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情シスになる前の状況のご紹介 | ひとり情シス事情
ー転職前の状況やSEと情シスの違い的な話
イントロダクション
前回は転職前の状況やSEと情シスの違い的なお話をしてきました。
技術や製品関係の情報は無く、まとめるほどの事は無いのでまとめは割愛します。
今回は「情シス」の位置づけと「ひとり情シス」の状況を中心にお話します。
転職後の状況
前回転職前の状況をお話ししたので、転職後どのように変化したかもお話しておきます。
会社から出たら、空が明るかった(※朝ではない)
まず一番の変化は勤務状況です。簡潔に言うと、残業時間は激減しました。
退社して会社を出たらまだ日が沈んでいなかったことが転職を一番実感した瞬間でした。
かといって情シスが暇という意味ではありません。
SEを基準にしてしまえば世の中の大体の職種は暇扱いになりかねません。
一番大きいのは、「大きなプロジェクトは常時動いていない」ことでしょう。
SEの時はとにかく導入現場ばかりにいましたが、新規の大規模なIT投資を切れ目なく行う企業・団体はまずありません。業務インパクトが大きく、常に納期に追われるようなプロジェクトに遭遇することはむしろ稀です。
一応休日出勤もある
システムを止められるのは夜間か休日です。
SEもそうですが、システムを止められる時=メンテナンスができる時です。
社内サーバの再起動だったり、ネットワーク機器の交換だったりは基本営業時間外です。
業者に来てもらって作業する時の立会いもあります。
今のところ突発的なトラブルで休日に呼び出されたことはまだありませんが、「そういう時のために」ということで入社と同時にビルの開錠ができるセキュリティカードは渡されています。
一人だからこそ自律的に
残業や休出も含めたスケジュールは自律的にコントロールが可能です。
これは「ひとり情シス」ならではかもしれませんが、一人ですから管理も一人です。
納期が無いわけではありませんが、優先度や重要性からスケジュールを自身でコントロールできます。
相手あってのことなので調整は必要ですが、一人でできる業務量には限りがあります。
計画作業は比較的余裕を持って組んでおかなければいけません。
勝手気ままにやっていいのではなく、あくまで「自律的なコントロール」です。
適当なことをやっていればしっぺ返しを受けます。
情シス=最弱組織?
情シスは不要?
以前の記事でも書きましたが、大多数の情シスは間接部門です。
SEだった頃は直接部門なのでやった仕事がお金になりましたが、情シスは基本的に直接的な利益は一銭も生み出しません。
それなのにあれをやりなさいとか、あれはやってはいけませんとか社内に依頼や指示を出さなければいけません。
同じ間接部門でも総務・人事系は「人事権」という錦の御旗がありますし、仲良くしておけば色々融通してもらいやすくなるメリットがあります。
情シスと仲良くしてもパソコンのスペック上げてもらうくらいしかメリットはありません。
多くの社員にとって情シスは「何をやってるかよくわからないし、あれダメこれダメしか言わないし、金使うだけだし、俺たちにとってメリット無いよな」くらいの感覚かもしれません。特に経営層には必要性を理解してもらわないと、事業整理の対象にされてしまうかもしれません。
がんばってもなかなか報われない?
情シスの仕事が評価される機会は非常に少ないです。
転職したての頃、情報システムに明るい役員からこんなことを言われました。
「『ネットワークを安定稼働させてくれてありがとう』なんて言われることはまずないからね。
なかなか報われないけど腐らずがんばってくれ。」
にもかかわらずネットワーク障害が発生すると「業務に支障が出る!早く復旧させろ!」となります。
利益は生まない、権限は無い、がんばっても褒められないけど障害がおこると怒られる。
組織的な地位は恐らく最弱かもしれません。
適当なことなんてやってたら、誰も守ってくれなくなります。
全ての情シスがそうではないと思いますが、組織力学好きの人には不向きかもしれません。
私の場合、SE時代のユーザーとの接し方と大差は無いと感じているので全く気になっていません。
むしろその中でどうやって信頼を得て、業務をスムーズに進めていけるかを考えるのが好きな方です。
それにSEってMじゃなきゃ務まらないじゃないですか。
…「俺は違う!」という方もいらっしゃると思うのでこの辺にしておきます。
社内問い合わせ対応について
一番多い仕事は問い合わせ対応
計画作業以外で発生するのが社内問い合わせ対応です。
以前の記事でも何度かお話していますが、問い合わされる内容は千差万別、玉石混合。
突発的な作業なので、計画作業が遅延しないようにしないといけませんが何せ件数が多い。
ひとり情シスであれば、何百人対1人ですから1%からの問い合わせでも日に2~3件あります。
そのためにも計画作業のスケジュールには余裕を持たせておく必要があります。
大事なのは姿勢
例えばネットワークが遅いという問い合わせが入ります。
