システム導入計画を作ろう | システム導入のエッセンス(1)

システム導入計画を作ろう | システム導入のエッセンス(1)

イントロダクション

これまでRFIやRFPからはじまり、非機能要件をメインにお話してきた「システム導入検討のエッセンス」を続けてきました。
内容的に非機能要件に偏っていたので、機能要件についても話したほうがよいだろうと思っていました。しかしテーマを「機能要件」としてしまうと、対象の業務やシステムの内容によって、全然参考にならない話になってしまう可能性もあります。
どうすればいいか考えた結果、発注先確定~プロジェクト開始までに作成する「プロジェクト計画書」の側から話をしてみようと思います。

「プロジェクト計画書」は発注側が単独で作るというより、受注ベンダーとの取り決めを記載するドキュメントです。ベンダー側が主体で作成することもあるかと思いますが、その主旨を理解することでシステム導入プロジェクトの勘所を押さえると共に、逆引きでRFPに記載すべき内容をお話していきたいと思います。

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システム導入計画を作ろう

プロジェクト計画書=プロジェクトの設計図

システム導入に限ったことではないですが、「プロジェクト」と呼ばれるものには大なり小なり計画が存在します。
プロジェクトはある目的のために立ち上げられ、目的が達成されることで終了すると終了するという特徴があります。恒常的、継続的に行われて明確な終わりが無い仕事と違い、「完成」を目指すために存在します。

システム構築と工事・建築はその観点で近しいものがあります。
例えば「家を建てる」というプロジェクトを例に考えます。

家を建てるために考えなければいけないことはいくつもあります。

方法論だけ考えても、どの場所に、どれくらいの工期・予算・工法で、間取り・インテリア・エクステリアはどうするかなどがあります。
これらを検討するために、設計図を書き、設計図から必要な部材と工期と人工を見積もり、合意できたら部材と大工を調達してからようやく家を建て始めます。

プロジェクト計画書はこうした設計図や見積もりに相当するものになります。

方法論だけでは不十分

しかし方法論の前に考えなければいけないことがあります。
引き続き「家を建てる」例で考えると、「何のために家を建てるのか」が重要です。

新婚の若夫婦がこれから生まれる子供たちと暮らすための家かもしれません。
老夫婦が終の棲家として過ごすための家かもしれません。
富裕層の別荘かもしれないし、両親を呼び寄せて二世帯住むための家かもしれません。

それぞれの目的によって、必要な機能・広さや間取り・立地は異なってきます。

これから子供が成長する時期を迎えるのであれば、子供部屋や収納のためのスペースを確保する必要があります。ファミリーカーを保有することを考えると駐車スペースも確保したいところです。夫婦で1台ずつ車を持つ予定があればさらに必要になります。
周辺の学校事情や治安などの立地も気になります。買い物や公共機関、病院などの条件に加え、企業にお勤めであれば会社への通勤の利便性も気になります。

二世帯になればそれぞれの生活スペースを分けることを考える必要もあります。高齢の方がいらっしゃるのであればバリアフリーも要素に入ります。
別荘・別宅であれば日常的に使用するわけではないので不要なものもあれば、逆にこだわりを持って作りたい個所も発生するかもしれません。

システムも同じです。企業規模、人員構成、成長させたい領域などの経営計画はそれぞれの企業によって異なります。「なんのためにシステムを導入するのか」という問いに、例えば「バックオフィス業務を効率化したい」「社内の情報共有をスムーズにしたい」「顧客管理を強化したい」という直接的な目的の前の部分、「企業としてどこを成長させたいのか、そのために解決しなければいけない課題は何か」というのが「システムを導入する目的」であり、その目的によって建てる家=導入するシステムに求めるものは自ずと変わってきます。

目的を達成するための方法論であることを逸すると、使い勝手が悪かったり、身の丈に合わない家=システムになってしまいます。

身の丈にあったシステムとは

家を建てるというのは施主にとってほぼ一生一度の大事業です。作ってみたのはいいけど「思っていたのと違う」ということにならないために、計画段階で何度も打ち合わせを重ね
ます。

システム導入も企業にとって「家を建てる」くらいの事業である場合があります。もちろん建売の家を買って住む=既製品のパッケージを導入して運用を合わせる、という選択肢もありますし、規模によってはそのほうがハンドリングが良いこともあります。
何なら賃貸で家を借りて家賃を払う=クラウドサービスにサブスクリプションを支払うことだって可能ですし、最近はそちらのほうが流行してきています。

システムの場合、こだわりの一戸建て=フルスクラッチの業務システムを作ったとしても、死ぬまで住める=永遠に使い続けられるわけではありません。
経営内容や規模、外部環境によって柔軟な対応が必要になりますし、システム側もハードやプラットフォームの進化に追いつけなくなるリスクがあります。
生活環境に合わせて住み替えができる賃貸ならば、より広い部屋、便利な立地へ住み替えたり、家賃が安いところに移ったりすることが容易です。

しかしある程度の規模、例えば家族の人数も多くなって生活パターンも多様化してくると、どうしても既存の物件では住みにくくなり、「自分専用」に作られた家が欲しくなることがあります。
企業の場合も、事業展開が多様化したり、社員数が増えて管理が煩雑になったり組織的な統制にかける労力が大きくなってきた時に、既製品のソフトやサービスでは適合しないことが考えられます。

だからといっていきなり5LDKの庭付き一戸建てを注文住宅で建てられるかというと、当然収入との兼ね合いは考えなければいけません。
システムにかけられる費用も同じです。どれだけ得られる効果が大きいシステムであったとしても、運用するだけでキャッシュフローや収支に影響がでるようなシステムは導入できません。

家を建てるのが単一の要素だけで決めることができないように、システム導入も様々な要素を検討しなければいけません。だから導入検討で躓いたり、導入後にうまく効果が出なかったりするのです。

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まとめ

企業のライフステージを長期的に検討する

家を建てるのも、いきなり「よし、家建てよう」とはならないと思います。

何年後に家を建てる、どういう家にしたいからこれくらい資金が必要なのでそのために積立や住宅財形などを活用する。
子供の年齢を考えて、家を建ててから何年したらどこをリフォームする。子供たちが独立したらここに手を入れる。
最終的に子供たちに家を引き継ぐのであれば、子供たちが住みやすいように意見を取り入れたリフォームをする。処分するのであれば終の棲家を考える。

システム導入もこれらと同じです。いきあたりばったりでは整合が取れなくなり利便性が低下したり、十分な効果が得られなくなります。
あまり長すぎる経営展望は変化する可能性がありますが、それでも一旦長期的なプランを考え、それを中期経営計画のスパンに落とし込む、というような中長期的なシステム導入計画があれば、導入検討における目的のブレも少なくなります。

経営要素が多分に含まれるため、情シスだけで考えられることではないかもしれませんが、それが経営層に提案できること自体が情シスの存在価値に繋がるのではないかと思います。
直近の問題ではないので後回しにされがちですが、半期に一回、年に一回くらいはこうした計画を考えて共有するとよいでしょう。

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