数値的根拠のある経営のためのデータ活用 | データ活用とBI導入の下準備

数値的根拠のある経営のためのデータ活用 | データ活用とBI導入の下準備

イントロダクション

企業活動へのデータ活用が注目されて久しいですが、どれくらい利活用は進んでいるでしょうか。

受注活動のパイプライン分析、購買情報からのトレンド分析等、これまでKKD(経験、勘、度胸)で行ってきた営業活動、経営運営を数値的な根拠のあるものにして、予算管理の精度を高め、管理会計への移行を図る、という基幹系パッケージの売り文句みたいな綺麗な状態になっているでしょうか。
実際は各システムから出力したCSVをExcelでこねくりまわして、報告用の資料を作成するのに多大な労力を費やし、分析までたどり着けていないのではないでしょうか。

情シス的には「あのデータを出してほしい」「このデータを整理してほしい」というようなライン部門のオーダーで報告書作成支援みたいなことに手を取られているのではないでしょうか。

こうしたデータ活用はその技術的なハードルから情シスの関与が必要になることが多いです。しかし分析したい観点は主にライン部門側でしかわからないため、情報や意図が食い違う可能性があります。

今回はデータ活用をはじめるにあたっての下準備として、以下のような話をしていきたいと思います。BIツールを絡めた話になりますが、BIツールを使うかどうかに関わらず、データ活用に必要な観点の話になります。

1.データ活用の事例と分析に必要なデータについて
2.分析可能なデータ=データの正規化について
3.データ収集、蓄積のルール化について
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データの活用事例と分析に必要なデータについて

例1:受注活動のパイプライン分析

私は社会に出て一次的な営業活動をしたことが無いのですが(営業サポートとしてパッケージソフトのデモをしたことは何度もありますが)、名簿(リスト)を元にしらみ潰しに訪問したり電話をかけたりイベントで集客かけたりと、受注のために営業さんたちは日々汗水流してがんばっていらっしゃいます。

しかしどれだけがんばってもお客様から100%受注がもらえるわけではありません。受注を増やすため、とにかく数多くのお客さんにまわって母数を増やしたり、営業トークを磨いて受注率を上げたりと、各自の努力も必要ですが、会社としてもっと組織的に受注を増やすための取り組みも必要になります。

受注予算の達成状況を貼り出して、個々を競わせることで受注を増やすような古典的なやり方もありますが、近代的な営業活動では、ターゲットとなる客=見込み客が受注に至るまでをステージで分けて管理する「パイプライン管理」によって受注率を高める方法が取られています。

まず顧客になりうる人や企業の情報を収集して、見込み客とします。
B to Cであれば、商品にもよりますが、特定の地域に住んでいる人や新たに済むようになった人、イベントやキャンペーンでアンケートに回答してくれた人、ホームページからの会員登録やメルマガ登録をしてくれた人が、「自社の製品に興味を持っていそうな個人」=見込み客になります。
B to Bであれば、自社の製品と同じカテゴリの製品を利用している企業=見込み客ということになります。

まずは見込み客に対してアプローチして、製品の紹介を行います。興味を持ってくれる人もいれば、そうでない人もいますし、よくわからない人もいます。
興味を持ってくれた人を次のステージへ「昇格」させ、興味が無かった人は「失注」扱いとします。
昇格した人に対しては見積もりを提示したり、プレゼンを行い、同様に次のステージへ進むかどうかで「昇格」「失注」を区分し、最終的に受注に至るまでを管理します。

最初の見込み客の数と受注した数を比較すると、受注率はすぐに出せます。
パイプライン管理で重要なのは、その先です。

まず着目するのは各フェーズで「昇格」した割合です。これを「歩留」といいます。
見込み客から製品紹介した時点で、どれくらいの客が残るのか。逆に言えばどれくらいの割合で失注するのか。見積もり提示時、プレゼン時等、フェーズ毎でどれくらい失注していっているのか。
これがわかると改善しなければいけないポイントが見えてきます。

例えば製品紹介時点で歩留がガクンと下がるけど、そこで昇格した人はほぼ受注まで繋がるのであれば、製品に興味を持ってくれさえすれば受注は改善する可能性があり、営業ツールとして製品紹介コンテンツ(チラシ、カタログ、ホームページ、動画等)を充実させる動きに繋がります。見積もり時点で歩留が下がるのであれば、販売価格を見直せば歩留が上がる=受注まで繋がる可能性が高まります。

これらの情報をより確実なものにするために必要なのが、受注時・失注時の「理由」の聞き取りです。何故購入に至ったのか、何故購入しなかったのかをある程度のカテゴリで分類しておくことで、情報不足なのか価格なのかそもそも見込み客のターゲット選定誤りなのかより詳細に分析することができます。ターゲット選定自体に問題がある場合は、そもそもの見込み客の集め方を見直さなければいけません。

B to Cでのこうした活動は日常生活においてもよく見ることがあるかと思います。
会員登録するとポイントや商品券がもらえるECサイトであったり、春にパンのお祭りをやってお皿をくれる会社であったり、基本的には「見込み客」を集めるための仕組みと捉えて良いと思います。登録や応募後にメールやDMが届くのが「製品紹介」です。

そして企業側でこれらの顧客情報・受注活動をトレースするための仕組みがCRM(CustomerRelationshipManagement:顧客関係性マネジメント)の一つの機能なのです。

CRMで見込み客から受注までのステータスを管理することで、こうしたパイプライン管理の情報を抽出・分析できるようになる=データ分析ができるようになります。

パイプライン分析に必要なデータ

パイプライン分析に必要なデータは最低限以下のような情報になります。

・顧客情報(氏名やアポイント方法等)
・ステージ情報(見込み客~受注/失注まで、どのランクにいるか)
・受注/失注事由(何故購入したのか/しなかったのか)

管理開始日、受注/失注日、担当営業、アクティビティ情報(訪問情報)、競合情報等があると、CRMとしてもより子細な管理・分析が行えます。

例2:購買情報からのトレンド分析

商社でなかったとしても、企業活動において他社製品を購入して自社サービスの一部として販売することはあります。
そうなると製品の注文・受領・支払といった購買業務が発生するはずです。

購買情報には自社内のみで使用する備品や消耗品もあると思いますが、そうしたものと販売するものとでは所謂予算科目が異なるので、区分けすることは容易にできるはずです。

販売するものについて、どういった商品を多く仕入れているのか、どれくらいの頻度で仕入れているのか、仕入れ価格はどうなっているのかを分析することで、一括発注による仕入れ価格の低減や、販売メニューの絞り込みを行うことができるようになります。

購買情報からのトレンド分析に必要なデータ

受発注のデータは財務会計システムに必ず入っていると思いますが、分析をしようとすると重要になるのは品目の管理です。
注文する品目を分析可能なコードとしてマスタ管理する必要があり、できるだけ全社で統一したコードを利用する必要があります。
あるいは在庫管理システムとの連動のほうが効率的な場合もあるかもしれません。

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中締め

適切な営業活動への投資=売上増、購買の適正化=利益増

こうした活動は、企業活動そのものに大きく貢献します。
タイトルの通り、売上や利益に直結する活動です。
その活動主体は営業を含めたライン部門や、購買管理を行うスタッフ部門等全社に及ぶ大規模な活動です。
正直、1情シスの権限でこれらを決定したり推進するのはかなり困難です。

しかしライン部門や経営層から、「こういうことがやりたい」という話を持ち込まれるのは情シスです。「それなんですか?」とならないよう準備しておくことも、情シスがデータ活用に貢献するための一つの準備になります。

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