SIer出身者はフリーランスより情シスに向いていると思う | ひとり情シス事情




Twitterのタイムラインを眺めているとSIerを卑下する風潮があるように感じています。
私自身も前職はバリバリのSIerでSEだった人間なのですが、賛同6割否定4割くらいの感覚です。

例えばこんなかんじです。

日本的SIerのビジネス形態が今後斜陽化する。

⇒そう思う。

SIerで仕事していても技術者としてのスキルは伸びない

⇒「技術者」と一纏めにするのは無理がある。

PGになりたいなら難しいが、結局本人のやる気と行動力次第。
ただしWeb系とエンタープライズ系は別物。
同価格のスポーツカーと10トントラックを「どっちも同じ値段の車だけど、どっちがいい?」というようなもの。免許も用途も違う。
ちなみに私は元エンプラ系SEです。どんとこい10トントラック。

まだSIerで人生消耗してるの?

⇒大きなお世話。人の人生の心配する前に自分の人生の心配してください。

 

このままならSIerというビジネスモデルは先細りするだろうけど、そこで働いている人のスキルや生き方なんて本人次第。
画一的に論じる方がどうかしている、といったところです。
とりあえず実際にSIerで働いていた経験と情シスになって自分が経験したこと等から、やんわりと「フリーランスこそ至高」に反論してみようかと思います。

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SIerが何故ここまで嫌われているのか

クラウド時代に乗り遅れた「負け組」叩き?

とりあえずSIerが何故ここまで嫌われているか、私なりに考察してみました。

10年以上SIerで勤務していて、インフラ、コーディング、プロマネ、コンサルなど各分野で凄腕と呼べる人とも出会いました。
余計な心配をされているような摩耗具合で疲弊している人も、「なんでこの会社入ったの?」みたいなスキルレベルの人も確かにいました。

それを組織力で束ねて大きく回していくところがSIerの強みであり、逆に固定費(=人件費)のために目先の仕事に食いついて中長期的な展望が欠落しやすかったり、ハンドリングの悪いという欠点にもなります。

その結果固定費の算段の立てやすい人月商売が染みついてしまい、新たなプロダクトという予算年度の売上にも利益にも貢献しないところには人が裂けず、「クラウド?何それおいしいの?」で10年この方やってきた結果、沈みゆく船のような状態に陥っているのではないでしょうか。

「泥船に乗った先見性の無い負け組」「成長産業に乗った先見性のある勝ち組」みたいな単純化された構図がSIer⇒SIerで働く技術者に波及しているのではないかと思います。

しかし先見性などというものをただの一般人でしかない我々が持ち合わせているかといえば、そこは運としか言いようがありません。
半導体にしても携帯電話にしても、ここまで焼け野原になることを予見していた人などいないでしょうし、絶好調の頃はそれだけ人を必要としていました。

「早く降りてしまわないのが悪い」と言われても、船を降りた後の生活の補償など誰もしてくれません。独り身ならまだしも家族がいるなら尚更です。

SIerの社員=スキルレベルが低いという妄想

「転職して給与が下がるくらいのスキルレベルしかないから転職できない」は個人差がありますが、そもそも一つの特化したスキルで飯を食える人などSIerでなくてもほとんどいません。

むしろ特化することによってその分野の隆盛荒廃が食い扶持を左右する危険性もあります。
「そのために常に新たなスキルを…」などという反論を持ち出す人もいますが、そもそも自分ができていないことを人に要求すべきではありませんし、今日明日のことだけではなく10年、20年先を考える必要がある人もいます。
スキル頼みで高給取りを目指すのは自由ですが、サラリーマンとして将来の見通せる安定した生活を求める人だっているのです。

SIerにも特化したスキルを持っている人はいますが、何よりの強みは複合的なスキルセットだと思います。

・プロジェクトの管理手法を知っている・実践できる
・派遣・外注・海外利用時の手続きや法規の下地がある
・提案資料・デモ・プレゼンができる
・コードが書ける・読める・体系的なルールを作れる
・テスト手法、バグ密度等の品質管理ができる
・サーバのキッティングができる
・ネットワーク図が書ける。設定できる・調べられる
・データベースが構築できる、チューニングできる
・運用管理、ジョブ管理がわかる・できる
・etc…