社内のネットワークトラフィックやインターネット回線の負荷状況を調べたりもしますが、私はとりあえず現場に向かいます。
遅延が発生しているのが個別の端末だけなのか、セグメント単位なのか、全社的なものなのか切り分けたり、いつから発生しているものなのか聞き取りをします。
「とりあえず現場に」はSE時代から賛否が分かれましたが、私はどうしても現場に行ってしまいます。
一番の理由は「対応している姿勢を見せることの大切さ」です。
姿勢だけでは意味が無いのですが、姿勢も大切なのです。
「問題が発生しているのに対応してくれない」という不満は信頼の低下に繋がります。
対応していないわけではないけれど、対応している姿が見えないと不安になります。
「ちゃんと対応していますよ」という姿を見せることが、一先ずの安心感になるのです。
もちろん遠隔地の事務所の場合、簡単に現場に行けません。
その場合でも逐次状況を報告したり解決後の経過を確認することが「姿勢を見せる」ことになります。
情シスはベンダーに動いてもらうための司令塔
原因がわかれば対処したり業者に連絡したりします。
わからない場合は発生している問題の程度によって対応が分かれます。
比較的軽度な場合は経過観察ですし、代替手段の提案で済む場合もあります。
重度な場合どうするか。自力で解決できることとそうでないことがあります。
情シスはベンダーではないので、必ず自力で解決できる必要はありません。
業者に連絡して解決方法を聞いたり、来てもらったりします。
ここで重要なのは業者との連携です。
日頃付き合いがほとんどないのにいきなり連絡してもうまく連携できなかったりします。
こちらの力量を軽く見られて「どうせわからないだろうから」と適当な対応をされるかもしれません。
業務が忙しいからといって挨拶程度の訪問を邪険に扱ったりせずに関係を維持すること、必要な知識を身に着けて「わかってるんだからな」ということを知らしめることも必要です。
ベタベタに親密になる必要もありませんし、ゴマをする必要もありません。
逆に業者だからといって威圧的な態度を取り続けても良い関係は築けません。
ビジネスにおける信頼と対等な関係を維持することが、緊急時に効果を発揮します。
社内では様々なシステムが稼働しており、様々な業者が出入りします。
それらをうまくコントロールすることも、情シスの仕事の一つなのです。
ひとり情シスが考えるべき課題
ひとり情シス=代わりはいない
計画作業をやりながら、問い合わせ対応もして、業者とのコミュニケーションもとる。
「自律的にコントロール」しないとスケジュールはひけません。
そしてスケジュールを引いた結果、日々なんだかの予定が入ってきます。
自分でひいたスケジュールですから「自律的に」調整することもできますが、業者の訪問や会議の日程、契約更新の期限等色々考えると、予定をずらすのが面倒になります。
休暇を取っても携帯に電話がかかってきます。私の会社の場合携帯電話に内線番号を付与しているので、厳密には内線がかかってきます。
同じ部署にいるわけではないので、出社状況は把握されていません。
自ずと休暇がとりづらくなります。
「休むな」と言われているわけではなく、「休んでもどうせ連絡くるし、予定調整するの面倒くさいから、ちょっと体調悪いけどとりあえず出とくか」みたいな感じです。
代わりにやってくれる人はいないのです。
キャリアビジョンは自分で描く
私は転職で情シスになったので、会社のコア事業のノウハウは全くありません。
他の部署に異動になっても新卒とおなじくらいにしか使えないでしょう。
この先働き続けるのであればずっと担当のままというわけにもいきません。
直接部門はキャリアコースが明確になっていることが多いですし、間接部門でも総務・人事系は管理者へのルートがあります。ひとり情シスの場合、既にひとり管理者ですから役職が上がってもやることは同じになりかねません。
どのようにステップアップするかは個々の環境によって様々です。
目的・目標を決めておかないと、毎日同じことの繰り返しだけになります。
情シスを組織化するのであればそのメリットを考え、実行する。
総務・人事系の管理職になるのであればその業務を覚える。
転職するのであれば対外的に通用するスキルを身に着ける。
己の身の振り方もきちんと考えておかなければいけません。
あとがき
それでもやっぱりSEよりは業務量が少ない
大変そうな話ばかり並べましたが、それでもやっぱりSEの頃のほうが大変でした。
今は問い合わせが片付けば定時で帰れることも多いし、深夜休出も少ないので家族と過ごす時間も増えました。
給与処遇面については入る企業や採用条件によって変わるので一概には言えません。
それでもお金で買えない時間を手に入れることはできました。
業務内容は大きく変わりましたが、引き続きIT関係の仕事をすることができていますし、今まで知らなかった技術やサービスに触れることに楽しさもあります。
IT関連の素地と新たな技術への好奇心があれば、SEからの転職にうってつけではないでしょうか。
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