物理的なシステム環境について<システム環境・エコ> | システム導入検討のエッセンス(12)

物理的なシステム環境について<システム環境・エコ> | システム導入検討のエッセンス(12)

イントロダクション

RFI・RFPについての第12回、非機能要件詳細についての第9回目になります。
今回からのテーマは「システム環境・エコ」についてです。

システム導入において、ライセンス料やSI費、保守費等はクローズアップされますが、設置場所や設置費用、消費電力や空調等の要素は割と最後に登場します。
しかし動作するシステムがいかにデジタルなものであっても、それを動かすためのコンピューターは物理的に存在します。サーバが設置できる環境に制約がある場合、そこまで検討してきたシステムが導入できないこともありえます。クラウドサービスを選択することでインフラ要素を除外できたように見えて、データセンタの設置場所やセキュリティの確保状況といった物理的な要因から完全に抜け出せるとは限りません。

クラウド・仮想化が主流になった今だからこそ、改めて見落としの無いように確認していきたいと思います。

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システム環境について

コンピュータが正しく動作するために必要なこと

プログラムは基本的に何だかの機械の上で実行されます。ビジネス利用のシステムにおいては、パソコンやサーバのようなコンピュータであることが多いです。
インターネットからサービスのみを利用するSaaSのような形式であっても、ネットワークの先には必ずコンピュータが存在します。

システムが正しく動くためにはプログラムが正しく動かなければならず、さらに前提としてコンピュータが正しく動かなければいけません。
プログラムが正しく動くかどうかは、開発/テストにおける品質管理プロセスで管理されます。コンピュータ自身については非機能要件の可用性要件においてバックアップや冗長化により確実な動作を担保します。
しかしそのもう一つ前のところ、「電気製品としてのコンピューターを正しく動かす」ために必要なのが、システム環境要件です。

設置スペース、電源、重量

オンプレミス導入の場合、サーバは社内に存在します。それではサーバが正しく動くために必要なことは何でしょうか。
まずは設置する場所、設置スペースになります。小規模なタワー型サーバやデスクトップパソコン程度であれば、執務室内でもある程度大丈夫かもしれませんが、大型のタワー型サーバやラックマウント型サーバとなると、専用スペース、所謂マシン室が必要になります。
ラックマウント型サーバはサーバラックを設置することで設置スペースを省力化することができます。例えばタワー型サーバ10台を設置しようと思うとかなりのスペースが必要ですが、サーバラックであれば畳半畳くらいの床面積で設置することが可能です。

次に問題になるのは電源です。サーバが正しく動作するためには必要な電圧を確保し続けないといけません。家庭用コンセントから電源タップでタコ足配線、なんてやってたらタップが焼き切れるかもしれません。設置場所のブレーカーの電圧がマシンの稼働に耐えられるか確認が必要になります。また瞬電の対応としてUPS(無停電電源装置)の設置も検討が必要でしょう。

UPSときたら重量の話をしなければいけません。重量を気にしなければいけないのはUPSだけではないんですが、何せUPSはすこぶる重いので…。
サーバーラックはサーバやUPS、その他装置を縦に積み重ねていくので、接地面には相当の荷重がかかります。木造フローリングなんかに乗せたら床が抜けます。設置場所には耐荷重設計が必要ですし、新規に機器を追加する時も設計値の中で納まるよう調整が必要です。

「そんな大規模システム入れないし!」という場合でも、オンプレであれば設置スペースと電源については考えておくようにしましょう。

温度、湿度

パソコンもサーバも、動作すると熱を発します。パソコンでもファンが常に回っています。サーバは言わずもがなです。そしてコンピュータたちは自分の発する熱が高すぎてしばしば壊れます。

マシン室と言われるところに入ったことがある方はわかるかもしれませんが、寒すぎるくらいに冷房が効いていることが多いです。ちなみにあの冷房が切れるとどうなるか、一度だけ体験したことがあります。日差しが無いのに真夏の日向にいるくらいの温度でした。
これも設置台数によって変わります。データセンターでは吸気側に冷たい空気を供給し(コールドアイル)、排気側から温まった空気を集める(ホットアイル)ように設計されています。

電気製品ですから湿度も当然天敵です。結露でショートするなんてことも起こりえます。
ちなみにとあるユーザー先で、サーバ室に設置したクーラーから排水が逆流して、クーラー直下のサーバーに滴ってきたという事例に遭遇したことがあります。幸い故障には至らなかったのですが、かといって修理するまでクーラーを止めておくわけにもいかないので、昔の雨漏りの時のようにバケツが設置されていました。

ちゃんとしたデータセンタならこんなことはまず起こりえませんが、IaaS等の場合データセンタを見学させてもらえることもあるので、不安であれば乗り込んで確認してみても良いでしょう(見学させてくれるようなところはまず安全だとは思うのですが)。

耐震、免震

バックアップの話をした際にBCPやディザスタリカバリの話をしましたが、設置している建物自体が壊滅的な被害にあわなくても、サーバラックやサーバが倒れて故障することは考えられます。そうならないためにデータセンタ自体やラック、サーバ自体に耐震/免震の対策が行われているかもシステム環境として重要なポイントです。

ちなみにとあるオフィス兼データセンタでは地下にジェットエンジンがあって、大規模停電があっても3日間は全サーバを動作させるだけの電気を作ることができるそうです。
そこまでは大げさとしても、ラックが倒れないような工夫や、瞬電対策のUPS設置くらいは必要です。データセンターの場合、実際にどのような対策がとられているか確認してみても良いでしょう。

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中締め

クラウドだから気にしない、ではダメ

これらの要件をAWSやAzureのようなパブリッククラウドに逐一確認はしないと思います。しかし提供されている情報や保証されている範囲を確認することで、本来の目的を達成することができます。本来の目的とは、「コンピュータが正しく動くこと」です。

例えば複数データセンタで多重化されているというのは、災害対策としても有効な対策ですし、「(複数のコンピュータの内、どれかの)コンピューターが正しく動作する」ことを保証してくれています。

非機能要件の多くを自社内で対応しなくてもよくなるのがクラウドサービスの大きなメリットですが、自社が対応しなくてもよくなるだけであって、どこかで誰かが対応しています。その対応品質に問題が無いかという観点をサービス選定時に頭の片隅にでも入れておくようにしましょう。あまりに安いサービスは、これらが疎かにされているかもしれません。


RFI・RFP/プロジェクト管理関連の記事を纏めています。

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