全員が全部できるとまでは言いませんが、どれかしかできない人は少ないでしょう。
大きな組織になるほど役割は細分化して担当分野は狭くなりがちではありますが、本当にそれしかできない人を作ってしまうと組織内でも潰しが効かなくなります。

そして何より本人のやる気次第で担当分野の壁なんて超えられます。
同じ社内で壁が超えられない人が転職でその分野に辿り着けたとして、確かに技術的なスキルは身につくかもしれませんが「己の欲するところにいかに辿り着くか」という目標達成スキルの面からはどうでしょうか。
もちろん転職も方法の一つではありますが、同じ社内なら今の環境・人脈・待遇などをある程度担保することができます。
それを一旦リセットして、尚且つ思っていた分野に辿り着けないリスクを背負って転職するなら、まずは社内でなんとかしてみようと最大限もがくべきでしょう。
給与面でも、分野を変える毎に転職して基本給を一からリセットするより、勤続年数とスキルセットの両面を拡大するほうがより高給に近づけます。

組織人としては一定水準以上(個人差あり)

SIerの社員はチーム・組織で仕事をすることに慣れており、良くも悪くも「組織人」としての基本行動が備わっているので、個人差はありますがサラリーマンとしての最低限のラインはクリアしていると思います。

「入ったからには長く在籍してもらいたい」のが人材市場の基本的なニーズと考えると、その点はプラスに働きます。

履歴書に転職歴が多いと不利と言われ続けている理由はここにあると思います。
決して短期の転職を否定しているわけではありませんが、人材の買い手である企業側のニーズを考えれば仕方ない部分があります。

フリーランスになるとしても仕事を受ける相手の多くは企業でしょうし、企業のプロジェクトの一部に参画するというような場合もあるでしょう。
そうした場合でも「組織人」としての振る舞いができることはプラスに働くことのほうが多いと思います。

SIer出身者はフリーランスより情シスに向いていると思う

組織でこそ活きる能力

組織人としての振る舞いに長け、複合的なスキルを要している人材となると、その活躍の場はやはり「組織」と考えるのが妥当だと思います。

一点突破できるだけの専門性や営業力を兼ね備えた人であればフリーの技術者としてやっていく道もありますが、複数のスキルセットを組み合わせて使いこなせる人材は開発側よりむしろユーザー側に求められています。

企業はWebだけで商売しているわけでも生産管理だけやっているわけでもありません。
バックオフィス業務、フロントオフィス業務、そしてそれを支えるインフラが組み合わさって成立しています。
それぞれに特化した人材を抱えたり外注したりするのは結構な負担です。
全てをある程度網羅的に把握し、維持・管理と更新を噛み合わせを崩さずに成し遂げられ、且つITに明るい人材は、非IT企業においては稀有な存在です。

もちろんそうしたアドバイスを行うコンサルになるというのも一つの道ではありますが、実際に企業の内側から実態を見てみたほうが経験的にも良いのではないでしょうか。

タイプ別に見る情シスの傾向

現状担っている役割

「SE」という業種を一括りにできないように、「情シス」も企業によって立ち回りが違います。
私の独断ですが、以下のような図を作ってみました。
(Windowsのロゴみたいな色になってるのはたまたまです)

Aは恐らく多くの中小企業の経営層が理想とするような形ではないかと思います。
適時必要なサービスを調達し、組み合わせて「利用」する。
ハンドリングが良く、初期投資も抑えられ、効果を追究することに注力する、まさに夢のような形です。
そして多くの場合未だ夢の状態で達成されていません。

Bは内製部隊を持つそれなりの規模の企業ということになります。
自前のシステムで差別化・効率化を図る、技術や業務を社内資産として蓄積させる仕組みと組織が維持できる企業です。
ベンダー(が契約しているSES)の常駐SEが常に詰めており、ベンダーコントロールをするプロマネ的な手腕も要するような形です。

