Skype for Business OnlineとExchange Onlineを組み合わせればオンラインに履歴保存することができます。Office365 Business Premium以上であればどちらも標準提供されています。またスマホアプリもあるためモバイルからの利用も可能です。

既にOffice365 Business Premium以上を利用していればほぼ一択といっていいツールです。
操作性に慣れている人もある程度見込めるSkypeをセキュアにビジネス利用できるのが最大のメリットではないでしょうか。

ちなみにLyncの頃から利用していた前職の職場では、Web会議以外での利用がなかなか進みませんでした(汗)。

思いついた理由を列挙してみます。
決して前職の職場を悪く言うつもりは無いのですが、そういう風にしか見えないかもしれません…。

・歪な程のエビデンス重視で過去メールを全て保存するようなメール文化(それ自体がセキュリティリスクであることは軽視されていた)のため、テキストベースのコミュニケーションは全部メール
・エンジニアなのに、いやエンジニアだからこその「枯れた技術」への信奉
・一般企業を凌駕しすぎて必要な効率化の妨げになるほどのセキュリティ意識の高さのため、既存ツール以外でのコミュニケーション方法に対して過剰なほどにリスクを取らない
・社内コミュニケーション等の内部事務を雑事として軽視して改善しようとしない風潮

それでも若手の一部や志のある有志の中ではある程度使われていました。
それすらも旧態依然とした人たちの「在籍しているから電話してもいい」確認に使われることに嫌気がさしてしまい、在籍表示を常に「退席中」にするような本末転倒が横行していました。

IT企業がどこも最新テクノロジーに敏感で改善意識に富んでいるというわけではないのです。

LINE WORKS

「ビジネスで使えるLINE」として提供されているLINEのビジネス利用サービスです。
ベースがLINEなのでモバイル利用がベースですが、PCアプリも提供されています。
管理機能も一通り備えており、ファイル共有ができるだけではなくスケジュールやオンラインストレージフォルダがあるなどグループウェア的な機能も有しています。

メリットは言うまでもなく「LINEであること」。前回も話しましたが、チャットツール一般として見た時に国内最大のシェアがあり、その操作性に迷う人はほとんどいないかもしれません。
チャットツールのシャドーITもそのほとんどはLINEでしょう。「LINEを使うな」と言っても使うのであれば、オフィシャルツールとしてLINE WORKSを導入することは一定の効果があると思います。

利用者の大多数がモバイル利用のほうが効率的な営業職や現場作業者が多い企業であれば向いているかもしれません。

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中締め

今回は社内コミュニケーションについてといくつかのツールの紹介になりました。
BtoBやBtoCについては次回とさせてもらいます。

昨今話題のSlackやチャットワークは「BtoB」の括りで紹介します。
もちろん社内利用も可能ですが、利用範囲が会社単位というより「メンバー」という括りのため、社外も含めたプロジェクト単位での利用が容易という点を考慮しました。

ビジネスチャット考察 バックナンバー
何故チャットツールを使うのか
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