経営視点、利用者視点からのメリットを考える | IT資産管理システムの効果を訴求しよう

前回のおさらい

前回は主に代表的な2つの製品(SKYSEA Client View、LanScopeCat)の製品比較をしながら、IT資産管理システムの機能のお話をしました。まとめるとこんなかんじでした。

・IT資産管理システムは、パソコン等の資産情報を管理しながらセキュリティのための機能が付加されているものが多い。
・SKYSEA Client View:多彩なデバイスを一括管理、リモート保守が便利で、小規模向け
・LanScopeCat:イントラ外のデバイスも管理可能、インフラ負荷も小さく、大規模向け

前回の最後でお話した通り、今回はIT資産管理がもたらすメリットを全社に訴求する方法についてお話します。ようやく記事のタイトルの話に到達しました…。

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経営視点で見たときのIT資産管理のメリット

セキュリティリスクの低減もメリット、だがもっと攻めていきたい

セキュリティ系の話はどうしても比重が「守り」に傾きます。
もちろん「守り」を疎かにしてはいけませんが、経営者に取って会社を維持・発展させるためには「攻め」の視点が重要になります。

システムに求めるのも、「何から守ってもらえるか」より「何を生み出してくれるか」が重視されがちです。そこがセキュリティ投資の優先度が下がっていく一因になっています。

IT資産=経営資源、休眠資産を作らせず適正な資源配分が可能にする

税制上の話になりますが、パソコンは購入すれば固定資産(中小企業の場合30万円未満は経費にできますが)ですし、リースであってもリース資産として管理しなければいけません。

IT資産は不動産や工場機械と同じく、経営資源です。固定資産であれば減価償却されますし、リースの場合も所有権移転ファイナンス・リースであれば減価償却計算で経費化されます。

そんな大事な資産です。もしあまり使っていないパソコンが溢れていたら勿体ないですし、適正なスペックのパソコンが必要な人に行きわたっているかも生産性維持・向上のためには重要です。

必要な資源を必要な人へ配分するためにはExcel上の資産管理だけでは不十分です。
どれくらいパソコンが使用されているのか起動時間、使用ソフト等の操作ログで定期的に採取したり、社員退職後に書庫等で使われていないパソコンが無いかチェックしたりすることで、より効果的に資源を配分することができるようになります。

(LanScopeCatのみ)BYODの実現

BYOD(Bring Your Own Device)とは、簡単に言うと個人所有の端末の業務利用のことです。在宅勤務やテレワークと並び、働き方改革の文脈で最近よく登場します。

個人所有端末を利用するのでデバイスの維持調達の費用が抑えられる反面、セキュリティが大きな課題になります。業務以外の利用制限は難しいですが、情報漏洩、ウイルス感染したファイルの拡散等リスクが多く、また利用者からしてもあれこれ制限されるのであればリモート勤務用のパソコンを別に支給してもらったほうが良いと思う人も出てくるでしょう。

前回お話したように、LanScopeCatはパブリッククラウド上に構築すれば、インターネット経由で管理を行うことができます。利用する端末にクライアントソフトをインストールするだけで、社内のパソコンと同様に管理することができるのです。
また社有資産とBYODデバイスでセキュリティルールを分けることもできます。個人所有物ですから、最低限これだけは守ってほしいというルールに限定すれば、利用者も安心して利用することが可能です。

新たにPCを調達したり、プライベートVPN環境を準備したりというような大掛かりな準備と比較すると、手軽にBYODを実現することが可能になり、多様な働き方と要員リソース活用を両立することができます。

利用者視点で見たときのIT資産管理のメリット

利用者から見た管理やセキュリティは「足枷」

管理ツールやセキュリティソフトは利用者から不評を買うこともあります。

「なんか導入してからパソコンの動作が遅いんだけど。」
「あれこれ規制されたら業務が回らない。」
「セキュリティが大事なのはわかるけど、仕事の邪魔はしてほしくない。」

利用者を敵に回して孤立する情シスほど辛いものはありません。
「利用者にもメリットがあるんですよ」をきちんとアピールしておきましょう。

操作ログは勤務時間記録になる。サービス残業はもうさせない!