Cは2つのパターンが考えられます。
1つはボトムアップでの改善要望はあるけど経営層の理解が進んでいないパターン。
もう1つは経営層は改革を進めたいけど何から手を付けていいかわからないパターン。
糸口があればAに向けて近づいていける(というか近づきたい)企業で、多くの中小企業が程度の差こそあれこういう状態に分類されるのではないかと思います。

そして最後はD。「ひとり情シス」の闇が待ち受けているパターンとも言えます。
現場も経営層もIT化にあまり関心が無く、人も増えずにインフラもアプリも更新されない。
至る所で非効率とトラブルが散在しているが、できる対応は止血処置まで。
こういった企業が情シスを募集する時は前任者がいなくなった時くらいでしょう。
しかし未だこの状態にある企業は少なくはありません。

情シスを取り巻く環境要因

情シスはあくまで企業の一部門であり、部門や会社を取り巻く環境によりその位置付けは変わります。
上の図の周りにそれを配置してみました。

は自社だけではどうにもならない業種・業態による特性です。
取引先企業やターゲットとする顧客と噛み合わないものを独りよがりに進めることは難しい面があります。

例えば未だに注文書をFAXで送ってくる取引先に対して、MAを仕掛けたりWeb注文サイトを構築したところで果たしてどれだけ効果があるでしょうか。
こちらがそれなりの規模の企業で取引先が仕組みを合わせてくるようであれば強行突破も可能でしょうが、ワンオブゼムの扱いでしかなければ無視されるかもしれません。

業界全体が最初の図のDのような状態の所に飛び込むのは、勇気と覚悟が必要でしょう。

は企業としての問題です。
経営規模が小さければ当然身の丈にあった投資になります。
ITは企業経営を拡大させるための一助ではありますが、IT投資で経営を傾かせては元も子もありません。

そもそも専門の情報システム部門を必要とするのは一定以上の規模の会社です。
部門間のやりとりの非効率や経営資源が一目で見渡せない状況が発生するくらいの状況になって、はじめて部門横断的な視点や経営視点でITを統括する部門が必要になります。

それなりの規模だけど業績が伸び悩んでいるような会社は、利益確保のためにIT投資を控えている場合があります。
最初の図のCにはそういった企業も含まれているでしょう。

そしてようやくで社内のITリテラシーの問題となります。
経営層がIT投資の有効性を理解しているか、現場がITを使いこなせるか、使いこなすための環境は整っているのか、などです。

これらを解消できる会社は、恐らく早期にAに到達できる見込みがありますし、そのために優秀なIT人材を必要としています。
そして求められている人材は、Webデザイナーでもプログラマーでも組み込みエンジニアでもインフラエンジニアでもなく、「会社をAの領域に引き上げてくれるコーディネーター」なのです。
コーディネーターは自ら全てを企画・立案するだけではなく、ベンダーやコンサルなどの外部の知見や経営層の要望を纏め、実働部隊として社内と繋ぐための調整役である必要があります。

こうして考えると、SIerのSEの複合的なスキルセットや様々なユーザーで経験した知見、組織人として会社に貢献するマインドは、これらの条件に合致するのではないでしょうか。

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共通点は「一つを極める」より「広く網羅する」

SIerと情シスの共通点は、一つのスキルを深く掘り下げるスペシャリストより様々なスキルを広く網羅する人材が重宝がられるところだと思います。

PCの調達も、ネットワークやサーバーの維持・保守も、社内ドメインのActiveDirectory管理も、システムの問い合わせも、保守やライセンスの更新も、新システムの選定も、業務効率化も、セキュリティ対策も、個人情報保護も、とにかく広く網羅する必要があります。

新卒でユーザー企業に入ってこれらを網羅するのはかなり難しいでしょう。
しかしSIerでSEとしての経験を積んだ人であれば、一通り話くらいはできるか、少し勉強すれば早期にキャッチアップすることができます。

SIerは衰退していくかもしれませんが、Web系や組み込み等も10年後、20年後に生き残っているかは誰にもわかりません。

しかしそれを利用するユーザー企業は技術がどう変わろうとも存在し続けます。
※企業が潰れないという意味ではなく、「ITを利用するユーザー企業」という存在は無くならない、という意味です。

その中でITの知見を活かしながら仕事をし続けられる人材に最も近いのは、SIer出身者ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

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