IT資産管理ツールはパソコンの起動停止、操作情報のログを取得できます。
PC作業中心の職場であればこの情報はつまり出退勤の記録になります。
実際長時間残業で労基(労働基準監督署)の監査が入ると、パソコンのログが取られたりします。

厚労省は2017年1月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を公表しています。
その中で「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」として「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」と記載されています。

これらをさらにかみ砕くと、紙のタイムカードのようなデータがリアルタイムに取集・分析できないものより、セキュリティゲートにかざすICカードやパソコンのログイン・ログアウトのように、収集・分析が可能なデータであることが望ましとされています。
これは紙データの場合、使用者が各メンバの勤務時間を月末までまとめて確認できないため、月途中の負荷状況等もきちんと把握できるようにしなさい、ということです。

つまりIT資産管理システムのログは、厚労省のガイドラインに沿った正規の勤務時間記録として活用できるのです。前回紹介した両製品とも、ログやスクリプトを活用した勤怠管理事例を紹介しています。

何時間仕事しても出退勤に時間が書けないようなことは、もう発生させません。

リモート保守の恩恵は利用者にもある。

リモート保守のメリットは何も情シスだけにあるわけではありません。

利用者も電話越しに情報がうまく伝わらずイライラするような状況が改善されます。
これまで駆け付けに時間のかかっていた遠隔地の拠点でも、迅速にサポートを受けることができるようになります。

また「あれやってみてください」「これやってみてください」という指示ではなく、コンソールの操作は管理者側で行うので、基本は見ているだけで良くなります。
情シスからするとITリテラシーの向上を図るチャンスを失うことはデメリットになりかねませんが、利用者からすればメリットであることには間違いないのです。

たちかえって情シスが考えるべきこと

畳める風呂敷を広げよう

ここまで「これができます、こんな効果があります」を紹介してきましたが、最終的にそれらを管理・運用するのは主に情シスの仕事です。

できもしないことまで誇大宣伝してしまうと、運用開始後にしっぺ返しを食らいます。
実現すべき事項と管理方法を検討した上で、できることをアピールしていきましょう。

定期的な効果測定とアウトプット

約束したことは履行されているか確認してこそ意味があります。
「これができます、こんな効果があります」と言ったからには、効果を報告する必要があります。

スパンを決めて定期的なアウトプットを行うことを導入計画に必ず盛り込みましょう。
期待通りの水準まで効果が出なかったとしても、そのアウトプットから対策を考えることができます。

結局仕事が増える?管理者のメリットを思い出してみよう

自分で効果をアピールして、運用を考えて、効果を測定して、報告して、改善して…。
なんか仕事が増えているように感じるかもしれません。

しかし思い起こしてください。このシステムの本来の機能はIT資産の効率的な管理とセキュリティの向上です。このシステムが提供するのと同じ情報を自力で収集することは難しいでしょう。「労力を掛けずに楽ができる」のではなく「別のところに労力がかけられるようになった」ことが大事なのです。

Excel台帳で管理していたり問合せで社内を走り回っているのと、効率的に資産管理がされて改善効果が報告されること、どちらが評価されるでしょうか。同じ労力なら、きちんと評価されるほうが良いですよね。

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まとめ

今回の内容をまとめると以下のようになります。

IT資産管理システムは
・経営視点で見ると、資産の有効活用やBYOD導入の契機にすることができる。
・利用者視点で見ると、正確な勤怠管理が保証されリモート保守の恩恵も受けられる。
・情シスはシステムの効果をきちんと測定、アウトプットすることで正しい資産管理・セキュリティ管理と正当な評価の両方を得ることができる。

自分の企業・団体において、誰にどんなメリットがあるのか考えると、「今よりいい製品は何か」も見えてきます。有名な製品、シェアが大きい製品が誰にとってもいい製品であるとは限りません。しかしそれらは利用者が多いが故に運用事例を活用することができます。

システムは使われてなんぼです。IT資産も使い倒してなんぼです。
無駄なく、無理なく、利活用していきましょう。

参考にしたサイト

リース資産として物品を導入する場合のメリットとデメリット | モノの管理のヒント

勤怠管理がますます重要に! 厚労省、労働時間の適正な把握のためのガイドラインを公表 | クラウド型勤怠管理システムAKASHI

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